妊娠・出産と「もやもや病」



分娩方法


特に関心が持たれるのは、経膣分娩と帝王切開による分娩とどちらが安全か、またそのリスクを予測できるかという点にあります.結論から先に言うと、何もよく分かっていないということです.


分娩時の過換気 (hyperventilation) や痛みによる高血圧 (hypertension) は、もやもや病の患者さんの出産時に問題を起こしそうですが、過去の報告から、以前よりもやもや病とわかっている場合にはあまり問題が起こっ たことはありません.経膣分娩での出産も多く報告があるのですが、医師側に経膣分娩の方が帝王切開による分娩よりも危険であるとの思い込みがあるのと、また何か事 故が起こったときに、帝王切開による分娩を選択しておいたほうが、万が一、合併症がおこり、訴訟になったときでも説明しやすいとの考え方があるようです
 (出産に関する医療過誤訴訟へ

帝王切開による分娩の明らかな利点は、予定手術にできるため、マンパワーが多い日中に分娩ができることがあげられます.また、 脳神経外科医だけでなく、麻酔科医、新生児科医がそろった総合病院で出産する方がいいでしょう.

経膣分娩のリスクをみるために妊娠後期に過換気の負荷をして脳血流を測定した報告がありましたが、危険性はあっても、あまり意味のない検査のように思われます



麻酔方法

出産時の麻酔の方法についても、意見が分かれています.全身麻酔(吸入麻酔と静脈麻酔)、脊髄麻酔、硬膜外麻酔、後2者の併用などの報告があります.各方法に、 利点・欠点があるようです.全身麻酔では、全身管理が容易ですが、気管チューブ挿管の高血圧、嘔吐、出生児の遷延性の麻酔薬の効果などのマイナス面もあります.脊髄麻酔、 硬膜外麻酔には、血圧の低下や患者さんが不安のため過換気や逆に高血圧になる可能性が指摘されています.硬膜外麻酔には、産後の疼痛コントロールが続けてできる利点があります.


以上のように、もっとも安全な分娩法、麻酔法は、ある一つの方法ではなく、各施設の産科医、麻酔科医、新生児科医の慣れた方法が、もっとも良いのではないかと 考えています.方法論だけでなく、各施設での体制も考慮が必要でしょう.



参考文献

1. Komiyama M, Yasui T, Kitano S, Sakamoto H, Fujitani K, Matsuo S: Moyamoya disease and pregnancy: case report and review of the literature. Neurosurgery 43: 360-369, 1998 [abstract]

2. 小宮山雅樹、松尾重樹、安井敏裕、北野昌平、坂本博昭: もやもや病と妊娠. 臨床婦人科産科 52: 1543-1548, 1998 [和文抄録]

3. Komiyama M: Moyamoya disease and pregnancy. (letter). J Nucl Med 40: 214-215, 1999

4. 小宮山雅樹: 脳神経外科医からの意見-妊娠に合併する脳血管障害-. OB/GYN Current Concept and Practice 7: 24-27, 2000 [和文抄録]