飯田線の事業用車
'83年頃の飯田線関連の旧性能事業用車は、伊那松島区に救援車、豊橋区に牽引車・救援車・配給車などが配置されていたが、豊橋区に配置された牽引車の一部や配給車は浜松工場内での入れ換えなどが主な仕事で、飯田線内に入ることは希であった。ここでは主に飯田線用として使用された車両を扱います。

※ 事業用車という特殊な車両のため、滅多に走行する機会がないため、写真があまりありませんので、のちのち入手出来た場合には追加していく予定です。

●救援車
救援車とは、脱線・踏切事故・車両故障など際に復旧作業などの支援をするため、各種機材・資材を搭載した車両で、第一線から退いた古い車両などを改造したものがほとんどで、その改造種車もさまざまで、また使用線区に合わせた改造がなされ、同一形式でもそれぞれ特徴を持った車両であった。

過去には、飯田線に元伊那電気鉄道の木造電車を改造したサエ9320型(9320〜9322)が、中部天竜・豊橋・伊那松島の各区に配置されていたが、のちに順次廃車され、中部天竜支区のサエ9320は'79年(昭和54年)8月に廃車されるまで国鉄線上に残った最後の木造電車として有名であった。

現在は救援車として単独の車両はなく、クモヤ145-200番などのように牽引車などに救援用設備を持たせるなどの方法に変化している。

■クモエ21009

伊那松島機関区に所属していた、元クモハ11235を改造して作られた救援車で、1エンド側の正面に大型の扉が付いて、特異な前面を持っているのが特徴。

前面と側面の大きな扉は、車内からの救援資材が搬出し易いように考えられており、特に元貫通路側に増設された運転台の前面に付けられた扉は、飯田線中部のような狭隘な山間・渓谷区間での救援活動を考慮して付けられたもので、こちら側が1エンド(写真上)となり、元々の運転台側は2エンド(写真下)となる。

車内にはチェーン・ブロック(クレーン)が付けられており、重量物の搬入・搬出も可能になっており、側面の大型扉はそのクレーンの操作を妨げないように付けられた。

両運転台式の電動車であるため、牽引車(後述)代用としても使用されていた。

飯田線の旧形国電廃止後もそのまま伊那松島区に配置されていたが、'85年(昭和60年)3月に廃車となった。

上・クモエ21009(1エンド側)伊那松島 HS

下・クモエ21009(2エンド側)伊那松島 HM

■クエ28100

上記のクモエ21009と同様に、サハ17122から改造された救援車。

この車の場合、やはり飯田線の狭隘区間を考慮し、両前面ともに観音開きの扉を設置している。また、夜間の作業用に前照灯が3灯式となっている。

この車も飯田線の旧国廃止後も存在していたが、クモエ同様に'85年(昭和60年)2月に廃車となった。

クエ28100 豊橋区 HS

●牽引車
牽引車とは、その名の通り車庫内での入れ替えや、工場入出場の控え車として使用される車で、旧形国電全盛時代は多くの両運転台車が存在したため、牽引車としての専用車両は存在しなかったが、運転台がない中間電動車や新性能車両など単独で走行できない車両が増加したため、1両でも走行できる旧性能車両の特性を生かし、一線を退いたそれらの車両の両端に運転台を設け、牽引に便利なように改造した車である。

クモヤ22100やクモヤ90000(050)代の車両は、室内改造はほとんどされず、吊革が撤去された程度で座席はそのままであった。ちなみに、牽引車という名称は正式なものではなく、国鉄では職用車という位置付けであった。

旧性能車が老朽化し、最近は単行運転可能な新性能牽引車を新製もしくは改造されるようになり、旧性能牽引車は急速に姿を消している。

■クモヤ22112・113(クモヤ22110〜118)

17m級電車旧モハ30系モハ30を中間電動車化したモハ10を牽引車として両端に運転台を増設した車両で、豊橋機関区に112と113の2両が在籍し、基本的には浜松工場内の入れ替えや、飯田線車両の浜松工場入出場などに使用されていた。

'86年(昭和61年)前後の冬季間に架線に付く霜を取るため、一番電車が走行する前に2両コンビで運転されたりしたが、'87年(昭和62年)に112番は旅客用車として復活することとなりクモハ12041番に改造(下参照・外観上はほとんど変化なし)、113番はその部品確保用として廃車されることとなった。

クモヤ22112(写真はクモハ12041に改造後) 1993.01.17 伊那松島区 TM

(事業用車番外・営業車に復元)

★クモハ12041(クモハ12040番代)

上記のクモヤ22112を、イベント列車や貸し切り用の車両として室内をに吊革を復活させるなどの室内整備をし、モハ10型をクモハ12化した40番代の続番041付与した車両。復活直後はゲタ電号として臨時一般旅客列車として週末や行楽シーズンに運転されていたが、その後室内を簡易お座敷車として畳を敷けるように再改造し(シートは残存)、カラオケ装置を積み、団体貸し切り用などとして活躍。しかし、2000年12月に発生した京福電鉄の正面衝突事故を契機に、ブレーキが一系統しかない旧形車両の運用自粛通達が国土交通省から出て、それ以降は回送を含めほとんど伊那松島区から動くことはなく、'02年(平成14年)2月28日付で廃車となった。しかし、車両自体は保存する事が決まっているため、現在も同区にて保管中。

