聖教新聞の健康欄




聖教新聞の健康欄で「もやもや病」についての特集が組まれインタビューを受けました.以下に、その記事(2004年9月18日号)を掲載します.






ラーメンを食べようと麺にふーっふーっと息を吹きかけたとき、急に力が抜けたり、意識が遠のいたりすることはありませんか?Qもしそんな経験があるとしたら、それは「もやもや病」かもしれません。珍しい名前の病気ですが、放っておくと脳虚血(脳貧血)や、なかには脳出血といった重大な事態を引き起こしかねません。もやもや病について、大阪市立総合医療センター・脳神経外科の小宮山雅樹医師に聞きました。

もやもや病とは、特異に発達した脳血管の画像が、まるで空中のタバコの煙のように、もやもやした形に見えることから、そう名付けられました。別名を「ウィリス動脈輪閉塞症」といいます。「脳の底部では、内頸動脈と椎骨動脈が一つになり、脳動脈輪というリング(動脈の輪)を形成しています。内科医でもあり解剖学者でもあった17世紀英国の医師ウィリスがそう名付けたことから、『ウィリスの動脈輪』といわれるようになったのです」と小宮山医師は説明します。

大脳動脈輪に注ぎ込む左右の内頸動脈が詰まったり狭くなったりして、脳へ血液が供給しづらくなる病気が、もやもや病です。もやもや病になると、脳深部の穿通枝(せんつうし)と呼ばれる細い脳動脈が、脳血流を補う迂回路として発達し、血管撮影でも分かるほどの太さに発達します。この血管への負担が大きくなりすぎると、脳出血を引き起こし、最悪の場合、命を落とすこともあります。

もやもや病は、東アジア、特に日本人に多い病気で、また遺伝的な発症傾向も見られる、と小宮山医師はいいます。 「日本、韓国、中国に多く、なかでも日本は、他の国とは患者数が一桁違うほどに多いのです。アメリカで最初に発見された例も、ハワイの日系人でした。また、兄弟や親子での発症も多く、その頻度は約1割程度といわれています。娘さんが、もやもや病と診断され、そういえば自分も小さいころ、同じような症状があったからと検査したら、お母さんも、もやもや病だった、と判明した例もあります」。年間の初発患者数は数百人程度といわれています。なぜ頸動脈が詰まったり狭くなったりするのか、その原因については、まったく分かっていません。

もやもや病は、通常、脳虚血と脳出血のどちらかの症状で発症します。脳虚血は、脳への血液の供給が少ないために起こる貧血症状のことです。多くは5ー30分で発作症状が消える一過性脳虚血発作では、ラーメンや、うどんなど、熱い食べ物を冷ますために「ふーっ」と息を吹きかけたり、笛やハーモニカなどを吹いたりしたときに、血液中の二酸化炭素濃度が低下し、脳の動脈が縮んで血流が低下し、脳虚血になります。そのため意識が遠くなる、片半身まひが出る、言葉が出にくくなるなどの症状が出ます。脳出血は、ほとんどが脳内出血や脳室内出血という状態で起こり、意識障害や片半身まひ、知覚異常、けいれんといった症状が出ます。脳動脈瘤(脳血管のこぶ)が合併した場合は、これが破裂するとクモ膜下出血となって非常に危険です。「発症年齢には二つのピークがあり、10歳以下の子どもの場合は脳虚血で、30〜40歳代の大人の場合は、脳出血で、それぞれ発症する場合が多いのですが、もちろんそうではないケースもあります」。

もやもや病の画像診断には、MRI(核磁気共鳴画像法)による撮影とカテーテルを足の付け根から挿入して首の血管まで通し、造影剤を注入して行う脳血管撮影があります。「もっともはっきりと診断できる方法は、カテーテルによる脳血管撮影ですが、この方法は、大人の場合だと局所麻酔ですみますが、小学生以下の場合は、全身麻酔で行うので、わずかですが危険性が伴うのも確かです。合併症も1%くらい起こるといわれています。MRIの場合、危険性は全くありません」。

外科的な治療法としては、血管吻合術が有効とされています。閉塞した血管の部分を飛ばして頭皮の動脈と脳表の動脈を直接つなぐ「直接吻合」と、脳硬膜や側頭部の筋肉などを脳の表面に置き、そのまま自然と小さな血管が形成されるのを待つ「間接吻合」があります。また内科的な治療法としては、頭痛に対して鎮痛薬の投与や脳虚血に対して抗血小板薬の投与などがあります。

「もやもや病は、行動異常やめまい、頭痛、吐き気など、必ずしもこの病気特有ではない症状で表れることも少なからずあり、診断が遅れてしまう場合があります。MRIなら体には特に負担はありませんから、もやもや病の症状に思い当たる節がある方は、脳神経外科・神経内科の診断を受ければ、はっきりするでしょう」。


(2004.9.21記)