黒船以来 〜日本の吹奏楽150年の歩み〜
私が関わったCDを推薦するのもどうかとは思うが、画期的なCDであると自負しているので紹介しておく。
私はこのCDにおいて、吹奏楽通史と年表、楽曲解説の一部(主として戦後の作品)の執筆のほか、選曲・録音・編集に関わっている。
ここではキングレコードによるアルバム概要をもって紹介に変えておこう。
〜キングレコードによるCD紹介文〜
1853年7月8日(旧暦6月9日)の黒船来航。それは日本の西洋文明導入の開始と同時に、「吹奏楽」の歴史の幕開けでもあった。
軍楽としての導入に始まり、式典での演奏、作曲家の登場、と、吹奏楽は日本の音楽界全体で常に最先端をリードしていた。その調べはやがて軍楽隊から民間へと広がり、長唄からジャズまでと多彩な顔を見せるようになる。戦時期になると時局を反映した作品や演奏団体が次々と現われ、当時の人々の記憶に刻まれる。
終戦後、吹奏楽はアマチュアを中心に広がり、様々なジャンルにまたがって数多くの作品が生まれるようになる。その一方、時代の節目節目にある大きなイベントでは、演奏を行なって式典などを盛り上げるのに不可欠の存在となった。
社会と密接に関連することが多かった吹奏楽は、その導入以来、時代を写す鏡であったと言えるだろう。
本CDでは戦前・戦後それぞれ一枚ずつに分け、日本の吹奏楽が歩んできた歴史を様々な角度から聴くことができる。また、時事的な事柄に関連する作品を順次並べて聴くことで、日本の社会史を眺望することにもなる。古い作品に関しては可能な限り当時の録音を採用、有名曲に関しても価値のある音盤を使用している。
また、解説執筆陣には秋山紀夫、片山杜秀、郡修彦、瀬川昌久、谷村政次郎、塚原康子、中橋愛生、細川周平の各氏を迎え、それぞれの専門的見地より吹奏楽論を展開している。
・解説一覧
片山 杜秀「秩序の楽か、遊興の楽か −日本人と吹奏楽を巡って−」
中橋 愛生「日本の吹奏楽・150年の諸相」
細川 周平「ラッパ、太鼓と近代化」
塚原 康子「洋楽導入期と太鼓・喇叭信号、鼓隊、軍楽隊」
谷村政次郎「軍楽隊の作曲家たち」
片山 杜秀「戦時期日本の吹奏楽」
瀬川 昌久「吹奏楽とジャズ」
秋山 紀夫「戦後の吹奏楽」
(郡修彦氏はSP復刻曲の解説を担当)
・収録曲一覧 (右のほうに各曲についてのコメントがありますので、スクロールさせて御覧下さい)
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曲名
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作曲者
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作詞者
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演奏団体
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紹介文(キングレコードによる)
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disc.1 |
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| ヘイル・コロンビア | フィリップ・フィロ | 谷村政次郎/海上自衛隊東京音楽隊 | ペリー一行が久里浜に上陸した際、その軍楽隊によって演奏された曲。 | |
| 「英国歩兵練法」より信号喇叭《早足》 | 藤田泰宏(陸上自衛隊中央音楽隊) | 軍楽として導入された吹奏楽。1865年に刊行された日本最初期の 喇叭譜を用い、信号喇叭による演奏2曲を初録音。 |
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| 「英国歩兵練法」より信号喇叭《退軍》 | 藤田泰宏(陸上自衛隊中央音楽隊) | |||
| 「喇叭符号 全」より「陣営」 | 河本尚久、大澤芳水、蓑毛勝熊 (陸上自衛隊中央音楽隊) |
明治初年より天皇礼式に用いられたフランス式の礼式曲を、 3本の信号喇叭の合奏により新規録音。 |
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| 行進曲(維新マーチ) | 山国隊 | 明治維新期に用いられた鼓笛隊。その姿を現代まで継承している 京都の山国隊の演奏を初めて現地録音し収録。 |
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| 礼式 | 山国隊 | |||
| 君が代 | 林廣守 撰 (編曲:エッケルト) |
内藤清五/海軍軍楽隊 | 日本の国歌は和洋の吹奏楽の交点−。海軍軍楽隊による演奏を復刻。 | |
| 陸軍分列行進曲 | シャルル・ルルー | 大沼哲/陸軍戸山学校軍楽隊 | 日本人のために書かれた最初期の吹奏楽作品を、大沼哲指揮・ 陸軍戸山学校軍楽隊の演奏で。 |
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| 第一軍凱旋の歌 | 永井建子 (調和:古矢弘政) |
菅原茂/陸上自衛隊中央音楽隊 | 明治28年に書かれた日本人の手による最初期の吹奏楽作品を、 陸上自衛隊中央音楽隊により新規録音。 |