JR東海の運行規定上、半鋼製車両のため「大原」「峰」の両超大トンネルの旅客輸送は禁止されているので、同区間は回送扱いとされていた。

'91.11.23 クモハ12041 出馬 TM

■クモヤ90052(クモヤ90050番代)

元73系(63系)モハ72を牽引車として運転台を両端に取付改造をした車両。クモヤ90の50番代は新性能車両と旧性能車両のブレーキ装置を自動的に切り替える機能が付けられた車両だったが、のち0番代(外観は変わらず)にも取付されたので、実質的な違いはなくなった。

この車は一時豊橋区常駐し、トロッコ列車の入れ替えや、クモヤ22の後任として冬期間に飯田線北部・山間部の霜取り電車として利用されたが、'95年(平成7年)1月13日付けで廃車となった。

クモヤ90052 1993.01.17 伊那松島区 TM

旧国末期の飯田線には上記の以外に、クモヤ22201(元・クモニ13024、外観はクモニ13025・26と同じでぶどう色塗色)も存在したが、'85年(昭和60年)に廃車となった。

●配給車
配給車とは、車両工場から車両基地へ鉄道車両の部品などを輸送する目的で作られたもので、現在はほとんどトラック輸送に移行されてしまったので、滅多に見ることができなくなってしまった。
車体形状は独特で、運転台部とその直後の有蓋部を残し、中央部は大型重量機器の荷扱いの便を図るため無蓋化改造をされ、凹型の特殊な構造をしていた。
豊橋機関区には、クモル23050という配給車が配置されていたが、豊橋区よりも浜松工場にいる事が多く、本来の配給車としての役割よりも、両運転台構造を活用した、牽引車代用として使用されることが多かった。

■クモル23050

'63年(昭和38年)にクモニ13027を配給車化改造をした車。

大型重量物のクレーン荷扱用に車体中央部が無蓋化されているのが外観上の特徴となっている。

また、前面窓部がHゴム支持の2枚窓化され、また大きく傾斜がつけられた他に例のない前面形状である。

'85年(昭和60年)2月に廃車となった。

クモル23050 浜松機関区 HM

●事業用車番外編・飯田線に入線した試験列車
国鉄・JR時代とも、安全運行を確保するため、軌道や架線などを定期的に計測する試験列車が年に数回入線する。国鉄時代はマヤ34という客車タイプの試験車を機関車が牽引して走行する事が多かったが、JR化後はクモヤ494を直流化改造したクモヤ193-50が使用され、現在は「ドクター東海」と呼ばれる新型計測気動車キヤ95型が使用されている。

■クモヤ193-51+クモヤ192-51
(クモヤ193-50番代)

元・交直両用試験車クモヤ495-1(494-1)型を直流専用に改造し、クモヤ193型の50番代に区分された。

以前は赤紫にクリーム帯のいわゆる交直流色であったが、直流専用に改造時に青に黄帯に変更された。

老朽化が進み、現在はJR東海が新型試験気動車キヤ95系を導入したことにより廃車になった。

クモヤ193-50番代 '90.03.16 小和田 TM

■キヤ95系軌道・電気総合試験車
(キヤ95-1+キサヤ94-1+キヤ95-101)

クモヤ193系にかわり、'96年夏に製作された「ドクター東海」の愛称で呼ばれるJR東海の軌道・電気総合試験車。以前に使用されていたクモヤ193では、軌道計測までは行えず、マヤ34形軌道試験車を使用していたが、この車両は各車ごとに計測用途をわけ、一度にすべての計測が可能なように設計され、また運用区間も電化・非電化にかかわらず走行・計測可能な気動車とした

外観は昨今の車両と同様のステンレス製で、塗装は前面がイエロー、側面はステンレス地に上部に青、窓下に青のツートーン、裾にイエローの帯を巻いている

キヤ95-1は電力設備試験車で、架線計測用のパンタグラフと観測用のドームがあり、架線監視カメラやレーザー装置が計測機器として設置されている

中間のキサヤ94は軌道設備試験車で、軌道計測用に中間台車が付けられ、車体は両端のキヤに比べ少々短い17m車体

キヤ95-101は信号・通信設備試験車で、ATS、列車無線、踏切制御子の各測定装置を搭載、便所も設置されている

JR東海の各路線の計測に使用され、飯田線には年数回運行し、各種測定を行っている

(上) キヤ95-1他 中部天竜 hirom
(下)キヤ95-101 中部天竜 hirom

 

●キヤ95-1の運転台部

締結ボルト監視カメラとレーザー装置が設置され、一般の車両の運転台周りとはかなり趣が異なる

キヤ95-1他 中部天竜 hirom

●キサヤ94-1の床下部

計測台車付近にはレール監視用のライトとカメラが設置されている

キサヤ94-1他 中部天竜 hirom


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