名東区内にも、地域に伝わる昔話が残っています。

子供たちに、その土地の持つ味わいを教えてあげたいですね。


  
   「白い矢」 

   むかし、名古屋の東の辺りは、丘がずっと続く静かな村だった。
   村人は小さな池を作り、水を大切に暮らしていた

   る年、田植えをしてもう十日にもなるのに、雨は一粒も降らなかった。
   二十日たっても だめだった
   稲は枯れはじめ、イモの苗は黄色くなった
   村人達は、この前の飢饉を思い出した。 
   食べる物といえば、木の根っこしかなかった

   人達は丘の上に集まって、天の神様に 雨を降らせて欲しい と祈りはじめた。
   三十日たっても雨は降らなんだ
   とうとう池の水は からから になってしまった

   ょうどその時、都の『武内宿祢(たけのうちのすくね)』という方が
   大勢の家来を連れてお通りになった
   
    「これは気の毒なことじゃ。私がこの村を通りかかったのも
     何かの巡りあわせであろう

   と言って、一本の白い矢をお出しになった。

    「珍しい白い鷹の羽で作った、大切な矢じゃ。これを授けよう。
     この矢を地面に真っ直ぐに立ててお祈りすれば
     これから水に困ることはないだろう

   人は、さっそく地面に白い矢を立てて、周りに集まり祈りはじめた。

   白い矢がピクッと動いた。

   矢の周りの土が黒く湿ってきた。
   みるみるうちに、矢の周りに小さい水溜りができた

    「み、み、水だぞおー!」

   矢の周りから、こんこんと水が湧き出した。みんなは肩をたたきあって喜んだ。

   水は一筋の流れになって、畑や田んぼの方へ進んでいく。
   村人は、流れにそって走り出した
   流れの中を走る者もいる。流れの中を跳ねている者もいる

    「おーい。俺の畑に水が来たぞぉ。」
    「うちの田んぼに水が入ったぁ
    「ありがたいのぉ

   村人たちは踊り出した。おーいおいと泣きながら踊っている者もいる。

   宿祢はこれを見ると、黙って立ち去れた。
   村人たちは、お礼をいうのさえ忘れていた
   日が西の空に沈みかけていた
   丘の上の白い矢が、金色に光っていた

  村人たちは、白い矢を祭った神社を「矢白神社」と呼んで大切にした。
   この村の名もいつの間にか ヤシロ村 というようになった

 ◆ お話の舞台 ◆
    名東区に残る上社、下社、一社などの地名は、矢白神社に由来するといわれている
    かつての矢白神社は、現在は貴船社と呼ばれている
                      (現在 名東区 上社・一社)

 ― 愛知県小中学校長会編「あいちの むかしばなし 5  やすらひめ」
    名東区暮らしの便利手帳                          より ―|
                                 

 

 

    
   「いのこ石」  
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   っと昔、猪高(いのたか)村の辺りには、大きな木が茂っていました。
   そこに前山という丘があり、一つの大きな石がありました
   土から出ているその石はイノシシに似ていました

    「イノシシの赤ん坊がいるかもしれんで、もっと掘り出してみようか。」
    「よせよせ。なぶっちゃぁ いかんよ。崇りがあると、えらいこっちゃ

   村の人たちは、みんなこの石を大事にしていました。
   る日の事、村の若い者たちが集まった時のことです。

    「あの大石を掘ってみたいもんだな。」
    「そうだ! 鍬(くわ)を持って大石の所へいこうぜ

   若者たちは、鍬を打ち下ろしては周りの土を取っていきました。
   一人の若者が力一杯鍬を振り下ろした時

    「グワ―ン、グワ―ン …」

   不思議不思議、大石がうなり出したのです。  

    「グワ―ン、グワ―ン、グワ―ン …」

   大石に鍬が当たるたびに、物凄いうなりが響き渡りました。
   者たちはだんだん心配になってきました。

    「おれは、頭が痛くなってきた。どうもいかん。先に帰らせてもらうぜ。」
    「おれも、なんだか目が回って…。気分が悪いわ

   二人が帰った後も、若者たちは次々に身体の具合が悪い、と座り込んでしまいました。
   とうとう大石をそのままにして、若者たちは家へ帰ってしまいました
   その晩から、若者たちは熱を出して寝込んでしまいました

   りゃ、大石の崇りだ。」
    「おっ母さんイノシシが怒ってござるだよ

   村の年寄り衆がびっくりして、また元のように石の周りに土を寄せてやりました。
   それから村の人たちは、この石を 『大石さま』と呼んで
   赤ちゃんが生まれる頃になると御参りするようになりました

    「元気な赤ん坊が生まれますように…」と

   一生懸命拝みました。
   それからは、猪高村のおっ母さんや赤ん坊は、みんな丈夫に暮らせたということです

 ◆ お話の舞台 ◆
    香流川の北側に 牡石を祭る「猪子石神社」
    南側の前山という所には 牝石を祭る「大石神社」があります
               (現在 名東区香坂・山の手1)

― 愛知県小中学校長会編「あいちの むかしばなし 4  とびしまの大さめ」 より ―
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