涼宮ハルヒとクラシック

 2006年春。U局中心で放送されたTVアニメーションに「涼宮ハルヒの憂鬱」というものがあ
りました。放送当時かなりセンセーショナルな話題を振り撒いた作品でしたが、そのとき別の場
所でこの件についていろいろ書き込みをしました。今回放送終了からしばらく時間がたち、多
少冷却期間をおいたこともあり、ここに再構成後多少加筆改訂してまとめてみました。当サイト
内のものとしてはかなり異色なコーナーですが、よろしければご覧になってみてください。



 2006年春から夏にかけてU局中心で放送されたTVアニメーションに「涼宮ハルヒの憂鬱」と
いうものがありました。これはかなりの話題をよびましたが、そんな中6月中旬に放送された
「射手座の日」(TV放送第11話/DVD第13話[第6巻収録])という話の中でなか
なかおもしろい形でクラシック音楽がBGMとして放送されました。

 オープニング前のシーンでは、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」から第二組曲の「夜明け」、そし
て大詰めにはチャイコフスキーの交響曲第4番の終楽章の終結部がしっかり(ただし途中から
繰り返して)使用されていたのですが、なんといってもここて秀逸だったのはゲーム音楽として
使用された、ショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」の第一楽章。その冒頭と有名
な「戦争の主題」をモロに使用しているの。

 しかもゲーム画面では見事にアレンジされたゲーム音と、場面によってはそのオリジナルの
音楽がそれぞれが交互に使用される。これがじつに面白いし、しかも巧妙だ。(おまけにストー
リーには日露戦争や禁じ手のヤマト、ガンダムネタまで盛り込まれている。しかし旧ソ連の曲に
のって日露戦争風の訓示とは…)

 それにしてもこれ創った人間のBGM感覚は凄い。ショスタコーヴィチ好きにはもういろんな意
味でこたえられないし、ある意味もうこれは笑うしかないだろう。最強だ!しかしショスタコーヴィ
チ自身がこれをみたら何と思ったでしょう。それこそ呆然としてただただ画面を目で追うのみ
…。天才作曲家もこれには苦笑しきりといったところでしょうか。ほんとうに最近のアニメは手
強いです。

 さてここで使用されている音楽と演奏について少しふれておこうと思います。まず最初は冒頭
に使用された、

ラヴェルの「ダフニスとクロエ」の第二組曲から「夜明け」

  この曲は20世紀のはじめにディアギレフバレエ団が初演したバレエ音楽なのですが、なぜ
この曲がこの冒頭で使用されたのか?正直いまひとつわかりずらいものがあります。ただ単純
に物語の冒頭だからといってしまえばそれまでですが、このアニメはかなりこだわりのある作
品ので、それ以外のなんらかの理由がある可能性が高くそう言いきれないものがあります。因
みにこの使用されている部分は、海賊に誘拐されたクロエと再会するダフニスがその直前に
祭壇の前で眠っているシーン…。とにかくこのあたりはなかなか読み解けないものがあります。

 さてここで使用されているダフニスの演奏ですが、今回の涼宮で使用されたそれは、どうも
リュイタンス盤のような気がしています。演奏時間、音を重ねての聴き比べ、そしてフルートソ
ロの雰囲気やクラリネットの音などかなりの部分でよく似ているという感じがしているのです。

 この曲は過去四十年以上にわたり、このアンドレ・クリュイタンスがパリ音楽院管弦楽団を指
揮して1962年録音した超大名盤がいまだ金字塔として絶大な地位を保っています。録音こそ
最新のものではないりですが、その千変万化する究極の音楽細工的な音の響きと陰影や色彩
は、もはや神がかりといってもいいとおもいます。


 続いて使用されているのがゲームのシーンにおける

ショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」
から第一楽章

そしてそれに続けて

チャイコフスキーの交響曲第4番から第四楽章


がこのゲームのシーンの大詰めで使用されました。演奏はショスタコーヴィチがヴァレリー・ゲ
ルギエフ指揮のキーロフ歌劇場&ロッテルダムフィル。チャイコフスキーがムラヴィンスキ
ー指揮レニングラードフィルと思われます。(これはある方からいただいたメールで最初ご教
示いただきました)

