清水義範の作文教室
清水義範著
ハヤカワJA文庫刊 540円+税

 パスティーシュの名手清水義範が子どものふりをしてヘタクソな作文を書き、それを自ら先生ぶって添削する……という本ではなく、本当に小学生を対象に作文指導を続けてきた実践報告である。
 名古屋在住の著者の弟が、学習塾を経営している。そこに集まってきた生徒達に作文を書かせて、東京に住む著者のところへファックスで送るのである。著者は受け取った作文を翌週までに添削して、一口コメントをつけてふたたびファックスで送り返す。時には名古屋まで出向いて、直接授業をすることもあるらしい。この本には1993年度、一年ぶんの作文指導記録が掲載されている。
 小学生の作文であるから、句読点はぐちゃぐちゃだし、漢字や仮名遣いは間違っているし、サンザンと言えば言える。自分の頭の中だけで分かっているから、一見何を言いたがっているのか分からないような説明不足のぶっ飛びまくり文章が続く。しかし清水義範はへこたれない。一つ一つの作文を読んで、必ず一カ所は褒める。「ここが面白い」「ここはよく工夫したね」などと褒めて「欲を言えばこうだね」などと指導していく。指導した著者自身が振り返って自慢している通り、どの子も目に見えて作文が上手になっていくのが分かる。うまいね、面白いね、と言われて舞い上がらない人間はいない。その辺の心理に大人も子どもも関係なく、子ども達は作文教室の回数を重ねるにつれてどんどこ悪ノリするようになっていく。ありきたりな作文では物足りずに、創作に手を出す子まで出てきて、それを清水義範が面白がってたきつけている。
 もちろんこの本の全部が作文指導に費やされているわけではない。ところどころに挿入された著者の独り言では「なぜつまらない作文を書くのか」という考察だとか、読書感想文に対する文句だとか、とにかく褒める方針だ、という決意表明が出たりもする。教育関連の仕事をしている人には身につまされるところもあるに違いない。1995年に単行本で出たときには「国語の先生必読!」とひとりで盛り上がっていたもので、ワタクシ的には待望の文庫化である。ちょっと文章を書きたいと思っている人には興味深い入門になるだろう。


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