喫煙の問題は、喫煙者の皆様は,たばこは文化として喫煙権を主張し、一方,非喫 煙者の皆様は健康への懸念から嫌煙権を主張し、日常生活に関わる身近な争点と なっています。そして、非喫煙者にとって,文字通り煙たい迷惑な問題なのです。 先進各国は、たばこは有害として,広告・販売規制等の禁煙対策を推進しています が、日本では、たばこ産業と財務省の強力な抵抗で、ここでも世界の潮流に乗り 遅れ、抜本改革がなかなか進まない状況になっています。 そこで、先日,5月31日の「世界禁煙デー」に因み、最近の国内外の禁煙情報を ネット検索し、禁煙を考えて行く上で役に立ちそうな情報を整理し、まとめて みました。ご参考になれば幸いです。
1970年 WHO総会(世界保健総会)で,喫煙対策推進を決議。 1976年 非喫煙者保護の方策検討を決議、受動喫煙対策に着手。 1978年 たばこの増税と広告制限、非喫煙者の権利の擁護などを加盟国に勧告。 1986年 公共の場所における非喫煙者の保護、たばこの習慣性などの警告表示な どを実施勧告。 1989年 「たばこに関するWHOの行動計画」を決議、以後,毎年5/31を「世界禁煙デー」 1990年 WHO総会で,法的規制も含めた多面的総合的なたばこ規制対策を決議。 1996年 WHO総会で,たばこ対策のための枠組み条約の検討促進を決議。 1998年7月 ブルントラント女史がWHO事務局長に就任 「たばこのない社会実現計画;Tabacco Free Initiative」スタート。 2001年5月 ブルントラント事務局長が「世界禁煙デー」にあたり,「公共の場所での 禁煙全面禁止を求める」メッセージを発信。 2001年8月 FIFA(国際サッカー連盟)に対し,2002年サッカーワールドカップの開催 日が,5/31「世界禁煙デー」に当たるので,禁煙に協力要請。 共催国の韓国は,「競技場の全面禁煙」を決定。 日本の組織委員会は,「日本は観客席が消防法で禁煙になっている。 競技場全体に拡げるのはいかがなものか」と抵抗。 2002年2月 「たばこの価格や課税のあり方に関する調査」結果を発表。 日本とスイスが安過ぎるとやり玉に(禁煙に逆行するとの批判)。 途上国の多くが過去10年間に価格下落傾向が目立つと警告。先進国は 殆どの国で価格上昇したが、日本とスイスは途上国並と問題視。 2003年5月 「たばこ対策枠組み条約」を採択予定。 現在,政府間交渉中。その内容は、表示・広告規制、自動販売機規制、 たばこ課税強化など。日本は難色を示しているが、規制強化が大勢。
1989年 たばこ会社がテレビ広告のスポンサーになることを禁止。 2001年5月 たばこの表示や製造に関する「たばこ規制新法」が成立。2002年9月発効。 外箱に喫煙の有害性明示を義務付け、「喫煙は命を奪います」など表示。 「マイルド」,「ライト」の表現は使用禁止。 → JTは提訴、抗戦へ。 2001年6月 「たばこ広告を原則禁止する法案」を作成、加盟国に提示。 仏・伊・ポルトガル・フィンランドは,既に禁止。独・スペインなどは 規制が緩く、影響大。 2004年に施行予定。
2000年3月 厚生省が「健康日本21の推進について」を事務次官通達。
その中で、たばこに関し、@知識の普及100%、A未成年者の喫煙0%、
B公共の場・職場の分煙100%、C禁煙支援プログラム普及100%、
の数値目標。目玉になる筈だった「喫煙率半減」は,強い反対で見送り。
2001年6月現在 都道府県・市町村での「健康日本21」地方版の作成状況に関し、
ここでも喫煙率減少の目標設定に、たばこ業界が猛烈な反対、合意が
得られないとして断念する自治体が続出。
