何がなんでも作家になりたい! 鈴木輝一郎著
河出書房新社 \1300+税
時代小説のファンなら、ひょっとしてこの小説家の名を知っているかもしれない。あるいは雑誌「本の雑誌」を定期的に講読していらっしゃるならば、読者投稿コーナー「三角窓口」の常連として記憶しておられる方も多いだろう。岐阜県在住の中堅作家が書いた「作家のなり方・なってから」の本である。何やねん、それ?
とかく小説家のもとには「小説家になる方法」をききに来る人が後をたたないそうである。特にこの人の場合はホームページを公開しているから、そういう質問メールが月に一度は必ず来るという。そこから浮かび上がってくる「小説家志望者の三つの特徴」というのが凄い。曰く
一.小説家志望者は非常識。
二.小説家志望者は本を読まない。
三.小説家志望者は文章に無頓着。
笑わせてくれるんである。
本文は、小説家の懐具合や税金、仕事サイクルといった財布の話から、効率よくデビューするための基礎知識まで、非常に実践的かつ親切である。章タイトルに「転職先としての小説家」と書いてある通り、読者層として想定しているのは四十代から五十代くらいのサラリーマンであろうと思われる。私はこの著者についてよく知らないが、どうも文面から察する限りでは著者自身が会社勤めを辞めて、今は自営業を営みながら小説家をやっている(らしい)。それだけに、「定職のあるうちにクレジットカードを作っておけ」とか「デビューするまでは妻に養ってもらうのだから家事くらいは替わりにやれ」とか、経験者でなければ書けない助言がてんこ盛りだ。それでいて文章そのものはユーモアが漂っている。実用書としてはそうとう上等な部類に入るのではないか。小説家志望者でなくても、出版業界に興味のある人なら裏話の数々を面白がって読めると思う。
しかしなぁ、本を読まない人たちに宛ててこんな丁寧な本を作ったところで、肝心の小説家志望者は読んでくれないんじゃないのと思うのであるが、その辺はいいのだろうか。