もやもや病と脳血流


脳の血流は、血圧が上昇しても低下しても一定に保たれるようになっています.これを自動調節能と言います.脳梗塞は、脳組織への血流が限界を超えて低下する場合に起こります.何らかの原因で、脳への血流が低下した場合、すぐに脳梗塞になるのではなく、まず第一段階として、動脈(細動脈)が拡張して脳組織への血流を保とうとします.これでも足りないときは、第二段階として、酸素の消費能力を上げることによって、脳梗塞にならないようにします.これ以上に脳血流が低下すると、脳梗塞になってしまいます.

もやもや病の場合、両側の内頚動脈が狭窄・閉塞しているため、脳の還流圧が低下しています.そのため、第一段階、第二段階のメカニズムによって、脳血流を保っています.一過性の脳虚血発作や脳梗塞になるのは、脳血流が限界以下に低下してしまうか、低還流のため血栓が形成され、限界以下の脳還流になっておこると考えられています.短時間で、血流が回復すれば、一過性脳虚血発作で終わりますし、非可逆的な変化が脳組織に起こってしまうと、脳梗塞になってしまいます.


血管吻合の手術は、この低還流になった脳組織に対して頭蓋外から血流を補ってやるのが目的です.直接吻合であれ、間接吻合であれ、足りない血流を外科的な方法で補うわけです.内科的に、薬物で血流を補う可能性もあるかも知れませんが、有効とされた薬はありません.

脳血流の検査方法には、ポジトロン(PET)やシングルフォトン(SPECT)を使った核医学的な方法やゼノンガスを使った方法などが行われています.最近では、CTやMRIで造影剤を使った脳血流検査も行われるようになってきています.

蛇足ですが、この検査は、費用が高いため、もやもや病の認定を受ける前に外来検査で行うと経済的な負担が大きくなります.できれば、認定を受けてから、検査を受けたほうが良いと思います.


脳血流に関する論文


Takeuchiらは、20人の若いもやもや病患者さんと5人の若い正常ボランテアの脳血流をゼノンガスを使い検査しました.もやもや病患者さんでは、多くの患者さんで、両側の大脳半球の平均脳血流が低下していました.特に前頭葉の上部で低下し、側頭葉後部や後頭葉では、脳血流はあまり低下がなく平均値でした.過換気負荷で、一様に脳血流が低下しました.5%の二酸化炭素負荷で、側頭・後頭葉では脳血流は増加しましたが、前頭葉ではほぼ変化がないか減少しました.


Takeuchi S, Tanaka R, Ishii R, et al: Cerebral hemodynamics in patients with moyamoya disease. A study of regional cerebral blood flow by the Xe-133 inhalation method. Surg Neurol 23:468-474, 1985