身延線の旧形国電
大糸線と同時期まで戦前型の旧形国電が多数活躍した路線で、'81年(昭和56年)8月末に引退するまでは、飯田線とともに旧国博物館の様を呈していました。身延線で活躍した車両の特徴はなんといってもパンタグラフ付きの車両が低屋根化されていることでした。これは身延線にあるトンネルの断面が通常よりもかなり小さく、通常の屋根ではパンタグラフ折り畳み高さが、架線までの安全距離(250mm)を取れず危険であるためで、外観上も特異なものとなっていた。

同線の旧国置き換えに導入された115系も、パンタ折り畳み高さの低いPS23型を使用しただけでは十分な離線距離が取れないため、パンタグラフ部分を20mm低くした115系2000番代をベースに、モハ114のみは2600番代とされ、赤い車体にアイボリーのラインを入れた独自の「身延色」とされたが、現在は湘南色化されてしまい、よく見なければ他の115系と同様になってしまった。なお「身延色」時代に、飯田線や御殿場線などを走ったこともある。

戦前型旧国を駆逐し115系活躍後も、戦後製旧63・72系を'74年(昭和49年)、115系並みに車体(アコモデーション)改造した、身延線名物・モハ62・クハ66も'84年(昭和59年)1月末まで平行して使用されていた。

旧国の車番については伊藤純一様のHP「最後まで残った旧形国電」内の「旧形国電掲示板」で、田中景一様より情報を頂きました
田中様のHP「旧形国電の記録」も合わせてご参照下さい。両ページともリンクのページよりご覧になれます

●クモハ51 800番代(偶数)

身延線で使用されたクモハ51は、パンタグラフ部分の屋根が低く削られた800番代で、この車両はオリジナルのクモハ51(飯田線の旧国・51系電動車編参照)を改造したもので、800〜828(偶数)の15両が存在し、セミクロスシートであるため、飯田線と同様、身延線でも最大勢力であった。他に、42系を3扉化したクモハ51をパンタの後部移設・低屋根化した51830・850・851という車も存在していた。

この810番は、助士席側乗務員扉後ろの窓が埋め込まれているのが特徴。

クモハ51810 '81.08 HS

●クモハ60 800番代

上記クモハ51800番代車とともに、3扉ロングシートのクモハ 60のパンタ部分を低屋根化改造を施した車両。やはり同線では主力車両で、60800・802・804・806・808・810・812・814・816の9両が末期まで使用された。

同区のクモハ60は主に首都圏で使用されていたものが多かったので、写真に見られるとおり貫通扉に幌枠が付いていない物が多く、また前面の塗装も貫通扉までそのまま塗り分けたタイプと、扉全部をクリームにしたものなど、地味な形式ながらバリエーションが多数に及んだ。

またクモハ60800はノーシル・ノーヘッダー、前照灯も登場時に近い屋根に半分埋め込まれたタイプで特に異彩を放っていた。

クモハ60810 '81.07.27 身延駅 TM

●クモハユニ44 800番代

横須賀線用に作られたモハユニ44型を低屋根化改造したもの。初期に低屋根化改造された車両は、パンタ部のみでなく屋根全周に渡ったため、屋根が低い事が他の車両より際だって目立つ。800〜803の4両が存在、戦前型の最後まで使用された。なお803のみは他の3両よりも身延線転入が遅かったため、クモハ51等と同様にパンタを後部に移設、部分低屋根化とされたため、外観がかなり異なる。

形態的には42系と同様の20m車体・2扉クロスシート(郵便・荷物室部を除く)であったが前面は非貫通なため、それ以前に作られた旧モハ32系に通じるものがあった。

(上)クモハユニ44801 '81.08 身延駅 HS
(下)クモハユニ44802 '81.07.27 身延駅 TM

●クハ47 050番代

旧モハ32系サハ48を制御車化して生まれた車両(飯田線の旧国42系列参照、以下クハ47形態についても同様)で、基本形態は2扉クロスシート車であるが、上記解説欄に書いたとおり、ロングシートの車両も存在し異彩を放っていた。戦前型末期の同線には47051、053、055の3両のクロスシート車、47057・059・061・063・065・067の6両のロングシート車、及び外観上はほぼ同様のオリジナルスタイルのクハ47000番代車001・003・005・006・007・008の5両、旧43系クハ58改造クハ47100番代車100・106・110・112の4両と、計19両のクハ47が活躍し、クハ47が少数派であった飯田線とは対照的であった。

クハ47055 '81.07.27 久那土駅 TM

●クハ68 (旧クハ55セミクロスシート化改造車)

飯田線のクハ68400番代と同様、京阪神地区緩行線でセミクロス車復活の際、ロングシートのクハ55を改造した車両。飯田線ではこのタイプのクハ68に便所設置がされ410番代(除く416)を名乗っていたが、身延線のクハ68には便所設置がされていなかった。

当線の同タイプのクハ68は093・095・103の3両、他に平妻で旧42系クロハ59改造車(大糸線の旧国、クハ68011参照)019、元々32系サロハ46改クロハ59からの改造車107・109の計6両のクハ68が配置されていた。

クハ68093 富士根駅 '81.08 HS

●クハ55 430番代

大糸線の旧形国電のページにあるとおり、旧41系サハ57を制御車化改造したクハ55300番代車にトイレを設置した車両。同線には55440と441の2両、また便所未設置の300番代の55301・319と計4両のクハ55が末期まで存在した。

