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 専門医を考える
腹腔鏡」講習会で訓練

練習装置を使い腹腔鏡治療での縫合に取り組む医師たち(沖縄県の講習会で)

 12個の丸い穴が開いた箱。両手に持った金属の棒を適当な穴に挿入して細かく動かす。一見、たこ焼き作りのようだが、30歳代の医師たちが取り組んでいるのは、腹腔(ふっくう)鏡手術での縫合の練習だ。

 日本内視鏡外科学会が今年、全国7か所で実施する「内視鏡下結紮(けっさつ)・縫合手技講習会」。各会場20〜30人の定員が、募集開始から数日で埋まるほどの人気を集める。

 内部が見えない“たこ焼き器”の中には、臓器をイメージしたゴムの膜が張ってある。金属の棒は先端に開閉できるツメがついた鉗子(かんし)で、体内の組織をつかんだり、切除したりするのに使う器具だ。

 この練習装置では、人体に見立てた箱に、穴から鉗子を挿し入れる。箱内の様子を眼前のモニターで確認しながら、ゴム製の膜を鉗子でつかんで針を通し、結び合わせる。

 日本内視鏡外科学会は、技術の未熟さから起こる事故を防ごうと、腹腔鏡手術のビデオによる技術認定審査を導入した。消化器外科分野では専門医422人が申請したが、合格率は53%と半数が不合格。縫合技術の未熟さが目立ったため、講習会が企画された。

 基本は平結び。結びにくい部位では、結び目を作ってから、ずらして締め上げる基礎を学ぶ。指導役を務める内視鏡手術専門クリニック「四谷メディカルキューブ」(東京)の外科医、金平永二さん(45)は「技術習得には指導とトレーニングが必要です」と話す。

 腹腔鏡手術には特有のテクニックがある。鉗子を使うためメスの角度や動きの制限は著しい。経験不足だと、無理な角度で切除するため、切断面などがギザギザになることもある。

 そこで金平さんが勧める技術が「ムーブ・ザ・グラウンド」(大地を動かせ)。胃や腸などの柔軟な組織は、片方の鉗子を使って、切除しやすい位置まで組織の方を動かしてしまう。開腹手術にはない方法だ。

 「目からうろこが落ちました」。講習後、参加者は同様の感想を残していく。「腹腔鏡手術は指導者不足のため、自己流で行き詰まる人が多い。でも、ちょっとした助言で見違えるほどうまくなる」と金平さん。

 大学などでも実技の練習装置を備えるところが増えてきた。だが、「使い方がわからなかった」という講習会参加者もおり、基礎訓練の習慣が定着しているとは言えないようだ。

 手術法が進歩しても、医師の技術が伴わなければ、逆に危険を招く。適切な指導を受け、トレーニングができる環境の整備が急務だ。

(佐藤光展)


 実技試験 日本内視鏡外科学会は、消化器外科、産婦人科、泌尿器科など分野ごとに技術審査を実施。細い管(カテーテル)を使った脳動脈瘤(りゅう)治療を行う日本脳神経血管内治療学会は、専門医認定に実技試験を課す。ほか、人形を使い気管挿管の手技をみる日本麻酔科学会、パーキンソン病などの模擬患者に対する診察を審査する日本神経学会などがある。


(2005年6月17日読売新聞)