モンパルナス〜ナント編
<モンパルナス〜ナント編>

 
 9月1日(火) パリ 曇りのち晴れ ナント 晴れ 

  朝、目が覚めてから、私は例のごとくパンとヨーグルトを食べた。昨夜、荷造りをしておいたので、
 朝はゆっくりすごせた。お世話になった感謝の気持ちをこめて、私は千代紙で鞠を作り、お礼を書
 いたメモを机において、フロントへ向かった。
  フロントで清算をしながら、お姉さんが「これからどこに向かうの?」と聞いてきたので、「ナントに
 行って、ロワール地方を旅してくる」と答えた。すると、お姉さんは「ロワール地方はすごくいいところ
 よ。田園が続いてのどかだし、歴史がたくさんあるの。いい旅になるように祈ってるわ」と言って、頬
 にキスしてくれた。私も感激しながらお姉さんにキスをして、ホテルを後にした。
  それから私は、ナント行きの列車が出ているモンパルナス駅へと向かった。モンパルナス駅は、
 地方への列車が乗り入れしていることもあって、とにかく広い。そして綺麗。ナントへ行くには、TGV
 というフランスが誇る世界最高速列車(1998年現在)に乗る。専用線区間では、最高時速300キロで
 走る。
  窓口で13:50発のナント行きのTGVを予約。日本でフランスヴァカンス・パスを購入していたので、
 支払いは、予約分の20Fだけですんだ。言うまでもなく、当然2等席である。

  出発までの時間、私は家族や友達に書いていたハガキを出しに、郵便局へと向かった。幸い駅の
 近くにあったので、さほど時間はかからなかった。初めてフランスの郵便局へ行ったのだが、みんな
 すごく親切で、笑顔が絶えない。私が「日本までお願いします」というと、おじさんは「どの切手が
 いい?」と、数種類の切手を見せてくれた。私は自分の気に入ったものを選んで、それでお願いする
 ことにした。ちなみにフランスから日本への航空便(ハガキ&手紙に関して)は、5日から7日かかる。

  郵便局を後にして、暇つぶしにモンパルナス・タワーへ行った。でかいー!高いー!高さ209mを誇る
 オフィスビルで、57階と屋上のテラスからはパリの絶景を楽しむことができるらしい。タワーの低層部分
 はショッピングセンターとなっていて、デパートのギャラリー・ラファイエットやブティックが入っている。
 私はこれまた時間つぶしのために、お店をブラブラした。なんら、日本のデパートと変わりはない。結局、
 そのまま外に出て、ベンチに座ってパリの空をぼけーっと眺めていた。なんだか今思い返すと、私はこの
 旅で、やたらぼーっとしてばかりいた気がする・・・。

  そろそろ出発の時間なので、駅に戻り、ホームへ向かう。すごく思ったのだが、TGVって長い……。
 歩いても歩いても自分の席の車両に辿り着かない。だんだん不安になるぐらい、長いのである。ようやく
 指定の20車両に着き、私はほっとしながら席に座った。周りには、家族連れ、カップル、出張らしき人達
 でいっぱいだった。
  時間になり、列車が動き出す。とうとうパリを離れるんだなぁなどと思いながら、私はパリでの思い出を
 頭に思い浮かべた。

  これから向かうナントという街は、人口約25万人、ロワールとブルターニュ両地方で、最大の都市で
 ある。一般の人には、フランスワールドカップの日本の初戦の地と言ったほうが、馴染みはあるかもしれ
 ない。
  18世紀初頭には、アフリカから買い付けた砂糖貿易の中継地として、またそれと並行して行っていた
 奴隷貿易でも、莫大な利益を得ていた。かつては、名実ともにフランス随一の海上貿易港だったが、フラ
 ンス革命後、奴隷貿易は廃止され、砂糖も国内生産が始まったため、衰退していったのである。
  現在では、ロワール地方の一部であるけれども、ブルターニュ公国の中心都市であったという、ナント
 の歴史は、フランス史にとっても、とても重要なものである。
  そのナントへ自分は向かっている。私は窓の外に続く緑の田園地帯を眺めながら、期待と不安が自分
 の胸に込み上げてくるのを感じていた。


