もやもや病の狭窄血管に対するバルーン治療
動脈硬化により血管の壁にアテロームと呼ばれる脂質やコレステロールなどが蓄積し、血管の内腔が狭くなり(狭窄と言います)、種々の症状を出す場合があります.心臓の冠状動脈が細くなったり詰まったりすると狭心症や心筋梗塞になります.細くなった血管に対して、内腔を拡張する血管の中からの治療を「血管形成術:Angioplasty」と言います.
血管形成術には,バルーン(風船)を拡張させ内腔を広げたり,ステントというステンレスなどの金属の網の目状の筒で狭くなった部位を拡張させる方法があります.冠状動脈では,血管内腔から硬い動脈硬化病変を削り取る方法もあります.
脳の動脈でも,近年,心臓の動脈と同様に,動脈硬化病変に対して,バルーンで拡張したり,ステントを用いて拡張する脳血管内治療(手術)が,行われるようになってきました.
もやもや病でも,脳の血管の内腔が狭くなるので,そのような治療はないのでしょうか? 答えは,NOです.(少なくとも現時点では).
上記の冠状動脈の狭窄は,基本的に動脈硬化のため,血管の内腔が狭くなっていますが,もやもや病では,内膜の肥厚で狭くなり,動脈硬化の所見は原則的にありません.動脈硬化の場合,血管の径そのものは,基本的に変化しません.たとえば、本来血管内腔4mmの血管が,内腔が1mmに(狭窄率75%)なった場合,血管の外径そのものは小さくならないため,バルーンなどで内腔を4mmまで拡張することは可能です.4mm以上にすると,過拡張で,血管は破裂する可能性もあります.もやもや病の場合,血管内腔が1mmになっている場合,血管の径そのものも小さくなっているため,機械的に拡張すると過拡張で血管破裂の可能性があります.脳血管が破裂すると,重症のクモ膜下出血が起こり.まず助かることはないと思います.
また,もやもや病の原因は不明で,血管の内膜が何故肥厚するか・何故内腔が狭くなるかよく分かっていません.メカニズムがよく分かっていない病変に内腔だけ見て,血管を拡張するわけにはいきません.また,病気の初期でこのような血管形成術で拡張可能であっても,かえって狭窄を進行させるかもしれませんし,すぐにもとの狭窄に戻るかもしれません.また,それでなくても順行性の血流が不十分な病態に対しての血管形成のリスクは,予想がつかないと考えられます.
実際に、もやもや病患者さん(子供)に、ある病院でバルーンによる血管形成術が行なわれ、結果的に脳梗塞、半身麻痺になった事例があります.全例そうなるかどうかは、不明ですが、もしこのような治療が行なわれる場合には、治療予定の病院の「倫理委員会」における承認が必要であると考えます.なぜかと言いますと、その治療が、現時点で、かなり実験的治療の要素を持っているためと、有効性・安全性を示す根拠がないからです.
2002.1.22記、2004.3.23追記