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Wigert Data Library

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Terminal name:pc_5150
Location:/Belger/sys/gnd/Wigert

まずは、例の惑星ネットワークシステムの暴走から始まった戦争から。
「目隠しの戦争」、「帝国の亡霊戦争」…人によって色々な呼び方があるけど、
当の政府はあまりこの話題には触れたくなさそうな感じ。

あの日、このベルガーの情報基地もいたって静かで、ゼノンの地上サブシステムも何の問題もなく稼動していた。
その日の夕方、いつものように空中要塞に天候情報を送信しようとして端末を操作しようとした時、突然サブシステムが再起動をはじめた。
余程の事が無ければゼノンのサブシステムが再起動するなんてありえない事だった。
システムの変更があれば、上(衛星ベクター)からシステム更新の連絡がくるはずだが、後にも先にもそれは無かった。

目を疑ったのはその後だった。再起動したサブシステムが
空中要塞を始め、各地の基地に攻撃命令を送信したのだ。
それと同時に基地内の全てのブロックは閉鎖され、端末も操作不能になってしまった。
数時間後、核兵器を搭載した旧世代の爆撃機は空中要塞のホルツマーを離陸、
ワイガートの基幹都市の攻撃を開始した。

 

エール航空基地に降りる為に降下中の空中要塞
●空中要塞ホルツマー:

雲よりも高く浮上している高高度浮上要塞。大戦中に建造された巨大建造物で、
4基の主重力制御装置と補助装置で浮上している。
首都周辺での防空任務に就いていたが、大戦末期に敵首都への強襲作戦に参加している。
中央に8連装回転砲台と管制塔、東西南北それぞれに滑走路、格納庫を持つ。
メンテナンスの為に半年に一度エールの航空基地に降下し、設備の点検や
搭乗員の交代等を行う。
戦争も終わり、老朽化も進んでいる事から退役は近いと言われている。
軍は退役の時期については明言していないが、近い将来大戦博物館として再利用する案はあると言う。

 

通信機が全て使えなくなって、外で何が起こっているのか全く掴めなかった。
でも意外な所から、意外な方法で外からの声を聞くことが出来た。

「……ルガー基地、聞こえるか。こちらはエール空軍基地だ。もうおそらく通信手段はこれしか残っていないだろう。
何か重大な事が起きている。管制システムが全てロックされ、戦闘機が無人制御選択で全て飛び立ってしまった。…」

声の主は、なんとラジオだった。

「…見つかった…攻撃を受…地下に避難している。…閉鎖区画で妙なものを見つけた…戦闘機か?」

大戦中、敵のシステムを内部から破壊しようとする試みがあった。
ギャラクシー計画と名づけられ、その成果は大型機から小型戦闘機に至るまで適用された。
しかし大戦の終結により、使われる事の無いままそれぞれ地下に封印されたのだ。

 

改修前のギガーヌ
●爆撃機ギガーヌ:

巨大なエイのような姿が特徴の、旧帝国の大型爆撃機。
大戦以前に造られたもので構造は古いが、現在でも十分に機能できる性能を持っている。
近代改修により、帝国兵器の象徴プラズマ追尾弾発射管が6台追加されている。
現代から見れば、爆撃機に核兵器と2世代前の都市攻撃理念そのままであるが
破壊力だけで見れば、近代の兵器を大きく凌ぐ。

大戦以前、地域紛争が発端で小国同士が核ミサイルによる攻撃を行った事があった。
攻撃を受けた国は報復攻撃を行い、発射したミサイルは相手国のミサイル基地に命中。
地下ミサイルサイトの物を含め、500基あった基地内のミサイルが連鎖的に誘爆。
国土の2/3を焼き尽くし、放射能が国境を越え隣国多数が被爆した。
爆発は凄まじく、山が轟音を上げてうねり、強烈な電磁波により周辺国全てが停電に見舞われ
惑星裏側の地震計をも揺らし、後に地形地図が広範囲で書き換えられた。
現在でも爆心地付近は高濃度の放射線で汚染されており、そのあまりにも無残な状況にもかかわらず、
救援部隊は派遣はされていない。
この惨劇を目の当たりにした核保有国では、加速度的に脱核を進めた。
この動きによってギガーヌも改修を受け、以後は輸送機として余生を送る事になる。

名称は、ソルトレブ領ベルガー山脈の少数民族ウエルガに伝わる、災いを呼ぶ黒い
大きな鳥、ガイガーから付けられたそうだ。
戦後生まれの私はこの爆撃機を航空ショーでしか見たことが無いけど、すごくくたびれた感じで
とても災いを運んでくるものには見えなかった。

大戦中の迷彩塗装。ソルトレブは高緯度に位置する
●制空挺プロミネア:

熱線兵器の反射技術を応用した熱線反射ポッドを持つ、応用技術試験機。
先の二極大戦でソルトレブ帝国によって4機造られたが、
テスト不足からか一機は戦闘中に何らかの原因でポッドのマイコンが誤作動し、
反射熱線が親機を直撃し墜落。
もう一機は主砲の過負荷検出装置が故障し、機関破壊を起こし機は空中分解。
残る二機は、運用停止となり解体処分される事になった。
帝国の兵器の中では珍しい失敗作であったが、戦後共和国側が残骸を集めて復元したところ
その技術力の高さには驚いたという。

 

修復され、エール空軍基地を飛び立った戦闘機は空中要塞を奇襲、開放したが、すでに爆撃機は
飛び立った後だった。
空中要塞との通信が回復し、その後、爆撃機の撃墜についての知らせが入った。
と同時に、私の故郷の第一都市が破壊された事も、知らされた。

