間取りの手帖 佐藤和歌子著 リトル・モア刊
\950+税 ISBN4-89815-090-X
間取り図である。あの、よく賃貸住宅の広告やら雑誌やらにざらざら掲載されている、間取り図ばかりが1ページにつき一件、もしくは二件ずつひたすら載っている。わりと無味乾燥な本のくせに、その図をよく見れば爆笑必至のヘンな本だ。
例えばワンルームなのになぜか玄関が二つある物件。例えば収納スペースに壁がなくて、なぜか(その気になれば)押入からどこか外に出られるらしい物件。例えばなぜかロフト(屋根裏)に浴室があるらしい物件。例えば玄関からリビングルームまでの間に、なぜか無駄に長い廊下が斜めに延びている物件。他にもいろいろあるが、不思議な間取り図を言葉で説明するのは非常に困難だ。さよう、この本に掲載されている間取り図は、全部が全部「ヘンな間取り」「ヘンな物件」のオンパレードなのである。
ここで確認しておきたいのは、著者の肩書である。奥付にある紹介を見ると「間取り収集家、Madorist」で「『間取り通信』発行人」とある。従って著者がこの本でやっているのは間取り図の転載と、それぞれの物件に添えるツッコミ、そしてわずかなコラムの執筆のみという、一見手抜きのような本である。しかしそうそうヘンな物件が簡単に見つかるわけもなかろうから、実はけっこうな労力がかかっているだろうことは想像に難くない。私もその手の雑誌は暇つぶしによく眺めるが、こんなヘンな物件を見かけたことは一度もない。
しかしなんと恐ろしいことであるのか。これら99のヘンな間取り図が著者の創作でないのだとしたら、これらはどこかに実在する物件だということだ。誰かがこんなアパートやらマンションやらを実際に設計して建て、どこかの不動産屋がその物件を真面目に紹介し、そして誰かがこんなヘンな部屋に住んでいる。想像するとなんだか笑える。一部屋の間取り図から、建物全体の姿を想像するのもけっこう楽しい。しかし周囲に人がいるところで読んではいけない。急に爆笑して顰蹙を買うかもしれないからだ。
ちなみに私が最もウケた物件は、洋室6帖一間のくせに50帖ぶんのベランダがある物件と、単なる2DKのくせに100帖ぶんのバルコニーがある物件である。もっとちなみに、100帖のバルコニーはスペースに収まりきらなくて「省略記号」がついている。いや参った。