本の業界 真空とびひざ蹴り  本の雑誌編集部編
本の雑誌社\2000+税 ISBN4-86011-002-1

 本と活字に関する雑誌「本の雑誌」の巻頭コラムを22年分、一挙にまとめた本である。
 今でこそ「活字を楽しむための雑誌」として有名だが、椎名誠と目黒考二が四半世紀前に、ほとんど同人誌のようなノリで始めた雑誌であることは、本人たちの書いた本(目黒著:『本の雑誌風雲録』角川文庫・椎名著:『本の雑誌血風録』朝日新聞社)に詳しい。そもそもが同人誌であるから、発行人も編集長も根っからの業界人ではない、というのが「本の雑誌」最大の特徴である。したがって巻頭コラム「真空とびひざ蹴り」も「シロート発のギョーカイをめぐる提言」という姿勢を貫いている。
 「活字=文化ではない」とか「年末ベスト10企画はもうやめろ」とか、「サン・ジョルディの日なんてやめてしまえ」「ミステリーの書評や帯でネタをばらすな」など、たぶん業界人では言えないであろう刺激的なネタもけっこう多い。巻頭コラムだから一本あたりの文字数はそんなになく、ネタの広がりには欠けるものの、どのページからでもすぐに読みはじめられるところはいい。
 活字は文化でなく娯楽である、と言い切っておきながら、本をモノとして見ることには抵抗を示す矛盾だとか、アンタの言うことは結局“発売された月に二〜三軒の書店をまわればちゃんと目的の本が手に入る”都会の人だから言えることよね、とか、つっこみを入れたいところは山ほどある。あるが、マナーの悪い書店の客に文句をつけているなど深くうなずける部分もあるし、編集者サイドのものの見方や書店員側の考え方なども紹介してあって目からウロコが落ちる部分も少なくない。図書館員としては、図書館についての言及が少ないのがやや物足りないが、本好きとしては、読者により近い視点から書かれた文章が好もしく見えるし、なによりも本に対する愛情が行間からにじみ出ているのがうれしい。
 その「本の雑誌」も、今年の2月号で発行人・編集長共に世代交代してしまって、この名物巻頭コラムも終わってしまった。連載が終わったから単行本にまとめたということは分かっているのだが、なんだかちょっとさびしい。


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