その中で、愛媛県,和歌山県,滋賀県,大阪市などは,「喫煙率50%」を導入。
兵庫県伊丹市は,4月に「伊丹市保険医療計画」を公表。「絶煙宣言」し、
10年かけて市民の喫煙ゼロ,「全市民禁煙」の目標設定。0%は全国初。
公民館で禁煙教室開催,専門家による禁煙プログラム無料化などを計画。

1999年 日医として禁煙運動に,本格的に取り組み着手。禁煙派理事が増えたため。 2000年 「会員喫煙意識調査」を実施。その結果、日医会員の喫煙率(男27.1%、 女6.8%)は、国民全体(男53.5%、女13.7%)の半分程度。 2001年1月 禁煙キャンペーン実施宣言、5月禁煙推進プロジェクト委員会スタート。 “隗より始めよ”医療に携わる医師が自己を厳しく律することが原点 として、シンポジュウム開催、テレビ・新聞で禁煙キャンペーンなど。 日本医師会として,直ちに実行すべき取り組みは、 (1) 情報提供;有害性・依存性、製品・警告表示、諸外国のたばこ対策、 WHOたばこ規制枠組み条約など国際機関の最近の動き。 (2) 防煙;小・中・高校での喫煙防止ライフスキル学習の普及など。 (3) 分煙;国のガイドライン・指針の励行、禁煙原則に基づく対策など。 (4) 禁煙サポート;禁煙支援の拡充強化、イベント・講習会の開催など。 2001年6月〜 日本初の禁煙テレビコマーシャル「たばこやめよう,日本医師会」を 放映。国民から予想を超える好意的な賛同意見が多数、賛成98.3%。 2001年7月 日医会館を全面禁煙。道路で吸うと問題発生のため、構内の1階と3階 の非常口の外に喫煙場所を用意。
2000年 大同特殊鋼・健康保険組合:分煙・喫煙率低下に向けたキャンペーンを 全社的に展開。禁煙補助薬使用時に,組合員に薬剤費の自己負担額の 半額補助制度を導入。 2001年 群馬県太田市・保健福祉事務所:医師,栄養士,保健婦がチームを組み、 3ヶ月〜2年間カウンセリング。補助はないが、希望者には事務所の 医師が処方箋を発行。 2001年 山口県:「健康やまぐち21禁煙チャレンジマラソン」を実施。 禁煙希望の参加者を募集し、一般コースと医療機関サポートコース の2コース。参加者に禁煙支援資料を事前送付。5月から禁煙開始、 定期的に指導し、7月下旬にアンケート。完走者に認定書と記念品を 授与。149人が参加、禁煙達成者は69人。 2001年 日本予防医学協会:「らくらく禁煙コンテスト」を実施。 参加者募集、参加料4,000円。2001年12月中旬から6週間の日程で、 最初の2週間は,自分の喫煙状況を自覚し、正しい基礎知識を身につ ける。正月から禁煙に挑戦、リポート提出。 半年後、1年後にもリポート提出できた人を「禁煙成功者」として 認定し、成功者証と図書券が送られる。 2001年 日立金属・若松工場:分煙・防煙・禁煙サポートを組み合わせ実施。 対策開始8ヶ月で,喫煙率が54%から49.7%に,4.3%減少の成果。 2001年4月 青森県深浦町:たばこの屋外自動販売機撤去の条例施行。 「健康長寿の町」宣言。町民に禁煙補助薬の半額補助制度を実施。 2002年1月 東京都交通局:都内の都バス停留所に,「バス停での喫煙をご遠慮下 さい」のステッカーを貼付。江戸川区に続き,「バス停禁煙」の動き。 2002年2月 千代田区:路上喫煙に条例で罰則(2万円以下罰金)、通学路などで禁止 の方針。6月に区議会へ「歩行中喫煙規制法案」を上程予定。 「歩きたばこ」禁止の動き。 cf.横浜市.神戸市などは、「たばこのポイ捨て」を防ぐため,条例で 路上喫煙を制限している。 2002年4月〜 和歌山県・教育委員会:「和歌山県たばこ対策指針」を受けて、 公立学校の敷地内禁煙を実施。 和歌山県立医科大学は、付属病院内全面禁煙を実施。
