もやもや病の”もやもや”について
もやもや病の疾患概念が形成されていった1960年の初め頃は,いろいろな病名で呼ばれていました.1969年の鈴木らの英語論文(Suzuki J, Takaku A: Cerebrovascular "moyamoya"disease showing abnormal net-like vessels in base of brain. Arch Neurol (Chicago) 20:288-299, 1969)で,”もやもや”という日本語が一般的な病名になり,正式には,工藤らの 「ウィリス動脈輪閉塞症」が使われ,今に至っています.
日本語が病名につき世界的に使われている病名は,脈なし病,高安病,平山病,川崎病などがあります.後三者は,日本人の医師の名前です.もやもや病を含め, 日本語や日本人の名前が付いているということで,なんとなく親近感があり,日本人が発見した病気と言うことでなんとなく誇りのようなものも感じていました.
しかし,もやもや病の患者さんと病名について話をしていると,必ずしもこれは正しくないことと最近は思っています.確かにタバコの煙のごとく”もやもや” した血管像を表すのは良いのですが,患者さんにしてみると,(1)病気が”もやもや” して実態がつかめない,(2)患者さん自身がもやもやした実態の分からない存在と周囲に誤解される,(3) ”もやもや”と原因不明のため周囲には,感染・遺伝などの点で誤解を招くことがある,(4)これら の理由で,病名を周囲には隠す必要がある,などがあるようです.
もちろん正しい病気に対する知識が一般的になれば良いわけですが,脳外科医が年間一人の患者さんを見るかどうか分からない頻度の病気に対して,一般的な医学知識 として理解されるのはすぐには困難のように思います.
このため,もやもや病という病名より,工藤らの「ウィリス動脈輪閉塞症」を主体にしたり”鈴木(-工藤)”病などの病名のほうが良いのではな いかと個人的には思っています.