人生処方詩集 エーリヒ・ケストナー著;小松太郎訳
ちくま文庫刊 460円+税 ISBN4-480-02271-6
著者はドイツの作家です。日本では「飛ぶ教室」「ふたりのロッテ」といった児童文学で有名ですが、詩人でもあり、小説家でもあります。風刺を得意とし、戦時中はナチスから発禁処分・焚書処分・国外追放などとさんざんな目にあってきた人ですが、自分の本が焚書処分されるのを広場まで見に行った、という逸話を持つような反骨精神にあふれる人だったようです。
この本は彼の詩集の中で唯一邦訳されているものです。「処方」と書いてあるとおり、一編一編の詩が「お薬」として登場します。普通の目次のほかに「処方箋目次」が存在するあたり、タイトルに徹していて特徴的です。その処方箋も「人生に疲れたら」「貧乏が悲しいとき」「失恋したら」などといったものにまざって「もしもあなたが若い娘だったら」「冬になったら」といった風変わりなものまであります。若い娘以外は読んじゃアカンのか、と思いきや、その項目に並んでいる詩には他の「効能」もあったので安心しました。
詩そのものは、いわゆる内面の独白といった調子ではありません。時に読者に語りかけるように、時には「彼は」「彼女は」と三人称が使われて他人事のように書かれています。対象を冷静に突き放し、それでもやわらかく見守っているかのような視線が印象的です。訳の日本語も絶品。
もちろん普通に最初から読んでも構いませんが、せっかくいろいろと処方箋があるので、活用された方が楽しいかと思います。