妊娠と出産に関する医療過誤
私が、もやもや病の専門家として意見書の作成を求められた症例を紹介します.現在、係争中で、当事者である私は、詳細を記載することは出来ませんが、この情報は、もやもや病の患者さん及び治療に当たる医師にも有用と考え、一部の情報を不明瞭にした状態で紹介します.(この辺の事情を理解してください).
ヨーロッパのある国のもやもや病の患者さん(二十歳代の女性)が、妊娠し自然分娩に進みましたが、分娩の第一期(子宮口が開ききるまで)に脳内出血を起こしました.緊急で帝王切開が行われ、子供は無事出産しましたが、患者さんは不幸にも死亡しました.このお子さんが原告の裁判で、被告は、医師(産科医、そのスタッフ、内科医)、病院、医療システムを構築する医療組織です.
この患者さんは、小さいころの虚血発症で、もやもや病の診断は脳血管撮影もされており確診例です.その後、妊娠まで何年ももやもや病の症状はありませんでした.妊娠中の血圧はほぼ正常でした.
争点は、以下の項目です.もやもや病の患者さんの出産に対して適切な文献検索を怠ったこと、より治療に慣れていると考えられる専門家の意見を求めなかったこと、専門の病院へ転送しなかったこと、もやもや病の既往歴を適切に評価しなかったこと、現在のもやもや病の状態(側副血行路など)を適切に評価しなかったこと、帝王切開を勧めず、自然分娩の誘導を許容したこと、この患者さんに適切な医療システム・適切なコンサルテーションのシステムを提供出来なかったこと.
以上により、もやもや病のこの患者さんに適切な医療行為が出来なかったこと、それによる原告の物的・精神的な損失が争点です.
追加1:始めは、「帝王切開を勧めず、自然分娩の誘導を許容したこと」が争点でしたが、その後、追加として「もし、自然分娩を勧めるのであれば、硬膜外麻酔と同時に行い、かつ持続動脈圧モニターをすべきである」という主張が加わりました.(2001年末時点)
追記2(2002.9.23):私は、この10月にオンラインで、国外の裁判での証言をすることになっていたのですが、原告と被告間で和解が成立したため、その必要はなくなりました.その内容は不明です.和解時点で、もやもや病の患者さんがなくなられて約7年が経っています.私の推測ですが、被告側が治療経過でまずかった点を認めたことと、原告側も全面勝訴は無理だと考えたためと思います.
もやもや病と妊娠・出産 | 出産・麻酔に関しては、別項で詳説していますので参考にしてください.