血管吻合術の工夫
もやもや病の患者さんに対して行う血管吻合術には、大きく分けて直接吻合術と間接吻合術があります.脳神経外科医は、患者さんの症状、血管の閉塞状況、頭皮の動脈の状況、硬膜動脈の状況を考え、どの術式を行うか、いくつかの方法を組み合わせるか考えるわけです.
直接吻合術であれ間接吻合術であれ、最もよく行われる部位は、浅側頭動脈の走行している下の脳(多くは前頭部)が吻合部位となります.この部位は、中大脳動脈が栄養する脳で、直接吻合では、浅側頭動脈と中大脳動脈の枝を結ぶことになります.
中大脳動脈の領域は、直接であれ、間接であれ上手く機能すると十分な血流が供給されることになります.しかし、頭部の正中部を栄養する前大脳動脈や後頭葉を栄養する後大脳動脈への血流は、浅側頭動ー中大脳動脈の吻合術では不足することがあります.この吻合が、上手くいくと、他の部位への血流の再分布が起こり、その部位(頭部の正中部や後頭葉)の血流も保たれるという理論もありますが実際には、前大脳動脈と後大脳動脈の領域の血流が不足することがあり、最初の手術からこの領域への血流を確保するために脳外科医は、いろいろな手術法を工夫しています.
たとえば、浅側頭動脈ー中大脳動脈の吻合術を二ヶ所(浅側頭動脈の枝を二本使う)で行うことは、よく行われます(ダブルでつなぐ).また、前大脳動脈と後大脳動脈の領域に硬膜や腱膜を広げて脳の上に乗せて血管が新生することを期待したりします.たくさんの小さな穴を頭蓋骨に開けて、そこに吻合が出来ることを期待する場合もあります.すでに出来上がっている吻合(自然に形成された吻合)を出来るだけ傷つけないように、開頭するようにも考えます.
手術の術式を複雑にすればするほど、手術時間がかかり、患者さんへの侵襲が大きくなり、出血量も増え、輸血が必要になることもあります.
以上のようなことを考えながら、どんな吻合が一番個々の患者さんにとっていいのか決めていくわけです.
2003 8 31記
これだけある間接吻合術