もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)診断の手引き(1994年)
1.
1)
イ)発症年齢は各層にわたるが、若年者に多く、また女性に多い傾向にある.弧発例が多いが、ときに家族性に発生することもある.
ロ)症状および経過については、無症状(偶然発見)のものから、一過性のもの、および固定神経症状を呈するものなど軽重・多岐にわたっている.
ハ)小児例では脳虚血症状を、成人例では頭蓋内出血症状を主体とするものが多い.
2)
小児例では片麻痺、単麻痺、感覚異常、不随意運動、頭痛、痙攣などが反復発作的に出現し、ときに病側が左右交代して現れることがる. さらに知能低下や固定神経症状を呈するものもある.成人例のように出血発作をきたすことはまれである.
3)
成人例では小児例同様の症状を呈するものもあるが、多くは脳室内、クモ膜下腔、あるいは脳内出血で突然発症する.これらは多くは軽快し、 あるいは固定神経症状を残すが、なかには重症となり、死亡するものもある.
2.
診断上、脳血管撮影は必須であり、少なくとも次の所見がある
1)頭蓋内内頚動脈終末部、前および中大脳動脈近位部に狭窄または閉塞がみられる.
2)その付近に異常血管網が動脈相においてみられる.
3)これらの所見が両側性にある.
ただし、磁気共鳴画像 (MRI ) と磁気共鳴血管撮影 (MRA) により「 MRI・MRAによ る画像診断のための指針」の1)−3)のすべてを満たしうる場合は、通常の血管撮影は省いてよい.
3.本症は原因不明の疾患であり、下記の特別な基礎疾患に伴う類似の脳血管病変は除外する.
動脈硬化、自己免疫疾患、髄膜炎、脳腫瘍、ダウン症候群、レックリングハウゼン病、頭部外傷、頭部放射線照射など.
4.診断の参考となる病理学的所見
1)内頚動脈終末部を中心とする動脈の内膜肥厚と、それによる内腔狭窄ないし閉塞が、通常両側性に認められる.ときに肥厚内膜内に脂質沈着を伴うこ ともある.
2)前・中大脳動脈、後大脳動脈などウィリス動脈輪を構成する諸動脈に、しばしば内膜の繊維性肥厚、内弾性板の屈曲、中膜の菲薄化を伴う種々の程度 の狭窄ないし閉塞が認められる.
3)ウィリス動脈輪を中心として多数の小血管(穿通枝および吻合枝)がみられる.
4)しばしば軟膜内に小血管の網状集合がみられる.
診断の基準
1.に述べられている事項を参考にして、下記のごとく分類する.なお脳血管撮影を行わず剖検を行ったものについては、4.を参考にして別途に検討する.
[1.確実例]
2.のすべての条件および3.を満たすもの.
ただし、小児例では一側に2.の1)、2)を満たし、他側の内頚動脈終末部付近にも狭窄の所見が明らかにあるものも含む.
[2.疑い例]
2.および3.のうち、2.の3)の条件を満たさないもの.