スコットランドCNDニュース
2000年11月9日
ジョン・アインスリー,スコットランドCNDメンバー
12隻の原潜に影響する可能性のある重大な欠陥が発見された。結果として、原潜に起こる事故の危険性は海軍が従来指摘していたよりも高い。
これらの原潜のひとつ、英国海軍のトライアンフ号("勝利"号)はその原子炉の検査をしないで、任務に戻ろうとしている。これを考慮して、クライド湾の安全方針その他は緊急に改訂される必要がある。
5月12日、同艦がシシリー島と北アフリカの間を航行中に原子炉に重大な事故があった。原子炉冷却回路に亀裂が発見され、冷却材が蒸気の形で漏れた。
ガーディアン紙は10月28日、さる権威筋が「その原子炉はまさに失敗の瀬戸際にあった、換言すれば、それは炉心溶融に非常に近い事態であった」と述べていることを伝えた。
英国海軍の原潜タイアレス号は5月19日に(スペイン南端の英国領の要塞都市)ジブラルタルに到着したが、「タイアレス号は短期間、滞在するだけであり、その後、ダベンポートに航行し、修理されることになっている」と地元には伝えられた。英国防省は、これらの計画を変更し、原潜はジブラルタル港で修理されるであろうと発表した。この方針変更に地元住民の多数は反対した。ジブラルタル政府は、助言者として数名の、独立した原潜の専門家を任命した。英国防省がこれらの専門家への情報提供を拒否したとき、同政府は公式に修理に反対した。この事態によって、英国防省は機密情報の提供を余儀なくされた。やがて、専門家の検討会議がその計画された修理は了承できることを報告したので、同政府は修理の許可を与えた。
10月21日になって、英国防省がタイアレス号が抱える問題は当初想定されたよりもかなり深刻であることを認めたときに、事態は急変した。彼らは「2ミリの大きさの亀裂がひとつある」と当初発表していた。今や、彼らは「少なくとも10倍以上の大きさの複数の亀裂があること」を認めた。それらの亀裂は冷却水の主管に決定的な影響を与えていて、おそらく金属疲労の結果であろう。この欠陥は原潜の原子炉の圧力容器のすぐ近くにある。英国海軍はその修理の改訂計画を修正する用意はなく、早くて来年1月の終わりまでに試験を行うであろう。ジブラルタル政府は新しい修理計画についての判断を延期した。スペイン核安全組織(CNS)には、この問題について英国防省から打診があった。公表された報告で、CNSは「新しい修理計画が成功するかどうか懸念している」と述べた。
CNS委員長、ジョアン・マニュエル・キンデラン氏はスペイン報道陣に「再起動したとき原子炉に新たな冷却水漏洩がありうることを懸念している」と述べた。ジブラルタル近郊のスペインの町に責任をもつ地元権威筋とアンダルシア議会はその原潜をジブラルタルにおいて修理することに対して公式に反対した。
英国防省は”タイヤレス”型の欠陥の兆候が発見された原潜のリストを発表した。このリストには,ダベンポートを母港とする,7隻のトラファルガー級の原潜のうち5隻とフォールスレインを母港とする,5隻のスイフトシュアー級の原潜のうちの2隻,HMSシュパーブ号(女王陛下の原潜,極上号)とHMSスプレンディッド号(女王陛下の原潜,光輝号)が含まれる。このリストは,タイヤレス号を除いて,なんら物理的検査に基づいたものではなく,単に数年前になされた検査のデータの確認にもとづいていると信じられている。スペイン,CNSの専門家らによる報告は「設計上の欠陥とともに全般的な問題があった」と述べた。このことは英国海軍によって伝えられたことをほとんど反映している。10月21日に,英国防省は「トラファルガー級のとスイフトシュアー級のすべての原潜は諸検査のために任務から退けられるであろう」と通知した。
トライアンフ号は地中海から母港のダベンポートに送られ,10月27日にドック入した。その後,11月1日, ジェフリー・フーン氏(?)は「トライアンフ号は”欠陥はなかった”ので,まもなく作戦に復帰するであろう」と通知した。 これは政治的,および作戦上の圧力の結果であったに違いない。というのは,この程度の時間スケールで原子炉の検査を行うのは不可能であるからである。タイヤレス号の原子炉の検査には5ヵ月要した。タイヤレス号の原子炉の炉心溶融をほとんど起こしそうだった同じ欠陥はトライアンフ号にも繰り返される可能性がある。英国防省は,トライアンフ号はトライデント号の支援を受けるので,スコットランド海域への航行とフォールスレインへの訪問はうまくいくだろう,と発表した。
クライド地区の公共安全計画は,地元当局との連携の下に,海軍により練り上げられた。その主目的は原潜の原子炉事故から公衆を守ることである。同計画では「事故を起こした原潜から550メートルを越えて避難対策をとる十分な必要性があるような事故が起こる確率は5万年の原子炉操作中に1回以下であると評価される」と想定している。
しかし、これらの評価や他の確率評価はトラファルガー号やスイフトシュアー号についての最近明らかになった、全般的な欠陥を考慮せずに行われた。タイヤレス号に関する問題点の深刻さと本性は一つの事故の危険性は従来想定されていたよりも著しく高いということを示唆している。この結果、安全計画において提案された諸対策と影響範囲は改訂されるべきである。同様のことは他の原潜の安全計画にもあてはまる。英国防省は、クライド地区安全計画がクライド地区訪問で、トライアンフ号から公衆を十分に防護できるとはもっともらしくは主張できない。
英国防省は、欠陥はトライデント原潜に直接には影響を与えない、と主張する。トライデント原潜は異なるが、より旧式の原潜に基づいている原子炉をひとつもっている。今回の問題点はトライデント号に影響を与える可能性がある。トライアンフ号についての海軍の政策においては作戦上の考慮が優先されることを示唆している。
この政策で、なぜトライデント号が影響なし、とされたかを説明できる。
(O)