魔法飛行 加納朋子著 創元推理文庫刊 560円+税
ISDN 4-488-42602-6
謎をいっぱい含んだ、素敵な物語「ななつのこ」の続編にあたる連作短編集である。前作で「ファンレター」に謎を書き付けていた主人公が、今度は謎を含んだ「物語」を書くことに挑戦している。彼女はその「物語」を例によって<佐伯綾乃>だけに見せるつもりで書いているのだが、創作初心者である主人公の筆は、しばしば肝心な「物語」本来のストーリーを離れて、彼女自身の日常生活をこと細かく報告することに費される。全編を通じて(前作からも通して)宇宙や星、空そのものへの憧れが実にしばしば語られて、爽快な読後感を誘う。最終章のラスト数行など、作者はこの文を書きたかったがために全部の物語を作ったのではないかと思えるほど美しい、作者から読者に宛てた強いメッセージだ。
主人公は謎を見つける達人であるが、謎を「解く」ことに関してはてんで苦手なようである。というよりは謎さえ提示すれば<佐伯綾乃>が解いてくれるだろうと頼りきって、最初から謎を解こうと考えていないようなふしがある。したがって作中「物語」は読者(=<佐伯綾乃>と、ひいてはこの本を読む私たち)に謎だけを提示して唐突に終わり、厳密な意味では「完結」していない。それを「初々しい」と見るか「ぎこちない」と見るかによって、この本の評価は分かれることになるだろう。
主人公が提示した謎と読者との隙間を埋める形で、探偵役である<佐伯綾乃>さんの感想文が、そして新たな謎として正体不明の<見知らぬ読者>からの感想文が、それぞれの章の末尾に添えられている。それぞれの章で散りばめられた謎が最終章で一気に収束してひとつの物語になる構造は、見ていて気分が良くなるくらいうまい。
明らかに続編である以上、前作を踏まえた方がすんなりと物語世界に馴染むことができるだろう。もちろん、この作品だけ読んでも大丈夫なようにできている。
ウワサによると、これらは全4冊のシリーズ物にする予定があるらしい。シリーズの続きはまだ書かれてもいないようだが、今後が楽しみな一作である。
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