 
 ここで使用された演奏がゲルギエフとムラヴィンスキーであるという前提で話しを開始します。

 じつはゲルギエフ指揮のショスタコーヴィチのレニングラード。特にゲームシーンで使用され
た「戦争のテーマ」の演奏は他のいろいろな演奏に比べると、やや早めの演奏でしかもかなり
明確に小太鼓を叩かせた演奏になっています。じつは他のこの曲の演奏ではもっとゆっくり叩
いたり、他の楽器の音に埋没気味になっていたり、粘るような表情をつけたり、テンポをかなり
揺らしたりという演奏があるのですが、ゲルギエフのそれは明快かつ粘らず気持ち他の多くの
演奏に比べ早めに運んでいるのが特長で、颯爽としたある意味の格好よさを兼ね備えた演奏
となっています。小太鼓もリズミカルに軽く明確に刻まれ最後跳ね上げるような、じつに小気
味よいリズムが際立っているように感じられますがどうでしょう。これが画面のゲームのそれと
うまく合うことになってもいるようです。

 因みにこのゲームで使用された「戦争のテーマ」は、この交響曲第一楽章の中間に使用され
ていますがここでゲルギエフとそれ以外の何人かの指揮者による演奏の

@第一楽章全体と
A小太鼓のリズムにのって弦のビィツィカートが「戦争のテーマ」を奏ではじめてから
その小太鼓が音楽が大きく盛り上がったところでリズムを刻むのを止めるところまでの

それぞれの時間を参考までに記しておきたいと思います。(多少の誤差あり)

◎トスカニーニ指揮NBC交響楽団        @28:48 A11:29
◎ムラヴィンスキー指揮レニングラードフィル @26:59 A10:43
◎ノイマン指揮チェコフィルハーモニー     @26:37 A10:36
◎コンドラシン指揮モスクワフルハーモニー  @26:29 A10:46
◎スヴェトラーノフ指揮ソビエト国立交響楽団 @28:20 A11:25
◎ヤンソンス指揮レニングラードフィル     @25:54 A10:49
◎バーンスタイン指揮シカゴ交響楽団      @31:43 A11:21
◎スヴェトラーノフ指揮ハーグ・レジデンティ @26:11 A11:04
◎バルシャイ指揮ケルン放送交響楽団     @26:20 A10:39

◎ゲルギエフ指揮キーロフ歌劇場管弦楽団  @27:38 A9:54

 これをみるとゲルギエフは、@の演奏時間そのものは目立ってはいないのですが、Aの「戦
争のテーマ」だけ、唯一10分台を切っているのが際立っており、これが上記の要素を部分的で
すが時間的にも裏付けているように感じられます。ひょっとするとこれは狙って選ばれた演奏な
のかもしれません。

 つづいてムラヴィンスキーのチャイコフスキー。ムラヴィンスキーはいくつかある同指揮者の
録音のうち、1960年録音のドイツ・グラモフォン盤がその対象となっていますが、ムラヴィンスキ
ーのこの録音はデッドで古い音質という印象がつよいものの、TVではよりマイルドで聴きやす
い音質になっているように感じました。他の効果音や台詞等がそういう部分を多少包んでしま
ったからでしょうか?わからないものです。

 因みにこの録音はムラヴィンスキーがヨーロッパにレニングラードフィルとともに演奏旅行を
行ったときイギリスで録音されたものですが、当時ムラヴィンスキーはこの曲ほレパートリーか
ら外しかけていましたし、録音をしたグラモフォンの担当者はこのオーケストラの伝統的な対向
配置に経験が浅く、甚だ異例ながらこのオケを通常配置で録音を行ったため、ムラヴィンスキ
ーとしてはかなりむつかしい状況下で録音が行われたようです。ただし演奏そのものはそうい
うハンディを感じさせない、ムラヴィンスキーらしい強靭かつ絶大な緊張感にみちた演奏に仕上
がっています。

 ところでムラヴィンスキーのこの曲の演奏、特に使用された部分のそれはいろいろな演奏あ
る中でもトップクラスに早いテンポで演奏されており、音のキレと跳ね上げるような勢いが素晴
らしく、それがまた画面に勢いと追い込みを与えることとなっています。
 
 ここでお気づきになったかもしれませんがこの「跳ね上がる」という共通項がこの両曲の演
奏にあるのですが、ムラヴィンスキーとゲルギエフは同じサンクト・ペテルブルク(旧レニングラ
ード)を本拠地とした指揮者というだけでなく、ゲルギエフはムラヴィンスキーの門下生でもあり
ます。 しかもゲルギエフはムラヴィンスキーに捧げる演奏会を日本でも演奏するほどその音
楽を慕っているようなので(スタイルそのものは多少の相違はありますが)、このあたりひょっと
して師弟連結を狙っていたのかもしれませんが、はたしてこれは考えすぎで偶然の産物だった
のか。とにかく油断も隙もない作品なので、あえてこのことも提示しておきたいとおもいます。


