対話と交渉―トライデント・プラウシェア通信 2001年1月24日
訳バージョン 0.9
トニー・ブレア殿
私たちは、国防省のスティーヴン・ウィルマーのたいへん長い、込み入った手紙に返事を書いていますが、これは、国防大臣及び、間接的には貴方自身の要請で2000年9月に私たちに送られてきたものです。私たちは、連合王国の核政策について最終的な責任者としての貴方に返信を差し上げています。
私たちの次の軍縮行動は、2月12日、ファスレーンにおいて行われます。従って、私たちが近い将来に希望する政府の措置の性質をはっきりさせるために再度手紙を書いているのですが、その措置は私たち自身の軍縮活動の一時停止を考慮させるかもしれないからです。前便同様、現在のTP宣誓者の名簿を同封します。ご存知と思いますが、私たちの運動の詳細はwww.gn.apc.org/tp2000でチェックできます。
私たちは、連合王国が特に合衆国及び核非保有のNATO諸国とともに2000年の核不拡散条約最終文書を成したことによって、「新アジェンダ」決議を支える助力をした点で、連合王国が演じた重要な役割を喜んで認めるものです。特に、「核兵器から自由な世界を実現する上で基本的になるであろう」「信頼できる確実な確認措置」を探求し強調する点において連合王国が演じた指導的役割を歓迎します。連合王国の「思考の糧」という文章も、連合王国が核軍縮の課題に直接向かい合い、政府がこの論点を真面目に考えている点で、賞賛に値します。最近の議会答弁で国防長官ジェフ・フーンは、「この文書の討論における連合王国の建設的役割は広く認められている」と述べました。私たちはこのことを充分支持します。私たちは今、核不拡散条約の合意を国連総会というより広い場で追認し、核廃絶に向かって前進する道を指し示すという、新しい課題を持っています。このことは、一般にはNATO諸国の、個別には連合王国の態度が今や、みずから引き受けた義務に相応しく変らなければならないことを意味します。
私たちは、緊急を要することを強調したいと思います。50年以上、核保有国は、貧困、搾取、汚染、資源を損なう生態系破壊という緊急の問題をそのままに、膨大な人的・思想的・経済的及び技術的資源をその核兵器備蓄に費やしてきました。冷戦が終ってはや10年以上になりますが、いつくるかも判らない核絶滅を恐れつつ生きていると強く批判される世界は、依然として多くの為政者たちによって当り前の事態と見られています。
最近のNATOの声明は緊急性の意味を反映していません。私たちは、合衆国国防次官のウォルター・スローカムから「NATOの核政策を包括的に見直す計画はない」と通告されています。12月にハーグでのセミナーで話したNATOの高官は、NATO加盟国政府がずっと先のことは別として核政策を見直そうとはしていないと認めています。2000年12月、ブリュッセルの閣僚会議は、他の世界のNATO核政策における根本的変化についての増大する要求に、充分な回答を持ち合わせていませんでした。そればかりか彼らは、1999年4月のワシントン・サミット・コミュニケの32項、つまり「同盟国は、信頼と安全を確保する手段、確認、不拡散及び軍備管理・軍縮のための選択肢を考慮するであろう」という約束を果たしていないのです。
12月15日の外務大臣の経過報告は、核不拡散条約の再検討においてNATO加盟国によって作られた公約を認めながら、NATOの従来の核政策を繰り返しただけでした。報告は32項に若干の注意を払ってはいます。ところが報告の大部分は、冷戦終結以降同盟国がその巨大な核戦力をどのように削減してきたかに宛てられ、今後軍縮手段について何を提案するかについてはほとんど触れていません。「ロシアとの信頼と安全を確保する手段」の項は、双方ともまだ維持している無謀極まりない警報即発射の政策に口輪をかける程度で、依然として核抑止の持続を前提としています。
