妊娠時のレントゲン検査(神経放射線学的診断)のリスク
妊娠時のレントゲン検査(神経放射線診断)のリスクについて解説します.頭部・胸部・腹部のX線撮影や、CT、MRなどの検査、脳血管撮影が含まれます.
2方向の胸部X線単純撮影は0.02-0.07 mrad(radは放射線の被曝線量の単位)、一回の腹部X線単純撮影は 100 mrad、頭部CT検査は、1 rad以下の胎児被爆があります.腹部をシールドすれば頭部CT検査は約2 mradの胎児被爆ですみ、脳血管撮影も腹部をシールドすれば、約2 mrad程度の被爆ですみます.腹部大動脈の中をカテーテルが通過する時の透視での被爆が加わるだけで、慣れた医師が施行すればさほどの被爆はないとされます.
X線の5 rad以下の胎児被爆は、奇形、成長障害、流産のリスクを上げないとされます.X線による多くの診断方法は5 radを越えることはなく、通常の妊娠における先天性奇形(頻度:3%=30/1000出産)、子宮内胎児発達遅延(4%=40/1000出産)、 高度精神発達遅延(5%=5/1000出産)や自然流産(15%=150/1000妊娠)のリスクを上げません.妊産婦の患者さんに脳血管撮影が必要な場合は、 子宮に対してシールドを適切に行えば、胎児の被爆は最小限にすることができます.また、ヨード性造影剤は胎児への影響は、ほとんどないとされますが、 非イオン性で低浸透圧のヨード性造影剤を使用します.MRIによる胎児に対する副作用報告はありませんが、妊娠第1期には避けた方がよいとされています.
妊婦に対する脳血管撮影:一般に,脳血管撮影は,足の付け根(鼠径部)から,大腿動脈経由で行われます.もやもや病の場合,脳血管をすべて撮影する必要があり(その方が,情報量が多いため),特に大腿動脈経由で行われることが多いと思います.しかし,右の肘(上腕動脈経由)や手首(橈骨動脈)経由でも脳血管撮影が行われるようになり,妊婦の場合,腹部に鉛のシールドをしてもこの方法であれば,脳血管撮影が可能ですし,放射線の被曝をさらに減らすことが可能と思います.
脳血管撮影の実際の手技
妊娠と脳血管障害へ(小宮山雅樹: 脳神経外科医からの意見-妊娠に合併する脳血管障害-. OB/GYN Current Concept and Practice 7: 24-27, 2000)