非浸潤がんについて



2004.1.21 記
マンモグラフィ、ステレオガイド生検、マンモトームなど、検査技術の進歩により、しこりを形成する前の段階で、超早期の乳がんを診断することが可能になりました。

しこりを触れなくても微細な石灰化の集積像をマンモグラフィで認めた場合、非浸潤がんを疑います。石灰化がすべて早期乳がんの兆候であるわけではなく、“明らかに早期乳がんを疑う所見”でなくては、ほとんどの場合は経過観察で変化がないかを見ていくケースが多いです。

もし、乳がんの兆候であった場合は、画像に変化が見られます。ただ、石灰化があるだけで、体に侵襲を加える検査をすることは適切ではないと考えられています。
また、たとえ悪性であったとしても、非浸潤がんの状態で診断をつけることができ、治療をすれば、完治が十分に望めるということもあります。

ですから、石灰化を経過観察していて、何ヵ月後、あるいは何年後かに変化が見られ、より詳しい検査をして乳がんが発見されたとすればそれは意味のある経過観察の期間だったと言えるのではないでしょうか。もっと早く見つけてもらえなかったのか、見逃されていたのではないかと考えてしまいがちですが、それは少し違うのではないかと私は思っています。


がんがなぜ怖いのか・・。それは、転移を起こすことです。生命を維持するための主要な臓器をがんの転移によって侵されてしまう危険があるからではないでしょうか。

非浸潤がんは名前が示すとおり、浸潤していない、もしくは浸潤の能力を獲得していない=転移を起こす能力もまだ獲得していない状態だと言ってよいと思います。乳がんの場合は、乳管の中にとどまっている状態がこれに当たります。
転移ができなければ、乳房にできたがんが命を脅かすことはないのです。

けれど、非浸潤がんと確定診断をつけることは簡単ではありません。

最終的には摘出したものを病理で詳しく検索してはじめて、非浸潤なのか、浸潤がんなのかが決まると言ってもいいと思います。

ただ、データや経験の積み重ねから手術前の検査で非浸潤がんと想定することは可能です。


どのような治療を選択するか

手術にはさまざまな選択肢があります。

○乳房全切除のみ
○乳房全切除+リンパ節郭清
○乳房全切除+センチネルリンパ生検
○乳房温存のみ
○乳房温存+リンパ郭清
○乳房温存+センチネルリンパ生検

さらに、温存の場合放射線治療を併用するか否かや
乳房再建まで考えるとバリエーションがたくさんあります。

また、一回の手術ではなく、まずは温存、検査の結果によっては追加手術というように2度、3度の手術を受けるという選択肢だってあるわけです。

できるだけ、手術は小さくしたい、乳房だってできれば残したい。そう願うのは自然だと思います。まして、しこりもまだ作れないような早期のうちに見つかったのだから、当然手術も小さくすませることができるはずだ・・・そう思いがちです。事実、浸潤がんであれば、しこりが小さいほど温存できる確率は高いわけです。

浸潤がんの場合の温存は、残した乳房への局所再発の可能性と、転移の可能性はあるということを理解した上で行うものです。データの積み重ねにより、温存も全摘も再発する率やその後の病気の経過に差はないということがわかってきて、それならばできるだけ乳房を残そうという考え方です。

ところが・・・です。
非浸潤がんの場合は、がん細胞を完全に取りきってしまえば、再発・転移の可能性は理論上あり得ません。完治が十分に望めるのです。ですから、超早期なのに、超早期だからこそ、完全を目指して全摘をするという選択もあるのです。

手術に関しては非浸潤がんゆえのパラドックスがあるのです。

昔(といっても何十年前というわけではなく)は、石灰化をきっかけとして見つかったような非浸潤がんは全摘というのが常識だった時代もあるようですが、近年、非浸潤がんであっても、石灰化が局在しているような場合は温存が可能になりました。
ただし、浸潤がんと同じように残した乳房への局所再発のリスクは承知しておく必要があります。もちろん、そのリスクを下げるために放射線を併用するというのが一般的ではあります。

石灰化が広範囲に広がっているような場合は今でも全摘が推奨されています。

リンパ節を取るかどうかについてもさまざまな考え方があります。
非浸潤がんであればリンパ節やその先の全身への転移はないはずなので、リンパ節は郭清する必要はないという考え方が多くを占めるようになってきたようです。



がんの治療において、こうすればこうなる・・という唯一の正しい方法や答えはありません。どんな手術や治療にもリスクとベネフィットがあり、それを自分の中ではかりにかけ、その人なりの価値観や考え方で決めていくしかありません。

非浸潤がんといわれるものには、がんもどきのようなものもあり、放っておいても悪さはしないという意見を持つ人もいますし、極端な話、ずっと経過観察だけで何もしないということから徹底的に治療をするという選択肢まで何でもあり・・・という表現をする人もいます。

そして、ひとつの方法を選んだとき、選ばなかった方法と比較して検証することはできません。
体はひとつしかなく、時間も戻すことはできません。

ですから、迷い悩んで選んだことは、自分にとってこれが一番良いのだと信じて治療を受けたいと思います。

ここに、書いたことは、非浸潤がんについて私が理解していることです。今、悩んでいる人、情報を求めている人、体験者の話を聞いてみたいと思っているひと、そんな人たちに例えば私はこんなふうに考えていますというひとつの考え方でしかありません。

ただ、非浸潤がんゆえの迷いや悩みの真っ只中にいる人たちに体験者の一人として私の考えていることを書いてみました。

どんな選択をしても、それが“あなた”にとっての正解であると私は思います。