きっかけはいつも突然やってくる。ことの起こりは例によって掲示板に書き込まれた「かんちゃん高山行き」速報だった。10月10日に、新潟の学校司書仲間と計6人で高山へいらっしゃるという。10月10日といえば高山祭、お祭りを見にいらっしゃるものと思い込んでいた。お会いしたいのはやまやまやまだが、祭のすごい人出は想像するだけでうんざりする。今回は見送ろうかなぁとあっさり思った。
ところが、その後のかんちゃんの書き込みで高山行きの目的が講演会&図書館見学であることを知らされた。学校図書館の充実と学校図書館関係者のヨコの繋がりを強める雑誌「ぱっちわーく」が企画したもので、高山市内にある岐阜県立斐太高校の図書館で、そこの学校司書小池静子さんの講演をするのだという。
「ナニ、小池さんの講演?…じゃぁ聴きに行く」
あっさり前言撤回と相成った。
斐太高校の図書館はすごい。何がすごいって何もかもがすごい。一年間の総貸出冊数は25,000冊を越え(生徒一人あたりの貸出冊数は25冊以上)、一日の来館者数がのべ500人を越える。同県人の私は、就職してから今まで4年半の間に3回ほどお邪魔しているが、私の学校司書としての(ある意味)原点のような図書館であり、また元気の素の図書館である。
小池さんご本人は「カリスマ司書」というか、ほとんど教祖か魔女かといった感じの女性で(風貌は魔女に近い)、一度言葉を交わしたらまた話したくて話したくて仕方がなくなるという不思議な牽引力がある。一度平日にお邪魔したことがあるが、生徒たちみんなが小池さんと話をしたくてしたくてうずうずしている様子だったのが印象的だった。また学校司書という職業はまだまだ身分確立がなされていない部分があって、小池さんは「学図研」や「ぱっちわーく」といった学校図書館のヨコの繋がりを作る組織作りにも奔走したひとりである。だから学校図書館関係者の間では全国規模の有名人で、そのカリスマ的魅力からファンも信者も多い。なんだか教祖みたいな人だ。
その小池さんは平成11年度末をもって定年退職される。「これで最後だから」と全国あちこちで学校図書館関係者を相手に講演をしまくっているらしいが、今回の講演は彼女の作った図書館も見られておトク感が強い。これは祭だとか人が多いとか躊躇していてはいけない。ぜひ行かねば。
だったら私も高山市内に宿を取って、夜はオフ会だぁーと密かに盛り上がる。世の中は三連休な上に高山祭である。けっこう苦労はしたものの、駅前のビジネスホテルを取った。地元飛騨在住のWASABIさんと不幸★名下さん(その後「背泳星<はいうぇいすたあ>」さんと改名)に声をかけたが不幸★名下さんはお仕事で不参加、結局この3名で講演のあと図書館で落ち合って、オフ会になだれこむことになったのだった。

当日はとてもいいお天気になった。「嵐を呼ぶ女」の私にしては珍しい快挙である。昼すこし前に高山入りして、祭の街をぶらぶらと歩く。今回のオフは(講演が主目的ではないのか)WASABIさんに幹事をお願いした。私とかんちゃんは春の「関東ミニ蟻地獄オフ」のときにお会いして顔見知りだが、WASABIさんとは初顔合わせ、さすがに今回は「のぼり」を持っていくわけに行かず、それぞれ当日の服装や特徴などをメールで交換しあっている。私は目印にベレー帽をかぶっていくことにしていたが、外はたいへんにいい天気で、帽子の中の頭がむれて少々暑い。
1時45分くらいに斐太高校入りした。ぶらぶら歩いていると、玄関先にタクシーが2台到着してわらわらと人が降りてくる。おぉたくさんいるなと眺めていたら、あっ、かんちゃんだ。正面玄関のところでは、自己申告の服装そのまんまな女性がいて、これはきっとWASABIさんに違いない。でも声をかけるのはまたあとで。

図書館は3階にあるのだが、2階から上って行く階段の踊り場に新着図書の案内が掲示され、入り口には

新着図書案内 にぎやかでしょ?

本の返却箱と深田恭子の「'99角川文庫 夏の名作150」の等身大に近いポスターがあって、近づくだけでなんだかわくわくしてくる。
小池さんの図書館は、ご本人よりもよほど雄弁だ。館内にはあふれるほどの観葉植物があって、まるでジャングルである。天井からはデコパネルの案内看板がぶら下がり、ドラえもんや恐竜の模型もぶら下がり、賑やかなことこのうえないが、カウンターの後ろの壁には「図書館の自由に関する宣言」が掲示してある。カウンターの中にはCDプレイヤーがあって、エンドレスでBGMが流れている。小池さんはエンヤがお気に入りで、ここ2〜3年はエンヤばかり流れているような気もする。
それぞれの書架には、書店のような手作りの見出し板(黄色の蛍光紙に青いポスカで分類番号と細目名が書いてあって、透明なアクリル版に挟んである)が賑やかに差し込まれ、本を探しやすいように工夫してある。本の並び方は分類順

環境コーナーと、跋扈するドラえもん

ではなく、コーナーが常時設けてある。新着図書が固めておいてあるコーナー、新聞切り抜きを分類別に集めたコーナーを手始めに、たとえば「映画」コーナーには映画に関する本や俳優の写真集(分類番号778)に混ざって、原作やノベライズ(分類番号9◇3)も置いてある。司書の都合よりも

映画コーナーの見出し版

利用者の都合を徹底して優先した配置になっているというわけだ。
だから講演の内容も、図書館と同じことを主張している。私の図書館は利用者の声を拾い集めて、みんなで作った図書館なのだ、と彼女は言う。私などは本ばかり読んで書評など書いて粋がっているが、小池さんは本のかわりに生徒の要求の一歩先を読む。読んでさりげなく用意しておくサービス精神が心にくい。学校という場にあってサービス業に徹するには相当なバランス感覚を必要とするが、小池さんはそのバランス感覚が並外れて優れているのだと思う。

講演が終わると午後5時を回っていた。そろそろ日が翳りだして、外はかなり涼しくなっている。帰っていく人や館内の写真を撮るためにウロウロしている人にまぎれて、オフ会3人組の顔合わせをした。玄関先で見かけた女性はやはりWASABIさんで、やあやあどうもどうもと、初対面とは思えない打ち解け方である(これがオフ会の醍醐味だ)。かんちゃんも私も、まだホテルにチェックインしていないため、いったん解散して6時ちょっと過ぎに駅前で再集合ということになった。


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