英国外務連絡省(FCO) から最近受理した書簡では、「NATOの戦略構想とNPO 再検討会議の最終文書との間に本質的な矛盾が存在している、とのあなたたちの提議は認められません」[2000 年8 月4 日付けジョージ・フェアブラザー宛て書簡] 、あるいは「我々は、わが国の現政策に根本的変更を必要とする仮定からのスタートはしません。もちろん我々は、再検討会議の結論が、核抑止政策に対して直接的に異議を申立てているのだ、というあなたたちの見解は承認しません」[2000 年11月21日付けロバート・グリーン宛て書簡] との立場をなおも主張されています。
この態度はトライデント・プラウシェアズにとって理解に苦しむものです。自国の核兵力を廃絶しようという核兵器保有国の「明確な約束」は、NATOの核政策とは明らかに矛盾するものです。NATOの核政策は、例を挙げるならば、次のようなNATOの戦略構想の中で表明されている通りです。「同盟国は予期し得る未来のために、核と在来型の混在する適切な戦力をヨーロッパの基地に維持するつもりである。核兵器は、同盟国に対する侵略行為のリスクを予測不能かつ容認できないものとすることにおいて他に代え難い貢献を為している。したがって、平和を守るための本質的要素として核兵器を存続する。」このような表明は明らかに、予期し得る未来のためにNATOは、NATOに委託されている核兵器の廃絶には関わらないことを明確に示すものです。
同じことが英国の考え方にも当てはまります。ステファン・ウィルマー氏の書簡は私たちに対して次のように語っています。「『自国と同盟国を防衛するという英国の決意を侵略側が見損なっているぞ』という限定された明白な政治的シグナルを侵略者に送ることで侵略を断念するよう促す、という自衛の極限的状況の中では」準戦略兵器が使用されるかも知れない、と。これはICJ(国際司法裁判所) の勧告的意見のパラグラフ105Fを用いているのですが、その真意を理解していません。核兵器のいかなる合法的使用も、均衡性と区別性に関する国際的人道法の基準に合致していなければならないし、その国家の存続が脅威にさらされていなければならないでありましょう。「... 英国あるいはその従属国もしくは自国軍隊またはその同盟国あるいは英国が安全保障の約束を交わしている国家に対して、核兵器保有国による侵略あるいはその他の攻撃が実行された場合、もしくは同盟国または連合国内で損害をこうむった場合には」核兵器を用いることができるであろう、ということを私たちが読むと、非核攻撃に対して核による反撃を考慮しているように思われるのです。これが無差別的であって釣り合いのとれないものである、という理由により不法なものであることはほぼ確実でしょう。さらに、国家存続の基準にも合致しないことは明らかです。
私たちは英国が「新アジェンダ」決議の実施パラグラフ18を受容れたことを歓迎します.しかし,英国政府がこれを核兵器条約に対する明瞭な約束として見なしているとは,私たちには確信できません.英国外務連絡省(FCO)からの書簡は次のように述べています.「その部分に関しては,生物・化学兵器がそれぞれ生物・化学兵器条約で禁止されたのと同様に,論理的には,核兵器廃絶の過程は究極的には核兵器を禁止する核兵器条約に至るということを英国政府は認めています.しかし,明らかにそのような合意はこの領域での二国間や多国間の協定の枠組みを次々に作っていくことによって成されるでしょう.」この書簡はかなり励みになります,しかし,核兵器条約までの道には多大の手順や交渉が立ちはだかっているということをも示唆しています.「究極的」というような言葉は核兵器条約を不確定の未来に押しやっているのです.あなたは今現在,核兵器協定に関与(コミット)していますか?
同盟が考えうる方法についてのいくつかの有用な指針が最近のNATO会議の議会決議の中に見いだされます.その決議は同盟国の政府や議会に次のことを勧告しています.即ち,「戦術核兵器の廃絶に取り組むこと,核不拡散条約と2000年5月の条約見直しにおいて決められた決定を履行するように活発にそして緊急に取り組むこと,そしてこれらの取り組みが,軍備コントロール,軍縮,核不拡散に対する選択肢についての研究の結論がでた後に,同盟の仕事の一部となることを確実にすること,そしてその再調査の結果を公表すること.」昨年12月の首脳会議はこの提案に従って行動していません.