 つづいてTVではこの約一ヵ月後に「涼宮ハルヒの憂鬱 VI」(TV放送第14話
/DVD第6話[第3巻収録])という話が最終回として放送されたのですが、そこでもまたクラ
シックが使用されました。使用されたのは

マーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」から
第一部賛歌「来れ、創造主なる聖霊よ」の展開部付近

 使用された場所は閉鎖空間で神人登場からで、ちょっとEVAでメサイアの「ハレルヤ」がか
かっていたシーンが想起させられましたが、なるほど「創造主」か。というかんじでした。それに
この交響曲は作曲者が「大宇宙が響きはじめる」とか「太陽の運行」ということを例えてもちだ
すような曲ですし、この第一部に続く第二部が「愛」を扱った壮大なドラマであることを思うと、な
るほどといった感じでした。

 さてここではある方からご指摘があったようにここでは、「脚本・コンテと音楽とのレベルの高
い融合」が見受けられます。

 たしかにそうですし自分はこの曲大好きなのですが、この長大な展開部にあるこの部分は何
をどういっているのか語学に疎いので正直全然わかりません。大勢でワーワーガーガーとかな
りテンションの高い、それこそベートーヴェンのミサ・ソレムニスのグロリアやクレドのように、ひ
たすら大群衆による天への賛歌のようで、いつ聴いても巨大な音壁が幾層にも津波のように
押し寄せてくる圧倒感になすがままに流されています。

 ですので細かい描写でのそれはわかりませんが、一応気づいた範囲で拙劣ではありますが
自分なりにこの件について少し書いてみたいと思います。

まず神人があらわれたときにかかったそれは神々からの聖なる光を請い求める
「Accende lumen sensibus(光もて五感を高め)」
となります。

 この部分はこの交響曲前半の第一部において究極的に劇的な音楽の展開をみせる場所
で、ここにきて初めて児童合唱も投入されます。そしてここでのモティーフ(動機)は第二部冒頭
などにも受け継がれていきます。(自分はこのアニメに第二期があると推測しているのですが、
その理由はじつはこういうところにあるのです)

その後「愛を心に注ぎたまえ」とか「(ただちに平安を与えたまえ」という部分があった後、キ
ョンの発言に当惑するハルヒと、暴れる神人のカットのところに、「praevio」という歌詞が各1
回かぶってくるシーンがあります。この「praevio」という意味が将来に対する希望なのか警告
なのか、そのへんがラテン語音痴の自分には真意がわからないのでその意図がいまひとつ読
みきれないものの、とてもこのシーンは印象深いものがあります。これはこの話しのひとの核と
なる部分をあらわしいるのかもしれません。

 で最後に二人が神人の前で接吻するところで「来たれ、創造主なる聖霊よ」
と高らかに歌われそして「夢?」からさめるシーンへとなります。

 音楽が使用されているのはここまでですがその後じつは「天のよろこびを贈り給え」や「わ
れらをすべての悪より逃れしめよ」となっていくのですが、このあたりの歌詞はその後のスト
ーリーと重ねていくと興味深いものがあります。。

 歌詞がらみの件についてはここで投了。ただ自分としてはこれらの歌詞と画面のそれだけで
はなく、この作品が放送された年が、じつはマーラーがこの交響曲第8番の作曲を開始してち
ょうど百年目にあたっていたことと、戻ってきたキョンが、ハルヒとの接吻の嫌悪感から「フロイ
ト先生も爆笑だっぜ」といったのが、じつはマーラー自身がこの交響曲第8番を初演する前にフ
ロイトの治療を受けて精神の不安定から立ち直り、無事その初演の指揮をミュンヘンで執るこ
とができたというエピソードからきたことにも、かなり感心させられたものでした。

 ところでこの話で使用したマーラーの演奏。最初これをバーンスタインがウィーンフィルを指
揮したものと某所で言い切ってしまったためたいへんな迷惑をかけてしまいました。最初こそよ
く似ていたのですが、後半はまったく別物でした。この件については今でも反省しきりです。

 その後しばらくして聴いたサー・サイモン・ラトル指揮のバーミンガム・シティ交響楽団&
合唱団他が、かなりこの時使用された演奏に酷似しており、ある方からもほぼこの演奏だろう
というご指摘をいただきましたが、いろいろあったこともあり「この演奏が使用されたものにた
いへんよく似ている」ということで、この件につきましてはここで〆させていただきたいと思いま
す。