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| 軍艦行進曲 | 瀬戸口藤吉 | 内藤清五/海軍軍楽隊 | パチンコ店の曲としても有名な日本を代表する行進曲。海軍軍楽隊による 歴史的名演奏を復刻。 |
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| 長唄「越後獅子」 | 九世杵屋六左衛門 | 陸軍第四師団軍楽隊 | 明治後期から大正にかけての大衆音楽、それは和洋が混然となった 吹奏楽だった。陸軍第四師団軍楽隊の当時の演奏で。 |
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| ドノーの漣(ドナウ川の漣) | イオン・イヴァノヴィッチ | 大阪市音楽隊 | 西洋のクラシック小品を演奏することは、明治後期・大正期には 既に流行だった。大阪市音楽隊と、代表的市中音楽隊の一つ 大阪三越音楽隊の当時の演奏を復刻。 |
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| カルメン抜粋 | ジョルジュ・ビゼー | 大阪三越音楽隊 | ||
| 初春の前奏と行進曲 − 日本のコドモの為に |
山田耕筰 (編曲:時松敏康) |
汐澤安彦/東京音楽大学シンフォニックWE | 戦前は毎年元旦にラジオで放送されていた、山田耕筰の 代表的吹奏楽作品を東京音大シンフォニックWEにより新規録音。 |
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| 行進曲「若人よ!」 | 橋本国彦 | 内藤清五/海軍軍楽隊 | 非軍楽隊員の作曲家の手による軍楽隊のための行進曲もこの頃より多く 書かれる。アカデミズムの先駆者、橋本国彦による吹奏楽作品。 |
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| 愛国行進曲 |
瀬戸口藤吉 |
森川幸雄 |
歌:奥田良三、関種子、東海林太郎、上原敏、桜井健二、 島津英夫、日置静、石井肇、結城道子、青葉笙子、秋野敏子 演奏:内藤清五/海軍軍楽隊 |
戦前最も人気のあった愛国歌を奥田良三など当時の人気歌手達と 海軍軍楽隊の演奏で。 |
| 出征兵士を送る歌 | 林伊佐緒 | 生田大三郎 | 歌・演奏:陸軍軍楽隊 | 当時の有名な戦時歌謡を軍楽隊員が合唱と吹奏楽によって演奏したもので 未発売となっていたものを初復刻。 |
| 行進曲「太平洋」 | 斉藤丑松 | 日本ビクター産業報国会工場吹奏楽団 | 戦中、工場などでは勤労意欲促進や精神教育のために産業報国会が 結成され吹奏楽団が作られていた。その一つ、日本ビクター産業報国会 工場吹奏楽団の演奏を初復刻。 |
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| 月月火水木金金 |
江口夜詩 |
高松俊兼 |
歌:内田榮一、ヴォーカル・フォア合唱団 演奏:内藤清五/海軍軍楽隊 |
有名な戦時歌謡で吹奏楽のみによる演奏もよく知られているが、 ここでは独唱と合唱付きの演奏を当時の録音より収録。 |
| 軍国に躍るリズム (1、日本陸軍 2、敵は幾万 3、勇敢なる水平 4、雪の進軍) |
1、深沢登代吉 2、小山作之助 3、奥好義 4、永井建子 (編曲:谷口又士) |
日本ビクター・ジャズ・オーケストラ | ジャズと吹奏楽の親密な関係は戦前・戦中より明らかだった。 軍歌と結び付いた戦中のジャズを収録。 |
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| 行進曲「大日本」 | 斉藤丑松 | 内藤清五/海軍軍楽隊 | 紀元2600年祭は国家的な一大イベントで、これを機に 全日本吹奏楽コンクールも始まったが、この曲はその第一回目の課題曲。 |
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| 序曲「悠久」 | 水島数雄・須摩洋朔 | 大沼哲/陸軍軍楽隊 | 紀元2600年のために書かれた吹奏楽曲には行進曲だけではなく、 このような壮大なテーマを描いた作品も存在した。これも初復刻となる。 |
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| 古典風軍樂「吉志舞」 | 伊福部昭 | 汐澤安彦/東京音楽大学シンフォニックWE | 幻と言われた伊福部昭の戦時中の作品。映画「ゴジラ」の中の 「自衛隊マーチ」初出の曲であるこの曲を東京音大シンフォニックWE により初録音。 |
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disc.2 |
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| カン・カン・ムスメ・マーチ | 服部良一 (編曲:ジョニー・ワトソン) |
ジョニー・ワトソン楽団 | 終戦直後に大流行したジャズ。それは吹奏楽でもあった。 フランキー堺(ds)、吉田雅夫(fl)、早川真平(per)などの錚々たる メンバーが参加しているジョニー・ワトソン楽団による当時の演奏を収録。 |
