間接吻合 vs 直接吻合




日本小児脳神経外科学会機関紙の「小児の脳神経」という雑誌にもやもや病の間接吻合術の創始者で、開発してきた、松島善治氏(東京医科歯科大学非常勤講師)の自著紹介とそれに対する福井仁士氏(九州大学名誉教授)のコメント・批判が載っており、興味深いので紹介します.

小児の脳神経 28:363-366, 2003


松島善治 著:Encephalo-Duro-Arterio-Synangiosis (EDAS) - An operation to treat moyamoya disease -  にゅーろん社、2001、東京


自著紹介

著者は、24年前にEDASを開発し(原著へ)、術式を変えることなく使い続け、多くの検討を行ってきた.その基本の術式は、小児のもやもや病に対して両側同時に浅側頭動脈の頭頂枝を用いて9cmぐらいの長さのEDASを行い、経過観察を行い、1年以上虚血発作が続くようであれば追加手術を行なうということで大きな間違いはない.

EDASは、手術侵襲が小さく、誰にでもできるやさしい手術であり、手術時間も短く、殆どの症例で安心して行なうことが出来る.

間接吻合は血流増加まで時間がかかるという考えは間違いである.1週間で症状の改善する症例もある.これは創傷治癒過程で、瘢痕組織内に血管網が形成され硬膜と脳表の間に連絡が出来るためである.つまり、間接吻合も直接吻合も、効果発現の時期に大きな差はない.直接吻合は3.5年で閉塞するといわれ、この意味でも、間接吻合も直接吻合も長期的には、差はない.

小児もやもや病は、20歳を過ぎると安定期に入り虚血発作はなくなり、自然治癒と呼ばれる状態になる.脳表の動脈は、3歳以下では極めて細いため、直接吻合術は、極めて困難である.脳梗塞で発症した症例でも間接吻合であれば、直接吻合よりも早期に手術が可能である.

手術は、両側同時に行なうべきである.一方にのみ行なうと、反対側が急速に進行することがある.著者は、この現象を、recovered vascular reserve steal phenomenonと呼んだ.


福井仁士氏(九州大学名誉教授)のコメント・批判

EDASは日本発信の世界に広まった手術法である.著者の貢献は非常に大きい.しかし、一般的には、直接吻合のほうが、間接吻合よりも血行再建効果は高いと考えられている.したがって、年長児以上は、直接吻合に間接吻合を併用した複合バイパスが行なわれることが多い.直接吻合は3.5年で閉塞するという事実はない.

直接吻合でも、両側同時に手術を行なう施設もある.しかし、片側で脳血流の予備能が保たれている場合など、必ずしも、同時手術が得策ではない場合もある.「20歳を過ぎると安定期に入り、自然治癒と呼ばれる状態になる」としているが、そのような症例でも、脳出血を起こす症例があり、この点はさらに検討が必要である.