出発〜ロシア乗り継ぎ編
 <出発〜ロシア乗り継ぎ編 >

 私は、それまで高校の修学旅行で中国に行ったことはあったけれど、スポーツコースの生徒だった私
にとっては、あれは遠征合宿のようなものだった。何しろ中国に行ってまで部活をしていたのだ。日本
にいる時とたいして変わらなかったのである。開放的な気分とはとても言えなかったし(部活の顧問も
同伴していた)、全てが団体行動だったので、1人で何かをするということはほとんどなかった。日本
から出たことは確かだが、私の中では今回のこの旅が初めての海外旅行なのであった。    
 しかし、その年の2月ぐらいから計画を立てていたわりには、8月になっても自分が行くという感じ
がしなくて、旅行の準備も5日ぐらい前になってからようやく始めた。人間というのは不思議なもので、
準備を始めると途端に緊張したり、そわそわしてきたりする。その日から、去年同じくヨーロッパに一
人旅をしてきた友達に電話をかけまくり、旅行の準備を進めた。前日なんか「これでいいんだよね。大
丈夫だよね!?」という電話を2回もしてしまった。(3回だったかも…) 明日は6時に起きなけれ
ばならないというのに、すったもんだしながら夜中の2時ぐらいにようやくベッドに入った。「ああ、
次横になって寝る時には、日本にはいないんだぁ。」などと考えたらよけい寝られなくってしまった。
あほである。


  8月28日(金)   天気   大雨(日本)


   ついに海外デビューの日!前日は結局興奮してほとんど眠れず、あのまま朝を迎えてしまった。でも
緊張の固まりだった私の目はギンギンにさえていた。ご飯を食べながらテレビをつけると、ちょうど天
気予報がやっていたのでふんふん言いながら見ていると、な、なんてことだ!大雨ではないかぁ!!
ここ数日、新潟、栃木、福島などで大雨による被害を受けている事は知っていたけれど、何も私のこん
な輝かしい日に関東地方が大雨にならなくてもいいじゃないかぁ!飛行機飛ぶのかなぁ…。飛んでて落
ちちゃったらどうしよう、などとものすごい不安に駆り立てられ、でもとりあえず空港に行かなければ
何もなるまいと考え、いざ出発!私の家は駅から3分とかからないところにある。私は傘を持っていく
つもりは全然なかったので「これぐらいの距離だもん、平気さ。」と思っていた。…が、甘かった。家
を出て2、3歩歩いてもうずぶ濡れになってしまった。私はしぶしぶ家に戻り、かなり不愉快に思いつつ
傘をさして駅へと向かった。 

 横浜駅に着き、スカイビルにあるY−CATからバスで空港まで行くことにした。空港へ向かうにつれて
だんだん雨はやんでいき、ほっとしながらも傘を持ってきてしまった事にさらに不満を感じてしまった。

   空港には10時集合だったのだが、バスが遅れてしまい20分ほど遅れて到着した。私はかなり焦り
ながら中に入った。何しろここには4年前に1度来たことがあるだけで、はっきり言って右も左もわから
ない状態なのだから。しかもその時は先生の指示にしたがっていればよかったのに対し、今回は何もか
も自分でやらなければならないのである。「20分も遅れちゃったよぉ。もう受け付けられませんとか言
われちゃったらどうしよう。」と思いながらカウンターに走っていった。カウンターには人っ子一人並
んでいなかったので、かなり不安になりながら受付のお姉さんに尋ねると、お姉さんは笑顔で次はどこ
に行けばいいのか教えてくれた。ありがとぉ〜!
 お姉さんに言われたアエロフロートのカウンターに行くと、長い行列ができていた。ほっとしながら
その列の最後尾に並び、待つ事20分。荷物を量ると11.8kg。友達に言われてあんなに荷物を減ら
したのに、なんでこんなにあるのか。はて?と疑問に思いつつ、禁煙席と通路側を希望してチェック・
イン終了。よ、よかった…。安心すると急にトイレに行きたくなり、そそくさとその場を去った。
 途中、大の大人が2人は確実に入るだろというぐらい、バカでかい豹柄のスーツケースをひきずった女
の子がいた。一体何をそんなに持っていく気なんだろう?と思ったが、まぁどうでもいいやと思い、ト
イレへと向かった。
 それにしても空港使用税が高い!なんで、まだ日本にいるうちからこんなにお金を払わなければなら
ないんだ。関空はもっと高いと聞いているので、そこから行く人は大変だろうなぁ。
 私の乗る飛行機は12時出発だったので、11時15分ぐらいに税関へ向かった。税関を抜けて出発ゲート
に行き、窓から滑走路を眺める。「あぁ、これから本当に1人で行くんだなぁ。」そうは思うのだが、
不思議と昨日の夜や朝、家を出る時のような緊張はなかった。全く普通の自分が意外だった。