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| 行進曲「大空」 | 須摩洋朔 | 須摩洋朔/陸上自衛隊中央音楽隊 | 陸上自衛隊の公式行進曲であり、戦後第一回の全日本吹奏楽 コンクールの課題曲でもあったこの作品を、作曲者自身の指揮、 陸上自衛隊中央音楽隊の演奏による未発表音源で収録。 |
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| 祝典行進曲 | 團伊玖磨 | フレデリック・フェネル/東京佼成ウインドオーケストラ | 明仁新王と正田美智子さん御成婚を記念して書かれた、 まさに平和の象徴としての吹奏楽作品。 |
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| 東京オリンピックファンファーレ | 今井光也 | 古荘浩四郎/陸上自衛隊中央音楽隊 | 1964年に開催されたアジア初のオリンピックで用いられた、 ファンファーレと行進曲を収録。 |
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| オリンピック・マーチ | 古関裕而 | 船山紘良/陸上自衛隊中央音楽隊 | ||
| 吹奏楽のためのディヴェルティメント | 兼田敏 | 朝比奈隆/大阪市音楽団 | 戦後の日本の吹奏楽界を代表する作曲家、兼田敏の書いた 吹奏楽コンクール課題曲を朝比奈隆指揮の大阪市音楽団の演奏で収録。 |
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| 万国博マーチ | 川崎優 | 竹村純一/海上自衛隊東京音楽隊 | 1970年に開催された大阪万国博覧会における公式行進曲。 | |
| 札幌オリンピックファンファーレ | 三善晃 | 古荘浩四郎/陸上自衛隊中央音楽隊 | 1972年に開催された冬季オリンピックで用いられた、 ファンファーレと合唱付きの式典曲を収録。 |
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| 式典曲「純白の大地」 | 古関裕而 | 清水みのる | 歌:日本合唱協会 演奏:コロムビア吹奏楽団 |
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| 第30回みえ国体式典曲集No.1 より 「式典序曲」 |
矢代秋雄 | 汐澤安彦/東京音楽大学シンフォニックWE | 総演奏時間約30分という大規模な式典音楽より序曲のみを収録。 日本の作曲界の一時期を代表する矢代秋雄の最後の公式作品である この曲を東京音大シンフォニックWEにより初録音。 |
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| 行進曲「岩木」 | 間宮芳生 | 井田康男/陸上自衛隊第9音楽隊 | 国体のための作品は開催地の風土が反映されることが多い。 あすなろ国体のために書かれたこの作品も、民謡研究家としての 顔も持つ間宮芳生らしい行進曲。 |
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| 吹奏楽のための「琴瑟」 | 小山清茂 | 菅原茂/陸上自衛隊中央音楽隊 | 吹奏楽作品は様々な機会に書かれることがある。1972年の日中国交回復を 記念して書かれたこの作品を陸上自衛隊中央音楽隊により初録音。 |
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| 吹奏楽のための「カプリス」 | 保科洋 | 原田元吉/ヤマハ吹奏楽団浜松 | 兼田敏と共に戦後の吹奏楽を支えている保科洋の第一回笹川賞受賞曲を、 この作品の委嘱者であるヤマハ吹奏楽団浜松の演奏で収録。 |
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| セントルイス・ブルース・マーチ | W.C.ハンディ 〜 グレン・ミラー (編曲:岩井直溥) |
進藤潤/航空自衛隊航空中央音楽隊 | 吹奏楽はその多彩な表現法の中にポップス的な側面も持つ。 その先駆けとも言うべき岩井直溥の手によるアレンジを収録。 |
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| 冬の光のファンファーレ 〜長野オリンピックのための |
湯浅譲二 | 野中図洋和/陸上自衛隊音楽協力隊 | 1998年に開催された長野冬季オリンピックで用いられた ファンファーレを収録。 |
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| 南蛮回路 | 伊左治直 | 汐澤安彦/東京音楽大学シンフォニックWE | 新進気鋭の現代音楽の作曲家の手によって書かれた作品。 新しい吹奏楽の可能性・表現領域を21世紀へと提示する。 東京音大シンフォニックWEによって世界初演・初録音。 |
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| 雅の鐘 | ジョン・ウィリアムス | 野中図洋和/陸上自衛隊中央音楽隊 | 「スター・ウォーズ」などで有名なジョン・ウィリアムスが徳仁新王と 小和田雅子さん御成婚を祝して書いた作品をボーナストラックとして収録。 陸上自衛隊中央音楽隊により初演時の編成では初録音となる。 |
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