↑モンパルナスからナントへ向かう、TGVの切符。
実物は、縦8、3センチ 横20、5センチとでかい。




 
  TGVに揺られること、約2時間。のどかな田園風景を過ぎて視界に飛びこんできたのは大きな川だった。
 駅は横に長く、割りと大きい。駅から出ると良い天気で、ものすごく暑かった。
  とりあえず私は宿を確保しなければと思い、ユースホステルガイドを広げ、駅から徒歩5分ほどのところ
 にあるというユースに泊まることにした。このユースに関しては地図が無かったので、住所のみで探すこ
 とになったのだが、私はとことん自分は方向音痴だと思い知った。一応、駅からそのユースに電話をして
(すごく緊張した)予約を入れたのだが、一向に辿りつけないのである。しかもここはパリと違って、人も
 建物も少ない。パリなら疲れたら公園などでゆっくり休んだりできるけれど、ここにはそういうものがあまり
 ないので、炎天下の中、重いリュックを背負ってひたすら歩くしかなかったのである。そうして私が、駅の
 出口を間違っていたことに気付くのは、約2時間後だった・・・。

  そんなこんなでようやくユースに辿りつき、私は驚いた。だって、めちゃくちゃでかい!なんだここは!
 学校なのか?と本気で思った。このNantes Place de la Manu YHは、住宅街の中に突然あって、窓枠は
 全て赤で囲まれていたのが、とても印象的だった。YHとしてオープンしている期間も6月30日〜9月15日
 までで、私が行った時には、そろそろクローズになる時期だったのである。
  受付をすませようと思い、中に入ったの入ったのはいいが、誰もいない。声をかけても誰も現れないので、
 ソファに座って待っていると、やがて黒人さんが現れた。とりあえず2日間泊まることにして、鍵を渡されて
 自分の部屋に向かう。私の部屋は4階なのでエレベーターを利用したのだが、本当にでかいYHだ。この旅
 を通しても1番大きいYHだった。

  部屋に入ると先客が一人いて、少し驚いたが、その子はこれからホテルを出るらしく「Have a nice trip!」
 とお互い声をかけて別れた。
  それから自分の荷物を片付けていると、突然ドアが開いて、1人の女の子が入ってきた。日本人である。
 「ごめんなさい、部屋間違えました。隣だった」と笑いながら、彼女は退室したのだが、私は久しぶりに
 自分以外の日本語を聞くことができて、無性に嬉しかった。
  しばらくして、その人が再び部屋にやってきた。「日本の方ですよね?お1人ですか?」と話し掛けてくれ
 たので、私も嬉しくなって返事をし、それから2人で色々な話で盛り上った。
  彼女はユキコさんといい、日本で某企業(誰でも知ってる一流出版社!)に勤めていたが、毎日が仕事
 仕事で終わっていくのに耐えられなくなり、フランス留学を決めたのだそうだ。フランスは3年目で、この
 前日まではパリにいたらしい。パリ大学(ソルボンヌ)に通っていたのだが、明日からナント大学に移ると
 のこと。私も今日きたばかりでナントには2泊3日の予定だと話すと、ユキコさんは「すごい!運命だ!」と
 目を輝かせていた。
  聞けば、ユキコさんは今日から寮に入れると思ってパリから荷物を持って出てきたらしいのだが、さっき
 大学に行ったら明日からと言われたのだそう。それで今日泊まる所がなくなってしまい、ユースを紹介さ
 れたらしいのだ。「私が間違わないで明日来てたら、絶対に会うことなかったんだよ!」と言われ、私も
 その偶然の出会いに感動してしまった。こういうことがあるから、旅は面白い。
  ユキコさんは、確か私より3つほど年上だったと思うが、とても可愛らしい人だった。1人で旅に来た理由
 や将来について話したり、ユキコさんの留学の話などを色々聞かせてもらった。やがて恋愛の話にまで
 なり、私はユキコさんに「君は絶対に外人ウケするタイプだよ。その性格は絶対!」と力強く言われてし
 まった。そうなのか。では、美青年求む。

  夜まで2人で話しまくり、最後に「明日、外で夕食一緒に食べよう」と言われ、私はもちろん頷いた。日本
 人でも、日本にいたら絶対に出会うことのない人だったんだと思うと、本当に不思議である。改めて一人旅
 をしてよかったと思った。明日はナント見物だー!


今日の出費: メトロ切符   8F
         TGV予約   20F
         ユース2泊 157F
         ジュース    7F
         ロッカー    15F

                             合計 207F
 
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