脳血管撮影の必要性
もやもや病の診断・治療(手術)に脳血管撮影は必要でしょうか?
ここで、脳血管撮影の必要性を論じるとき、カテーテルを大腿動脈や上腕動脈などから挿入して行う脳血管撮影(カテーテル脳血管撮影)とMRIを使った脳血管撮影(MRA)を分けて考えるべきと考えます.
後者のMRAは、何回繰り返して行っても患者さんには、危険性の全くない安全な検査です.このため、特に子供の場合、難病の申請に、(もやもや血管が描出されているのであれば)MRAを用いて診断しても良いとされています.大人では、もやもや血管がMRAでは描出されにくいこともあり、カテーテル脳血管撮影が、標準とされています.
数年前と異なり、MRAの性能が良くなり、MRAで、かなりの診断が可能になってきました.しかし、カテーテル血管撮影が、MRAよりも優れた点もあります.その点を挙げてみますと、血行動態が分かる、脳表の動脈が描出される、硬膜の動脈やその側副血行路が描出される、合併する可能性がある脳動脈瘤、仮性脳動脈瘤が描出される、腎動脈も同時に描出可能である、手術で使う浅側頭動脈の走行を描出できる、病期が正確に把握できる(内頚動脈の閉塞・狭窄の状態・もやもや血管が正確に把握できる)、自然に発達した側副血行路が描出される、などがあります.これらは、MRAだけでは、正確に描出は困難です.
カテーテル血管撮影の最大の欠点は、侵襲的な検査であり、合併症の可能性があることです.頻度は、低いですがたくさんの種類の合併症があります.中でも、脳梗塞に代表される虚血性合併症のリスクが問題になります.
一般的には、(および私の病院では)、血管吻合前や初めてもやもや病が診断されるときには、カテーテル脳血管撮影が行われることが多いように思います.その後の経過観察には、MRA(MRIと共に)が主に使われます.
血管吻合術に、カテーテル血管撮影が必要なのでしょうか?これに対して答えはありません.多くの脳神経外科医は必要と考えていると思います.実際に手術を行うときに、受け側の脳表の動脈の位置・走行を知りたい場合には、カテーテル脳血管撮影を行うでしょうし、あまり、手術に関係ないと考えている脳神経外科医や間接吻合を前提にしている場合は、カテーテル血管撮影を必要としないかもしれません.また、特に小さな子供の場合、カテーテル血管撮影を行うメリットと危険性を天秤にかける場合もあると思います.