 さてもう少しここで使用された曲とこのアニメについての関係を語ってみたいと思います。今
回このアニメで使用された曲は全部で4曲

「射手座の日」では
@ラヴェル「ダフニスとクロエ」第三部より「夜明け」冒頭
Aショスタコーヴィチ交響曲第7番より、第一楽章冒頭と「戦争の主題」
Bチャイコフスキー交響曲第4番より、第四楽章の終結部付近
「涼宮ハルヒの憂鬱 W」では
Cマーラー交響曲第8番より、第一部「Accende lumen sensibus(光もて五感を高め)」

となっています。で、ここではまず射手座での三曲を中心にいろいろと考察をしてみたいと思い
ます。

 これじつはすべてロシアがらみ。@は作曲者や初演場所こそフランスですが、その初演を委
託したのがロシアバレエの主催者ロシア人、セルゲイ・ディアギレフ。AとBはもういうまでもな
く作曲者も初演場所もロシアでありソ連ということなので、これはAとBとの兼ね合いで@をも
ってきたのかもしれませが、じつは「ダフニス」が書かれ初演されたフランスのその当時のこと
を考えてみるとちょっとおもしろいことになってきます。

 というのはラヴェルが「ダフニスとクロエ」の作曲に着手した当時フランスは、第一次モロッコ
事件でドイツと不穏な関係となり、しかもこの曲の完成と前後した時期には第二次モロッコ事件
がおき、仏独全面戦争寸前までいくところで決して対外的には安定していた時期ではありませ
んでした。、ディアギレフの祖国ロシアも血の日曜日事件や日露戦争以降不穏な状態が続い
ていました。

 そしてこの「ダフニス」初演から二年後にはあの第一次世界大戦がはじまります。この音楽が
あの戦闘前に流されたのは「戦争前夜」的なそういう部分との兼ね合いもあったのかもしれま
せん。因みにこのダフニス初演後の翌年つまり大戦前年にディアギレフのロシアバレエは、ス
トラヴィンスキーのあの「春の祭典」を初演しています。

 続いて交響曲第7番レニングラード。この「射手座」で最も印象的に使用されたこの曲の使用
理由は単純に戦闘というもの、そしてこの曲が今度は第二次大戦中に書かれ初演された曲で
あるということとあの「戦争のテーマ」の特異なそれがあげられると思います。この「戦争のテー
マ」が前述した「ダフニス」の作曲者ラヴェルの代表作「ボレロ」のそのやり方をそっくり拝借し
た手法には当時からいろいろとあったようですが、とにかく当時はそういう声よりもこれが戦意
高揚の曲とナチスドイツと闘う強い意思表明と賛歌のようなものということで、圧倒的な人気と
賛意を勝ち取ったものでした。

 ですが後にこれがそのような単純な曲ではなく、ヒトラーとスターリンの両方を糾弾した内容で
あると、現在は偽書という説も強いヴォルコフによって編纂されたショスタコーヴィチの回顧録
「ショスタコーヴィチの証言」では語られています。そんなこともあるのでしょうか、この擬似戦闘
ともいえるゲームの戦闘シーンということで、この単純ではない、しかも聴きようによってはずい
ぶんくだけたテーマを使用したこの部分を、ここで使用したのかもしれません。そしてそこで冒
頭のダフニスとの「ラヴェル」繋がりもできる…と。

 あとこの戦争のテーマではレハールの「メリーウイドゥ」の「マキシムの歌」が挿入されている
といわれています。それはレハールが好きだったヒトラーへの皮肉ということらしいのですが、
そこで使用されている「マキシムの歌」の部分ではこう歌われています。

 「そこで私はマキシム(キャバレーの店の名前)に出かける。そこの女の子とは皆親しいの
だ。」

 戦争とはまったく縁も所縁もないようなきわめてぶっちゃけた歌詞ですが問題はこの使用さ
れた歌詞の前の部分で、そこでは外交官はいつも忙しくてたいへん、こういうときは気晴らしも
必要と、じつは歌われているのです。

 この部分、「射手座」のラストでキョンが長門に対しての独白内容をおもわせるものがありま
す。ひょっとしたらラストの台詞から逆算してこの曲の使用を決めていた部分もあったのかもし
れません。

 そしてこの戦争のテーマのあと滑り込むようにして、チャイコフスキーの交響曲第4番の終楽
章が使用されるのですが、自らの援助者となってくれたフォン・メック未亡人への手紙で、チャ
イコフスキー自らがこの曲(終楽章)に対して語った言葉を次に続けます。

