小学校がピザ屋になった「石釜屋」

 
 蔵王の麓に、小学校を改装したピザ屋がある。山形自動車道の宮城川崎インターを降りて青根温泉、蔵王エコーラインなどへ向かう道筋に、確かに、昔小さな小学校があった。旧川崎小学校・腹帯分校といったそうだ。この山の分校が何時閉鎖になったのか知らないが、その木造校舎に眼を止めてここでピザ屋を開いてしまった人がいるのだから驚く。道路端に、おや、学校かしらとふと眼を向けると校舎の表にでかでかと「ピザ・コーヒー」なる看板が出ていてその宣伝効果は絶大だ。
 

 グラウンドが駐車場になっている。左手にある玄関を入ると、昔の学校当時そのままに下駄箱がおいてあって、客は皆ここで靴を脱ぎ、スリッパに履き換えなければならない。スリッパを履いて入るピザ屋が他にあろうか?しかしともあれ、そのスリッパでぺたぺたと木の廊下を進むと、”校長室”だとか”教室”、”職員室”なんていう札もその頃のまんま残っているのだ。その”教室”が、今やピザ屋となっているわけ。がらがら戸とを開けて中に入ると、一寸自分が小学生に戻ったようで不思議な感じがする。テーブルに着いて眼を挙げると、壁には「元気な子供・明るい子供」なんて言う標語が掛かっていた。
 

 ところでこういう、地方の町興しみたいな企画で出来た飲食店は、大抵メニューが判で押したようにカレー、スパゲッティ、サンドウィッチと、つまらない所が多い。小学校を改装して山の中でレストランをやろう、と言う発想はまだ浮かぶかも知れないが、こんな辺鄙な所でピザ専門店を開こうと言うのは普通だれも考えないのでは無かろうか。試しに、ピザハットやストロベリーコーンズに行って相談してみたらいい。「蔵王の麓の分校の跡地でピザ屋を出したいんだけど」、そりゃ断られるのが落ちだろう。
 

 しかし、渡されたメニューを見てもここは確かに、本物のピザ専門店なのである。エビ、ツナ、ベーコン、椎茸、南瓜なんてのもある。しかもエビは天然物、ベーコンは無添加など素材も拘っている。勿論ピザのドウ自体、国産小麦と天然酵母で自家製だ。エビピザとたんぽぽコーヒーというのを注文してみた。昔懐かしいだるまストーブに乗ったやかんがしゅんしゅんいう音を聞きながら待つこと15分、やがてたっぷりとチーズが掛かって金色に輝くピザが焼き上がった。グリーンタバスコを好みでかけてさっそく頬張ると、確かにこのエビは、ぷりぷりして旨い。どこかの宅配ピザなどとはまるで違う。それにふと気が付くと、玉葱に甘みとこくがあって驚かされる。ドウの焼き具合も上々だ。恐らく、この味はいわゆる”イタリア料理店のピザ”とは少し違うものだろう。しかし一つ一つの素材に気を配って、丁寧に仕上げてあることは間違いない。小学校を改装したという物珍しさだけでやっている店ではないのだ。
 

 

 もっとも出来上がりまでに15分というと、そんなに待てないと言うせっかちな人もいるかも知れない。そういう人は、一寸教室、いや店の外に出てみよう。さっきの木の廊下の先に、多分昔は講堂か小さな体育館だったであろう広間があって、其処が色々な輸入雑貨や周辺の手作クラフトなどを売るコーナーになっているのだ。スペインの皿とか、イタリア製の花瓶などなかなか悪くない掘り出し物が見つかる。それだけではない。廊下にはここが小学校だった頃の由来を綴ったパネルや、当時の生徒たちの図画工作の作品までがずらりと掛かっているから、それらを見て廻るだけでもなかなか楽しいではないか。
 

 そうそうもう一つ、たんぽぽコーヒーについて触れるのを忘れるところだった。このたんぽぽの根は昔からコーヒーの代用品としてよく使用され、また一方蒲公英(ほこうえい)と言って消炎・解毒効果のある漢方薬でもあるなどと言う蘊蓄を少し垂れてもいいのだが、実はこのことについては近々、ある人が立ち挙げるホームページで色々取り上げたい意向らしいからここでは省略しておく。

 辺鄙辺鄙と繰り返してきたが、実は高速道路の整備によって仙台インターからでも一時間とは掛からない所なのである。日曜の昼下がりに、ふらっと行ってみても少しも遠くはない。どうですか、今度の週末辺りに、ちょろっと。

「石釜屋」
 電話0224-84-4083
 宮城県川崎町前川字松葉森山1-197
 時間:11時から16時”頃”
 定休日:毎週火曜日、第二・第四月曜日(祝日は営業)


 
 
 
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