糖尿病と歯周病の関係

糖尿病をめぐる状況
糖尿病は日本で男性7.1%(50〜60歳代に多い)、女性4.5%、40歳代では10人に1人になっています。男性の通院率第4位で人口千人中28.8人です。国際的には中位の有病率です。実際、糖尿病の治療を受けている人は、推定人口の約3割にすぎません。

糖尿病の原因

  • 現代社会によるもの
    (1)喫煙・食べすぎ・運動不足・ストレス・アルコールの飲みすぎ
    (2)外食産業の隆盛・自動車社会の繁栄・肥満の増加・ストレス社会・飲酒量の増大
  • 遺伝によるもの

糖尿病とは

  • 正常の場合
    血液中のグルコースはすい臓から分泌されるインスリン(ホルモン)によって細胞に
    取り込まれエネルギーとしてつかわれます。
    インスリンの分泌が低下すると・・・

  • 異常発生
    グルコースを利用できなくなり、血液中のブドウ糖濃度「血糖値」が高くなる(高血糖)
    これが継続すると・・・糖尿病
T型糖尿病との関係
T型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)

膵臓のインスリンを作り出す細胞(β細胞)破壊され、インスリン分泌 が枯渇した状態。
プラークの量のわりに歯肉炎が著明で、年齢につれて付着が喪失し、歯槽骨吸収が進行していく可能性があるため、早期の歯周病の診断と糖尿病の厳密なコントロールが必要である

II型糖尿病との関係
II型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病) 90〜95%
インスリンの分泌の低下とインスリン抵抗性(細胞のインスリン感受性の低下)により発症。
II型糖尿病患者は、非糖尿病患者と比べて歯周病が重症である。歯槽骨の吸収は3,4倍進みやすく重症な歯周炎に罹患している場合が多い。また血糖のコントロール(HbA1c)が悪いほど、歯周病がより進行する傾向を示す。

術前の良好なコントロール基準

  1. 血糖値(空腹時150mg/dl以下・最高値300mg/dl以下)
  2. HbA 7〜8%以下
  3. 尿ケトン体 陰性(−)
  4. 重い合併症(特に心臓・血管系)がない。

低血糖の症状

70mg/dl以下 空腹感・あくび・徐脈などの副反感神経症状
倦怠・倦眠・脱力・めまい・不安感などの脳機能障害
50mg/dl以下 発汗(冷汗)・手指振戦・動悸などの交感神経障害
20mg/dl以下 意識障害・昏睡・痙攣などの中枢神経症

低血糖症が発生したときの対応

  1. 意識があって経口摂取可能なとき
    →ブドウ糖または砂糖20g またはそれに相当する糖質食品
     (缶ジュース1本が最適)を摂取させ安静にさせる。

  2. 意識障害があって経口摂取不能なとき
    →嘔吐による誤飲を防ぐため患者を気道確保の体勢にし
      救急車で主治医または最寄の病院まで搬送
生活習慣病としての糖尿病
  1. 糖尿病の3大合併症(腎症、網膜症、神経症)に次いで歯周病は第6番目の合併症です。
  2. 肥満の人の中で糖尿病が強く疑われる人28.0%。
    糖尿病の可能性を否定できない人26.9%。
肥満人口推計2300万人 半数が健康。半数が糖尿病、高脂血症、高血圧症などの生活習慣病を合併している。
最近では肥満と糖尿病と同時に肥満と歯周病との関連の示唆されてきている。

歯と口腔の疾患における糖尿病の影響

コントロール不良の糖尿病 唾液の分泌の減少
唾液・歯肉溝滲出液中のグルコースの低下
多形核白血球機能の低下
微小循環障害(細小血管症)
コラーゲン合成阻害
グリケーションの影響

易感染症
創傷治癒不全

歯と歯周組織
口腔粘膜の疾患の発症と進行を促す。 

糖尿病と歯周病の関係

通常の場合
食べものが分解されてできるブドウ糖は、細胞のエネルギー源となる。ブドウ糖は、インスリンというホルモンの働きによって、細胞に取り込まれる。

TNF-αが増えると
症反応によって、血液中にTNF-αが多くなると、インスリンの働きが妨げられ、ブドウ糖が細胞に取り込めなくなる。そのため。血液中のブドウ糖が増え、糖尿病が悪化する。

TNF-α(腫瘍壊死因子)

歯周炎の進行
糖尿病の悪化
に重要な役割を
果たしている

糖尿病と歯周病の改善効果 2型糖尿病患者

1993年5月初診時
歯周治療を開始
初診時52歳の男性の口腔内です。
歯周治療を行っていました。
1995年10月糖尿病
の発症が判明
2年後に来院されたとき歯垢に関係なく歯肉が全体に赤いのが分かります。
病院で調べたところ糖尿病であることが判明しました。
1997年3月糖尿病
治療継続中の口腔内
はじめよりもだいぶ血糖値などはコントロールされていましたがまだ赤みはひいていません。
2001年10月糖尿病
のコントロール良好
糖尿病のコントロールが良好となり歯肉の赤みもなくなっているのがわかります。
2002年1月糖尿病
コントロール不良気味
上の写真より3ヵ月後です。体調がよかったことから食事や運動、薬の服用を中断してしまったためまた赤みが再発しています。


糖尿病と歯周病の改善効果まとめ

  • このように糖尿病をコントロールすることによって歯肉が改善し、
    コントロールが不良になると炎症も悪化することがわかります。

  • 糖尿病があると歯周病も悪化しやすく、歯周病があると糖尿病の
    コントロールも難しくなります。どちらが欠けても治療はうまくいきません。


虫歯の発生と糖尿病の関係

糖尿病 コントロール不良 唾液分泌量の低下
唾液中の歯肉溝滲出液中のグルコース量の増加

歯垢形成の促進
歯垢のphの低下(グルコース増加により歯垢中の細菌への栄養源となるため)
コントロール良好 唾液の分泌量は健常者と違いなし

歯周病が糖尿病を招く可能性

  • 糖尿病患者が歯周病になりやすいことは知られていたが、歯周病が全身の病気に及ぼす影響が九州大学の疫学調査で明らかとなった。
  • 中等度の歯周病がある人はない人よりも2.1倍、重度の人だと3.1倍、境界型糖尿病になりやすかった。歯周病が続くと細菌が血中に取り込み血糖値を下げるインスリンの働きの邪魔をするといわれている。朝日新聞 2004.6.18 夕刊より