私たちは核兵器廃絶と軍備コントロールとは同じものではないということを強調したいのです.核兵器廃絶は,核兵器が一切ない世界へ向けての過程を意味します.それは核兵器を完全に拒絶するとともに核抑止論をも受け付けないのです.軍備管理は核兵器を前提にしています.軍備コントロールの処置は,非武装化への道にそった基本的なステップであり,それゆえ,歓迎されるべきものですが,それだけでは十分ではありません.
NATOの声明はおもに軍備コントロールに言及しています.「英国戦略防衛見直し」は,核分裂物質の透明性やコントロールまたトライデント弾頭の削減といった分野で軍備コントロールをたくさん推賞していますし,また,私たちは包括的核実験禁止条約(CTBT)に対する英国の支持を歓迎します.しかし,これらは軍備管理の処置に止まります.それらは,よりスマートで巧みな外観のもとで核抑止を無期限に維持することと完全に両立するのです.
従って私たちは、「不可後退性の原則」が「核軍縮、核その他関連軍備の管理及び削減措置に適用されるべきで」あることを要求する、核不拡散条約の行動計画の項に立ち帰りたいと思います。私たちの理解によれば、後退できない措置とは、それらが核兵器を使用したり安全を核兵器に依存させたりすることをますます困難にするであろうということです。従って、「核兵器が使われかねない危険を最小限にし、その全面的廃止の過程を容易にすることは、安全保障政策における核兵器の衰え行く役割」についての計画の要求と密接に繋がっています。トライデント・ミサイルを警戒態勢から外し、弾頭をミサイルと分離して、それらを不活性化するような措置は、連合王国がその軍縮義務を真摯に取り上げていること、そして私たちが自分たちの軍縮行動の休止を考え得ることを確信させる方向への長い道程を歩むことになるでしょう。貴方はいつ、このような措置に戻りますか?
スティーヴン・ウィルマーの手紙はこのような選択を拒んでいます。彼は「『戦略的防衛の見直し』で他の防衛手段が考慮されたが、エスカレーションと不安定性という新しいリスクを生じるものとして退けられた.これらは,危機が増大するなかで我々の核抑止力が果たすはずの安定化の役割を台無しにするのである.これは明らかに国際間の安定の促進と矛盾するであろう」と述べました。
軍縮は念入りに遂行されなければならないと認めているのに、この議論は循環論で自己矛盾であると思われます。それは核兵器を無くすために核兵器の保持を前提とし、その論理的帰結からすれば、どんなに重要な軍縮措置でも何であれ不可能にするでしょう。過去において、INF(中距離核)条約をもたらしたような、大胆で一方的な措置が真の核軍縮を生み出しています。私たちは、この論点についての政府の考え方のいっそうの解明と明確化を必要とします。「……政府は、連合王国によって核兵器の使用が考慮され得るような状況が今や極度に遠のいていると信じる」というスティーヴン・ウィルマーのコメントに留意しつつ、思い切った一歩を踏み出すべきときが来ています。
不可後退性の原則はイギリスの核抑止の未来にも適用されます。トライデントはいつまでももたないでしょう。「戦略的防衛の見直し」はそれを取り替えるという選択を残しています。このような決定はどんなものであれ全く速やかに除かれるべきであり、2000年核不拡散条約再検討会議の最終文書と新アジェンダ決議のいずれとも相容れないでしょう。貴方は、このような計画は今は放棄されていると声明するつもりがありますか?
この間、実際的状況は変っていません。連合王国の100キロトン核弾頭の配備は依然として、私たち全てを差し迫った核カタストロフィによって脅かしており、明確な国際的人道法違反を体現しています。従って、責任ある地球市民として、私たちは2月12日ファスレーンで、この未だに現存する危険を無力化する努力を続けるでしょう。
敬具
モラグ・バルフォア,シルビア・ボイズ,マギー・チャーンレイ,アリソン・クレイン,カースティー・ギャザーグッド,アンドルー・グレイ,ヘレン・ハリス,デイヴィッド・ヘラー,サラ・レイスンビー,デイヴィッド・マッケンジー,ブライアン・クエイル,ジェイン・タレンツ,マールジャン・ウィレムセン,アンジー・ゼルター