早期発見・早期治療

  がんの早期発見早期治療が叫ばれてるが、ほんとうにそうだろうか。もちろん、少しでも早く見つけて治療をしたほうがよいとデータは示している。
が、どうだろう。がんの種類によっては、早期に見つけても治癒の難しいものもある。そして、がんの性質によって同じ部位のがんであっても予後の良いものと悪いものがあることも事実だ。

父を膵臓がんで亡くした。見つかったとき、がんの大きさは6センチにもなっていた。もし、もっと早くがんが小さいうちに見つけていたら果たして父は治癒しただろうか。おそらくそうではなかっただろう。もしかすると、たとえ1年早く発見していたとしても、父のエンドポイントにどれほどの違いが出たのかはわからない。

もちろん、これは、父のがんが膵臓であったことが大きな要因だろう。がんの中でも非常に悪性度が高いものだからだ。父のときとはちがい、今はジェムザールなど膵臓がんにも有効性を示す薬剤が保険適用されているので、時代はどんどん動いているし、近い将来薬だけでがんを治す時代が来ると私は思っている。

けれど、今はまだ「早期発見・早期治療」が一番良いというのが一般的な考えだろう。私は、それを否定しようとしているわけではない。もちろん、早期に見つけ早く治療をしたほうが、治療による身体へのダメージだって少ないし、治癒の可能性も高まるだろう。

では、なぜ最初に否定的に書いたのか。
がんのことをよく知らない人は、病状の進んでしまった人に「もっと早く見つけていれば・・」とか、「どうしてもっと早く気がつかなかったのか・・」というような言ってしまうことがよくある。
そんな言葉を投げかけられた患者はまるで自分に非があるように感じてしまうのではないだろうか。そんなこと言われなくたって、「あのときこうしていれば」とか、「どうして気がつかなかったんだろう」「○○だったからがんになったのかもしれない・・」と自分を責めてしまいがちなのだ。

がんを知れば知るほど、がんは同じ部位であっても一人ひとりみんな違うがんであるということがわかってくる。データは早期にみつかったほうが成績が良いと出ているしそれは疑う余地もない。でも、データはあくまで全体を見てどうかと言っているわけで、特定の個人がどうか・・ということを言ってるのではない。
ごく早期に見つかったにも関わらず進行の早いものがある一方、かなり進んでから見つかっても治療などによりあまり進行しないものだってめずらしくはない。

早期発見には意味があるし、大切なことではあるけれど、もしそうでなくがんが見つかってしまってもそれですべてが決まってしまうのではないと私は思っている。



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