2000年 国内喫煙者数:20歳以上喫煙率は、男 53.5%,女 13.7%,男女合計 32.9%。 全国に3,313万人の喫煙者(JTの調査・推計)。 男性の喫煙率は、1965年頃,80%以上、これが30年間で約25%減少。 しかし、米・英に比べると未だ約2倍で、発展途上国と同レベル。 cf.紙巻たばこの2000年度販売 3,245億本(前年度比 -0.7%)。 2001年5月 愛知県・肺病対策協会の「職場の喫煙状況」調査結果 全国666社回答 全社禁煙 25.3%(分煙を含む)、一部部署禁煙 65.7%。 喫煙室設置 56.6%、部署まちまち 26.7%、設置なし 17.1%。日米比較:米国;人が集まるところは、完全禁煙徹底。 日本;禁煙している場所が少なく、分煙も徹底されていない。 会議;米は会議中完全禁煙、日は社の方針によってまちまち。 就職・出世;米では禁煙は自己管理の一部,査定されることがしばしば。 日では喫煙は殆ど問題にされない。 社会風潮;米の方がたばこ税率高く,社会全体が「禁煙」の方向。 日は喫煙者天国、自動販売機が約62万台も。 欧米諸国はたばこの害を認識、国単位で禁煙を推進。 たばこ価格:欧米諸国は,1箱が大体500〜600円。日本の約2倍ぐらい。 喫煙者の死亡率:厚生労働省の10年間の追跡調査の結果、非喫煙者に比べて、 ガンの死亡率 ;男 約1.6倍、女 約1.8倍。 心臓病・脳卒中の死亡率;男 約1.4倍、女 約2.7倍。 禁煙成功率:東京医科大学の禁煙外来では、禁煙成功率 約20%。喫煙は本質的に ニコチン依存、薬物依存症のため、なかなか簡単に禁煙できない。 禁煙希望者:国内喫煙者3,200万人、うち850万人が禁煙希望、その中で420万人が 「すぐ禁煙したい」層であると、ファルマシア&武田は推定している。 喫煙者調査:ファルマシアが,サラリーマン500人に意識調査した結果は、 禁煙失敗の理由;@意志が弱かった 70.0%、A手持ちぶさた・口さ びしい 51.2%、Bストレスがたまった 38.4% ・・・。 禁煙に影響の強い人;@子供 53.2%、A妻 49.3%、B同僚 16.3%。
治療ガイドライン:臨床医向けの禁煙支援の具体的な方法は世界的に共通。
米国医療政策研究局(AHCPR)のガイドライン「禁煙のための臨床治療
ガイドライン」は、5A(Ask,Advise,Assess,Assist,Arrange)の手順、
Step1 Ask 喫煙者を系統的に把握。
Step2 Advise 全ての喫煙者に禁煙を強く促す。明確に伝える。
Step3 Assess 禁煙を積極的に考えている喫煙者を識別。
Step4 Assist 禁煙希望者をサポート。禁煙計画,カウンセリング,治療。
Step5 Arrange フォローアップ診療の予定を決める。
治療/ニコチン置換療法;パッチ 約8週間、ガム 12週間が目安。
処方量は喫煙本数を目安に決める。ニコチン依存症に合わせて。
禁煙外来:医療機関の禁煙外来治療。医療保険が使えない自由診療。
ニコチンガム、ニコチンパッチ代を含めて,2〜4万円の自己負担。
ニコレット(ニコチンガム):2001年9月 OTC発売。48個入り3,950円。
1日4〜12個を目安に噛み、段階的に個数を減らして行く。臨床試験で
の禁煙成功率は約46%。12週間後,2万円ぐらいで禁煙できる人が多い。
離脱症状:たばこには依存性物質のニコチンが含まれているため、禁煙すると、
イライラ,頭痛,体がだるい等の離脱症状(いわゆる禁断症状)が現れる。
一般的に2〜3週間続く、この時期を上手く乗り越えれば,禁煙は成功に
近づく。
