入 院 中 の 日 記 −4−




1999年1月3日 外泊が終わりまた病院

あっという間の3日間が過ぎて、また、病院へ戻った。 入院の日は、今よりずっと、不安でいっぱいだったのに、 自分一人で家を出たのに、今日は、とてもつらかった。 今日は、娘や母に行ってきますを言って、車に乗った とたん、涙があふれてしまった。

母とも、ゆっくり話をしてきた。手術後、摘出したものを 見て、先生もしこりを触れることができないと、説明を受け、 何で、こんなに取ったんですかって、叫び出しそうになった そうだ。自分自身の一部が切り取られたような感覚になったらしい。 先生ではなく、私自身がこの手術を選んだのだから、私は これでよかったって思っていると話した。

私自身、正直に言えば、今だって、揺れているのである。 ”治る”ことと、引換えにしたとはいえ、こんな早期にみつ かったのに、あまりにも、代償が大きかったような悔しさもある。一方では、ガンに対して、これくらいの手術で、立ち向か えるのだろうか。ガンを甘く見てはいないだろうか。 手術を終えた今だって本当は迷っているのだ。


1月4日 手術後2週間

久しぶりに主治医の先生の診察。注射器で、胸に溜まっている 水を抜いてもらった。恐くて大騒ぎ。20CCくらい 抜いたけど、痛くはなかった。

病理の結果がでないと、今後の予定がたたないけど、 今日、婦人科の診察を受けてくるように、指示が出た。 2ヶ月ぶりに婦人科へ行き、病理の結果を見て、外科の 先生と相談しながら、筋腫の手術の計画をして下さることに なった。


1月5日 先に手術をした人の結果が出た

Tさんは、リンパに1個だけ入っていたので、抗癌剤の 点滴をすることになった。Sさんは、退院の許可が出た。 Tさんは、1センチくらいの大きさで、しかも、検診でみつ かった人だ。本人もみんなも絶対に大丈夫だと思っていたのに、 まさか、リンパに入っているなんて………。

Tさん自身が、一番ショックを受けたけど、私たちみんなも すごくショックだった。


1月6日 Sさん退院

朝の回診で、2回目の水抜き。風邪をひいたようで、体調はいまいち。

夕方、先生に自分の病理の結果が、とても不安になってきたことを話した。 やっぱり、リンパも取ったほうが安心だったかななんて、言ったら、 後ろを振り向くのはやめようと言われた。私の結果は他の人より 長くかかるそうだ。

私と同じ石灰化でみつかり、全摘、リンパ郭清を選んだAさん に、私たちの場合どんなことがあるのかなどを、聞かれた。 私は自分で調べたことや、先生からの説明をもとに、私が 理解している範囲の事を話したけど、とにかく、病理の結果は、 ひとりひとり、違うし、先生から、結果を告げられるまでは、 何にもわからないのだ。みんな、元気だけど、心の中に、大きな 不安を抱えて、結果を待っているのだ。


1月7日

Aさんは、いい結果が出た。摘出した乳腺のどこにもガン細胞 はなかった。即退院の許可が出た。薬の服用も必要無く、 退院後の検診は1ヵ月に一度。本当に良かった。


1月11日

先生が珍しく、マスクをして病棟に現れた。当直のとき、 すごく忙しくて、全然眠れなかったらしいので、とうとう風邪 をひいたに違いない。お医者さんこそ、とても不健全な生活を している人たちである。

早ければ明日結果が出るらしい。悪くても、命にかかわることは ないと言われたので、恐れずに待とう。原点に戻り、治れば良し と考えよう。結果はもう、決まっているのだし、どんな結果でも ちゃんと、受け止めよう。


1月12日 術後3週間・病理結果が出た!!

摘出した乳腺には、全くガン細胞はなく、生検で、完全に 取りきれていた。まず、再発の恐れは限りなくゼロに近いだろう ということ。薬は必要ないだろうけど、もう一方の乳房だって、 将来ガンになる可能性はあるのだから、その予防にもなるので、 5年間ホルモン剤の服用をする。1ヵ月に1度の通院。3ヵ月 に1度の検査。2・3日うちに、外科から婦人科に転科して、 筋腫の手術をする。


1月14日 外科退院後婦人科へ転科 子宮筋腫の手術を受ける。

筋腫の手術後約10日を経て、完全に退院。 入院の期間はトータルで1ヵ月半


1月31日 退院

退院診察のときの先生の説明

  • 乳管内に限局された、非浸潤がん(DCIS)であること。
  • 手術で摘出した乳腺には全くがん細胞はなかったので、 生検での病理検査の結果がすべてであること。
  • 石灰化の場合は、ER(ホルモン受容体)は、調べていないが、 乳管内のがんは、ER(+)の場合が多い。したがって、タモキシフェン の服用は有効である。
  • 退院後の生活の制限は何もなし。ただし、更年期障害などで、 ホルモン治療をすることは、がんにはマイナスに作用するので、 避けたほうがよい。


こうして、私の乳がん騒動は、とりあえず、一段落した。 けれど、完治したとバンザイできるのは、10年先だ。

これから、毎月1回の通院や、転移の有無を調べる検査が 何年も続く事になる。元どおりの生活に戻れる喜びの中にも、 がんになる前とは少し違う自分に気づく事がある。


退院後の私はすごく元気である。お風呂に入って、自分の 体を見ると、ああ手術したんだな。と、思うけれど、普段は なんの違和感も感じない。

リンパ節を残せたので、腕の機能にも何の問題もない。 仕事にも復帰したし、温泉にも行った。そろそろ、バレーにも 復帰するつもり。

私は乳がんにはなったけど、まだ、浸潤を始める前に 見つかったので、運動機能の温存にこだわって、手術を 選択する事ができた。これは、とても、恵まれた事だと、 思っている。

女性にとって乳がんは、命だけでなく、乳房の喪失の 不安もあり、とても恐ろしいものです。 でも、進んで検診を受けたり、しこりがあったら、すぐに 専門医の診察を受けるなど、積極的に行動して欲しいと思います。

そして、お医者さんと十分話し合って、納得できる治療を 受けたいと思います。





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