もやもや病と原因遺伝子


疾患の原因遺伝子の解明


1980年代の半ばまでは、ヘモグロビン血症の原因遺伝子の解析で行なったように、欠陥のある蛋白や酵素の性状を解析することで、その原因遺伝子の解析が行なわれてきました.これは、機能クローニングと呼ばれています.しかし、ヘモグロビン血症のように蛋白の欠陥を直接解析できる限られた疾患にしか使えませんでした.


こてに対して、ポジショナルクローニングという研究法が開発されました.これは、原因遺伝子の解明を、まず遺伝子地図の上で行なう方法です.その後で遺伝子そのものの研究が行なわれます.

人間には、約3-6万の遺伝子があると考えられています.遺伝情報は、ゲノム 30億の塩基対にあり、ポジショナルクローニング
はそのどこあたりに遺伝子が潜んでいるか解析します.つまり、23対ある染色体のどの染色体のどのあたりに遺伝子があるかと統計処理で解析します.


もやもや病の原因遺伝子に関して上記のような解析が行なわれ、染色体の3、6、17番目に関連遺伝子があることが示唆されています.(厳密に言うと、家族性のもやもや病の患者さんの研究ですから、家族性のもやもや病の患者さんだけにあてはまる話です).これは、原因遺伝子が解明されたとは、全く異なり、その入り口にきた段階です.つまり、今ある情報で、もやもや病が発症前に診断されたり、その情報が治療に生かされるとは、次元の異なる話で、まだまだ先ということです.


関連論文

白血球抗原の遺伝子がある第6染色体や神経線維腫1型の遺伝子がある第17染色体ともやもや病の関係を注目し遺伝子座を探した研究やゲノム全体を対象にして第3染色体との関連性を割り出した研究(家族性もやもや病3家系が対象)がある.後者と同様な方法で別家系で行なった研究では、第8,12染色体に遺伝子座を認めたとしている.


Ikeda H, Sakaki T, Yoshimoto T, Fukui M, Arinami T: Mapping of a familial moyamoya disease to chromosome 3p24.2-p26. Am J Hum Genet 64:533-537, 1999

Yamauchi T, Tada M, Houkin K, Tanaka T, Nakamura Y, Kuroda S, Abe H, Inoue T, Ikezaki K, Matsushima T, Fukui M: Linkage of familial moyamoya disease (spontaneous occlusion of the circle of Willis) to chromosome 17q25. Stroke 31:930-935, 2000

Inoue TK, Ikezaki K, Sasazuki T, Matsushima T, Fukui M.: Linkage analysis of moyamoya disease on chromosome 6. J Child Neurol 15:179-82, 2000

有波忠夫:ウイリス動脈輪閉塞症の病因遺伝子に関する研究.ウイリス動脈輪閉塞症の病因・病態に関する研究班、平成14年度研究報告書、p49-50, 2002


第3染色体短腕の連鎖が追認できなかった報告

山本俊至、黒澤健司、大野耕策、押村光雄、Mulley JC:モヤモヤ病の原因遺伝子に関する検討.日本人類遺伝学会第48回大会、長崎、2003,10,21-24