うつ状態ってどんなこと?


 私のクリニックにはうつ状態で受診される方が大変に多いのです。
「うつ状態」といっても、その言葉が示す範囲は広く
抑うつ気分を伴わず、頭痛。肩こり、不眠、食欲低下、全身倦怠、疲れやすさというような
身体症状のみを示す状態(仮面うつ病と言われていたこともあります)から
何か具体的なストレスがあって、そのことで悩んだ結果というような状態
(神経症性うつ病と言われていた)、さらには抑うつと不安、焦燥感を伴い、強い不眠、
集中力、判断力の低下、朝の気分の悪さ、意欲の低下
時に自殺したい衝動にとらわれるという重症のうつ病までを含みます。

「うつ」という病状だけに限るならばその生涯有病率は20−30%とも言われていて
一生のうちに、4−5人にひとりはそういった状態に陥るというほど
頻度が高いものなのです。

学問的なことは別として
私が診療していて、いちばん強く感じることは、
この「うつ状態」というのは、「究極の疲れ」の表現なのではないかということです。
以前から、「うつ」になる方は「まじめ、几帳面、ノーを言うことができない」というような
性格傾向を持つといわれてきました。
役割同一性が強いというふうにも言われています。
それはどういうことかというと、自分自身の個性よりも特定の役割を優先するということです。
たとえば会社勤めの方なら、会社での立場、主婦の方なら母親であるということなど。
ですから、その役割が急に変わると、柔軟に対応することが難しいのです。
たとえば、転勤や昇進がきっかけで「うつ」になる方は多いですし
母親役から卒業して、そのあとどうしていいか悩んでしまう「空の巣症候群」というのも
ありました。とにかく、我慢する方、無理に無理を重ねてしまう方という印象があります。
いいかげんさや筋の通らないことを憎むというすばらしい特質は
物事がうまくいかないとき、疲れをためこむ原因になってしまうのです。

疲れたときには休息が必要なのですが
睡眠障害があると、睡眠によって休息がとれません。
このことがますます、病状を重くします。
「うつ状態」での睡眠障害の特徴は、早朝覚醒です。そして熟眠障害。
特に朝、目覚めたときの気分の悪さは、
「うつ状態」の方には必ずあるといってもいいくらいです。
冒頭にも触れましたが
さまざまな身体症状が出現するのも「うつ状態」の特徴です。
食欲不振、頭痛、身体各所の疼痛、息苦しさ、動悸−ほとんどの自律神経症状。
内科であらゆる検査を受けたけれど大丈夫と言われましたとおっしゃって
私のクリニックを受診された方もいらっしゃいます。

治療は、とにかく休養−そして薬物療法です。
なかなか休むことができない方が多いのですが、休まないと良くなりません。
薬物療法は、とても効果的な薬がありますので、
医師の指示に従って必ず、きちんと飲んでいただきます。
そして、その方自身の、真面目であることや、きちんとしているところを
評価しながらも、病前に戻るだけでは、病気の準備状態に戻るだけで
あることを理解していただいて、役割だけではないご自身の個性を
きちん活かす生活を認知行動療法的に、あるいは支持的な精神療法による
アドバイスで考えていただきます。

私は、「うつ状態」の方の治療はとてもやりがいがあると感じます。
病状が改善したときの、別人のように晴れやかになるその表情に
お会いすることができるだけでも、この仕事をしていて良かったなと思います。



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