アイロニー

 ショスタコーヴィチの本質の一つは、そのアイロニーにある。

 丁度、強制収容所に送り込まれて、明日、ガス室送りが決まった男が、我が身
の不幸をネタに飛ばすアイロニー。彼の長大な交響曲の主題の一つ一つに、そう
言ったアイロニーが満ち溢れている。そうして、、、時にそれを破って、生々し
い感情が迸り出る。あたかも、大陸の大河が雨期に平野を満たすように、言い尽
くせぬ慟哭が四界を埋め尽くし、人を圧倒する。
 

 話題の流れと何の関係もない、下らぬ独り言。たまたま今日、彼の第8交響曲
を久しぶりに聴いたのである。
 

          
       (エルミタージュ)
 

(96/01/21、GAVIE, FIGARO初出)
 
 

                          KOH
 
 
「KOHの楽しみ」  GRAND INDEX