XeNONと地上をつないでいるのは、この情報処理中枢基地であるベルガーだ。
そこで、私たちはゼノンのサブシステムの破壊を提案した。

 

放熱が凄まじく、高地の冷気を利用して冷却している。
●ゼノン・サブシステム(XeNON SystemU):

ベルガー山脈の最高峰”K6”内に建設された、惑星規模で情報を管理する情報処理中枢。
衛星ベクター建設以前の代替基地として建設され、現在はサブシステムとして機能している。
ベクター建設よりもかなり前に造られている為、内部システムは驚くほど原始的で、しかし確実なもの。
一昔前のコンピュータが、普通に端末として用いられている。
設備全体の処理速度もベクター・ゼノンよりもはるかに劣るが、現在稼動しているのはデータの管理、
通信設備だけなので、十分に機能する事ができる。

情報が古いままになっているようだ。
現在は、XeNONに変わる新しいシステムがベルガー基地に設置されている。
XeNONシステムの様に機械主体ではなく、人によるセヴンスサイン(7つの封印)制を導入して、
惑星政府の運営は主要7地域の代表による対話により決定されるようになった。
しかし政府の中には、二極大戦以前の世界に逆戻りするのではないかという事を危惧する
人もいるらしい。


●防衛機トムス・グレイヴ:

サブシステムが設置されている地下構造物は、元は帝国が建設した地下ミサイル基地の跡地である。
基地の建設やミサイルの運搬に使われていたゲートクレーンに防御力と攻撃能力を持たせて、
識別信号に応答しない侵入者に対して自動的に攻撃を加える能力を持たせていた。
統一政府が誕生した直後は世界がまだ不安定だったために、識別信号を書き換えて、
武装を解除せずそのまま機能させていた。
中央に主制御機を載せているが、非常時には分離し速度を生かして単独で攻撃する。
土台がグレイヴ、制御機がトムス。
ちなみに、トムスは設計者の息子の名前。
強いものに巻かれて威を借る息子を皮肉ってつけたらしい。

尚、グレイヴ本体等からぶら下がっているのは、飛行機等のすり抜け防止用のパイプチェーン。
動力用に300kWのディーゼルエンジン2基を用いているが、構内を走行する為
排煙処理装置を搭載している。

攻撃による被害を避けるため、地上に避難していた私たちは
大きな地鳴りとともにK6の南側斜面に雪煙が立ち、雪崩が起きるのを見た。
近くの端末には「SystemMissing」と表示され、サブシステムが破壊されたことを
証明していた。

攻撃命令を見失い、都市攻撃を中止した地上の攻撃機は、何食わぬ顔をしてそれぞれの
基地に帰っていった。当然だ。彼らはただ命令に従っただけなのだから。

サブシステムを失ったXeNONは地上の統制手段を失い、一時的に機能がストールしている様だった。

ただし、システムが停止した訳ではない。
地上の部隊は通常に戻っても、まだ宇宙には旧帝国の兵器が残されており、これらが再び動き出して、二次攻撃が始まる可能性があった。
ひとまず眠ることが出来るだけの時間が、そこにはあった。
しばらくの休息。空には一筋の光の帯、月帯がかかっていた。

ベルガー基地に降りてきた戦闘機。父に影響されてメカ好きだった私でも、初めて見る機体だった。
試験機なのか、目立つ色で塗装されている。
初老の技術者は懐かしそうに機体を眺めていた。

基本構造はザコの小型機と同じ。跡形もなく改造されている。
●試験機AR−8:

AR−8は大戦後に付けられた識別名で、元はギャラクシー計画でのプロジェクト名
「GalaX」で呼ばれていた。
軍から払い下げられた小型戦闘機を元に、外装や内部構造を大幅に改造。
ハッキング装置を搭載するために、簡易重力制御装置は取り外されている。
高性能レーダーを搭載し、対象のシステムに対し毎秒250回のハッキング手段を発行する
事が出来る。制御盤に乗せられた16個のプロセッサーが、それぞれの対象を受け持つ。
補助砲を制御して対象を直接攻撃する機能も持っており、ハッキングに失敗した際の挽回
操作を援護する。
ハッキング装置や機体の制御にはA・Iを利用しているが、これはGEOPTOに搭載された
A・Iと平行して開発されたものだ。操作する人間に柔軟に対応する為にファジー制御が
組み込まれている。研究中に2つのA・Iを干渉させてみた所、互いを認識しあっている事が
確認された事から、我々人類で言う所の、「仲間」という概念が発生したと見られている。

戦況が悪化する中、GalaXの試験は中止される。
そして戦争が終わり、ギャラクシー計画は存在意義を無くし、間もなく廃止された。
研究の成果も十分得られた為、試験機GalaXの登録はそのまま抹消される。
そして無人化改修される事もなくエール空軍基地の地下格納庫で保管される事になった。

 

基本構造はザコの小型機と同じ。跡形もなく改造されている。
●作業艇 TITAN:

非常に汎用性のある作業艇。
元は軍に納入されていた多目的作業艇で、機体左右にあるパイロンに機能ユニットを
取り付けることで、様々な状況下で運用が可能である。
機体の大きさの割に強力なジェネレータを搭載しており
リミッターカットを行えば最大出力時において周囲に重力異常を起こす。

民間に払い下げられた後、その頑丈さや扱いやすさから
主に建設分野で好んで使用されるようになった。
また、その無骨なスタイルや、獣のうなり声のようなジェネレータ作動音が
一部マニアに受けが良いようで
マニピュレータ等を取り付けお互いで強さを競う競技が各地で行われている。

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