 搭乗時間になり飛行機へと乗りこむ。ロシアの航空会社なのだからあたりまえなのだが、ロシア人の
背の高い大柄なスチュワーデスさんに「オハヨウゴザイマス。」と出迎えられ、そのかなりの迫力にび
びってしまった。
 自分の席につき、出発時間から遅れる事約30分。ようやく離陸体制に入った。シートベルトを締めな
がら外を見る。「本当にこれから1人で外国に行くんだ。いよいよ始まるんだ。」と少し緊張しながら、
私はどんどん小さくなっていく日本を眺めていた。

 日本を出発してから、雑誌を読んだり機内食を食べたり眠ったりしているうちに、経由地であるモス
クワに到着。もう寒いのなんの!空港のスタッフはみんなダウンジャケットを着ているというのに、飛
行機から降りた私達は半そでTシャツ1枚で凍える思いだった。急いで上着を着たが「ロシアって本当に
こんなに寒いんだ。」と改めて思った。8月末でこんなに寒かったら、2月に行ったらどうなってしまう
のだろう。想像しただけでも恐ろしい。
 私の乗っていた飛行機には当然モスクワで降りる人もいて、機内で通路を挟んで隣に座っていたロシ
ア人の親子もここで降りていった。この親子がまた素晴らしい顔立ちで、私はずーっと鑑賞していた。
お母さんはスチュワーデスさんよりも数倍きれいで、日本語ペラペラだった。子供の方は13、4歳ぐら
いの男の子だったのだが、その辺の芸能人なんかよりもはるかにきれいでカッコよく、そしてかわいか
った。日本語も片言程度話していた。親子とても仲が良く、機内ではずっとふざけあっていて、私と何
度か目が合った時も、その度にニコッと極上の笑顔を見せてくれた。
 そんな笑顔ともお別れだと思うと寂しくなり、後姿を眺めては「いい男になるんだよ〜!」と密かに
エールを送ってしまった。

 ロシアには何時についたのか時差で全くわからないが、結構長い時間いたと思う。暇つぶしに免税店
をブラブラしたが、ほとんどの人が何も買うことが出来なかった。なぜかと言うと、前日にロシア通貨
のルーブルが暴落かなんかで、取引をしばらく中止してしまったのである。もちろん日本でドルに両替
していた人はいたけれど、フランスに向かうのに、わざわざドルに両替している人は少なく、みんな階
段や地面に座って時間を持て余していたのだ。モスクワの空港は「本当にここは空港なのか!?」とい
うぐらい閑散としていて、な〜んにもないのである。暇で暇でたまらなかった。

 出発時間になり、私達は飛行機に乗りこんだ。次に飛行機を降りる時には、パリである。小さい頃か
ら憧れたフランスが、もう目前!! はやる気持ちを押さえながら、私はアエロフロートの多すぎる4回
目の食事をとり始めた(っていうか、異常だ!)



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