写真はノーシル・ノーヘッダー車のクハ55441で、サハ57改造のクハ55では前面貫通路が元々の引戸を利用したものが多いが、この車は開戸に改造されている。

クハ55441 身延駅 '81.08 HS

●モハ62系クハ66型

一見すると新性能113・115系電車に見えるが歴とした旧性能電車で、仙石線等にいた103系と同じ車体を持つ73系モハ72970・クハ79600番代車と同様、'74年(昭和49年)に73系に新性能近郊型電車の車体を載せたもので、俗にアコモ車と呼ばれる。車体の裾絞り形状が若干異なるのと、パンタ(PS13)と下回りで出所が判る。幌枠や連結器も旧形の物を使用。改造費用がかかる割に下回りは旧形のままなので、検査期間短縮などのランニングコストの減少にはつながらないため、これらアコモ改造は極少数で打ち切られた。

改造種車の違いで、旧63系改73系を改造したものはモハ62000・クハ66000番代を名乗り台車はDT13・TR36、新製時からのモハ72系を改造した車両はモハ62500、クハ66300番代を名乗り、台車はDT17・TR48となり、国鉄規定の検査周期が異なる。モハ62・クハ66とも各6両が作られ、4両編成3本が、戦前型がなくなった後もしばらく使用されていた。

クハ66300 '81.08 甲府駅 HS

●西浜松に留置される62系電車              クハ66・モハ62他'84.9 西浜松 TM
用途廃止後、西浜松構内に留置される62系の編成。先頭のクハ66はTR36台車を履く66000番代、2両目のモハ62はDT17を履く62500番代。なお当然の如くモハ62のパンタ部分は、モハ114-800番代車と同様の形態で全車低屋根化されており、低屋根化による番代の区分はない。奥に留置されているのは、元・豊橋機関区のクエ28100。

〈番外〉

●佐久間レールパークに残るクハ66の先頭部

用途廃止後、先頭部のみ切断されて佐久間レールパーク内の運転シミュレータに使用されているクハ66。JR東海色に変更され、一見115系などに見えるが、車体裾絞り下部が垂直になっている事、貫通幌枠の形状等クハ66の特徴が見られる。なお、車内に付けられた車番などはまったくのでたらめで、それらの標記類にはクハ66だという事を示す物はない。この車は元クハ66002で、前記写真の奇数向きのクハ66と幌枠形状が異なる事に注意

クハ66002先頭部分 '00.08.23 佐久間レールパーク TM

…車番については伊藤純一様のHP「最後まで残った旧形国電」内の「旧形国電掲示板」で、石上博紀様より情報を頂きました

身延線は路線延長が短く駅間距離も短めであったため、飯田線では少数派であったクモハ60やクハ55等のロングシート車も多数配置され、上記のとおりクロスシート車が標準であったサハ48改造クハ47の一部に、横須賀線で使用のサハ時代に連合軍専用車としてシートをロング化し、そのまま代用2等車化、その後制御車化されたクハ47057〜47067(奇数)という2扉・超ロングシート車も存在した。

また、写真に紹介出来なかったものの中に、クモハ43を3扉・ロングシート化改造したクモハ41850や、旧32計サロ45をそのまま格下げし、ゆったりしたシートを持つサハ45など、地味ながら特徴のある車が存在した。

身延線色の115系2000(2600)番代とクモユニ143

●115系2000番代身延線色

旧形国電を淘汰するため、'81年(昭和56年)に新製された身延線用115系2000番代車で、特にモハ車は前述のとおりパンタ部分を20mm低くしたため2600番代とされ、独特の塗装とともに身延線名物であった。また、当初の4両編成ではMc-M'-Tc-T'cと、クハ2両を背中合わせに連結し、運転代を中央に挟む事により無人駅で集札した車掌のドア扱いの便を図ったが、数ヶ月後には御殿場線の115系と共通の、中間にあったクハをクモハの前に連結し、Tc-Mc-M'-T'cに変更されてしまった。

クハ115-2023他(身延線色) '81.08 HS

●クモユニ143型新性能郵便・荷物電車

身延線旧国時代に使用されたクモハユニ44に代わり、115系と併結するために作られた1M式新性能郵便・荷物電車。外観上は飯田線のクモユニ147と同じだが、完全新製車であり製造時期も2年早いのでこちらの方がオリジナル。昭和60年に身延線の郵便荷物輸送が合理化されるまで使用された。のち一部は湘南色化され上信越地区の荷物輸送、翌年には房総地区の新聞輸送などに使用されスカ色化、現在は電車区などの牽引車として生き延びている。

クモユニ143-1と115系2000番代身延線色 '81.08 富士 HS

'81年4月現在・身延線旧形国電編成表 (沼津機関区〈富士電車区〉)静ヌマ
← 富士                               甲府 → 
Tc − M'c − T − M'c
Tc − M'c
Tc − M'c
55301 - 51850 - 45008 - 51826
47006 - 51800
47059L- 51820
68093 - 60808 - 45012 - 41850
47007 - 60802
47001 - 51830

47055 - 51828
47051     
Tc − M'c − Tc − M'c
55441 - 51824
47008     
47061L- 60804 - 68019 - 51812
47110 - 51816
47106     
68095 - 60810 - 47005 - 60812
47003 - 51806
L…クハ47のロングシート車

47065L- 51802

62系(旧73系改造車)
47053 - 51818
Tc − M'gpc
Tc − M − M − T'c
47057L- 51808
68103 - 44800
66300 - 62500 - 62501 - 66001
47067L- 51814
68109 - 44801
66301 - 62000 - 62001 - 66000
47100 - 60814
68107 - 44802
66303 - 62503 - 62502 - 66002
47112 - 60806
55440 - 44803
大船工場入場車
事業用(身延線救援車・富士区留置)
Tc − M'c
クエ28002
47063L- 51810

55319 - 51822
事業用(沼津区入換用等)
     51825
クモハ12001
     60800
クモヤ22202
     60816


'81年8月31日 身延線戦前型旧形国電最終営業編成
47110 - 60808 - 47051 - 44801


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