大嘘新聞 光デパート;やゆよ;佐野祭;義眼 共著
新潮社 \1,000+税 ISBN4-10-444601-7
インターネットから生まれた、いわゆる「ウソ」の本である。表紙は「大嘘新聞」という新聞紙を括った写真がデザインになっていて、中身は新聞切り抜きの形を取っている。全ての記事は4月1日付になっていて、4月2日付の新聞から切り抜いたというていさいになっている。けっこう芸が細かい。
知り合いから「痛みの新単位は『ハナゲ』に決定」という内容の電子メールを受け取ったことはないだろうか。「長さ1センチのハナゲを鉛直方向に1ニュートンの力で抜いたときの痛みを1ハナゲとして定義する」だの「ソファから慌てて立ち上がってテーブルの角にすねをぶつけたときの痛みは12〜13ハナゲ」だのといった新聞記事風の文言で書かれ、必ず「知人から回ってきたのが面白かったので転送します」とかいうたぐいの断り書きがついている。チェーンメールと呼ばれるもので、私自身は受け取ったことがないのだが(私にその手のものを出すと、それはそれはもうオソロシイ勢いで叱られるので、知人は怖がって送ってこない)世の中では数年前にたいそう流行したらしい。これは、本書著者(の一人)である「やゆよ」氏がかつてホームページ上に発表したウソを、誰かが勝手に改竄したうえでチェーンメールに仕立て上げたものなのだそうだ。かなり話題になったこの「ハナゲ」の元ネタ記事が冒頭に出てきて、以下全編これ新聞記事風のウソが続く。
タイトルの「大嘘新聞」とは、もともと「光デパート」氏のホームページ「大嘘百貨店」中にある名物コーナーである。したがって「光デパート」氏が編集長、「やゆよ」「義眼」両氏が特派員、「佐野祭」氏が新聞小説担当作家という設定になっている(らしい)。「佐野祭」氏の小説は、なんだか清水義範あたりが喜んで書きそうな「ことば」をめぐる不条理が次々と出てくる。「義眼」氏による瞬間芸の集大成「料理豆知識」「新年度特集・試験に出るアメリカの地図記号」などは、新聞のパロディとしてはどうかと思うが爆笑必至の面白さである。
記事とその署名をよく見ていると、それぞれ書き手によって“最初からありもしない大会などをでっちあげる”「光デパート」氏、“既存の団体や制度などをうまく使ってゆがんだ記事を書く”「やゆよ」氏に“書き出しはまともなのに途中からだんだんねじれていく”「義眼」氏と、ウソの傾向というか作風があるのに気がつく。読む人によってそれぞれ笑いのツボにはまるウソ作者がいるに違いない。「とりあえず笑いたい」という人におすすめである。
ちなみに4人とも、それぞれホームページでウソをつきまくっている。この本に書かれた記事も半分くらい載っている。興味を惹かれたウソ作者のサイトを覗いてみるのもいいかもしれない。
彼らが常連としてウソをつきまくっているサイト「嘘屋本舗2000」も、一度見たらやめられなくなる抱腹絶倒の面白さである。