あなたが自分自身のなかに喜びを見出せないのなら、
あたりを見回せばよい。
人々がどんなに生を楽しみ
歓楽に身を打ち込むかを見るがよい。
人々の幸福を喜びなさい。
そうすればあなたは
なお生きていけるのです

 この二つをペアにして順序を組み替えて読んでいくと、なぜこの作品あそこまで長門が今まで
違う表情をみせ、キョンの言葉を借りれば「たのしそう」だったのか。ほんとうにじつにいろいろ
と音楽上の伏線がはってあるなあというのが偽らざる心境です。

※(2008年7月7日追加)
 ある方からこのチャイコフスキーについて「射手座の日に使用したピョートル・チャイコフスキー『交響曲第4番』は
OVA銀河英雄伝説でのマルアディッタ星域会戦での自由惑星同盟軍艦隊が銀河帝国軍艦隊に対する劣勢を挽回
の序戦のシーンに使用してることに対するオマージュ。」という情報をいただきました。あらためて自分勉強不足を痛
感です。因みにこれは「はなもく ウィキペディア」のこの頁にあります。ご指摘ありがとうございました。

 上のショスタコーヴィチやチャイコフスキーにおける裏設定的なやり方は、「涼宮ハルヒの憂
鬱 VI」で使用されたマーラーの交響曲第8番でも見受けられます。これは上で既に述べました
閉鎖空間から戻ってきてベッドから落ちたキョンがハルヒとのことを思い出してその嫌悪感から
「フロイト先生も爆笑だっぜ」といったのがそれです。

 またこのマーラーでは歌詞と画面とのシンクロと〆に裏設定が際立っているのですが、「射手
座」では音楽そのものと裏設定のストーリーとのシンクロというじつに手のこんだことをしていま
すし、またその裏設定が随時長門にかかわっている部分が多いことから、長門に対する、愛情
たっぷりの音楽表現という気がこれらから強く感じたものでした。寡黙なキャラに対する無言の
愛情表現とでもいうのでしょうか。

 でもここでひとつ疑問。「射手座」の占いでよくみかける基本性格をみると、そこからはむしろ
ハルヒのことをさしているように感じられてしまいます。ではなぜそれなのに人物描写や音楽が
この話、これだけ長門にからんでくるのか?ちょっと不思議な気がするのですが、この話ひょっ
として長門も含めハルヒワールドという異常空間でみなそれなりに自分を貫き、そしてたのしみ
踊らされたり踊っていたりと、そういう状況を呈していることをゲームという枠にいれてそれを再
構築再提示したものだったといえるのかもしれません。それで「射手座」がタイトルとして登場し
た。そうなるとチャイコフスキーの発言「あなたが自分自身のなかに喜びを見出せないのなら
…」というのは長門だけでなく、ハルヒにも、そしてここにいる全員にも当てはまってくるのかも
しれません。(もっともこれはコンピ研の会長のハルヒに対するちょっした皮肉まじりによるゲー
ムのタイトルづけという、ただそれだけのものだったのかもしれません。)

 とにかくどちらにもとれるという作り方をしている本作を思うと、最後は自分自身にすべてを帰
結させるしかない。ただ面白かったもOK、自分のように深読みするもOKという、見ていた皆
様ひとりひとりにもうそれは委ねられるべき話であり領域であるのかもしれません。

 とにかくどこまで考察しても限りがないのでこのあたりの考察はここで一応終了といたしま
す。それにしてもここまで考察するとこの音楽を考えた人はいったいどういう人なのだろうという
気がじつにします。


 さてここからは推測編と雑考です。

 使用した演奏者がこの射手座の場合、クリュイタンスやゲルギエフ、それにムラヴィンスキー
ということを思うと (あくまでも上記の指揮者にかなり似た演奏なので上記の指揮者による演
奏だったら…という前提で話します)正直いろいろかなり聴きこんでいる人という気がします。

 クリュイタンスのラヴェルは世紀の大名盤なのでこれはともかく、ゲルギエフのレニングラード
も決して偶然にみつけたわけではなく、すでにこの演奏のCDを持っていたか、もしくは2004
年の11月24日に有楽町の東京国際フォーラムホールAで行われた、ゲルギエフ指揮キーロ
フ国立歌劇場管弦楽団&NHK交響楽団合同公演における「レニングラード」を聴きに行ってい
たか、または後日NHKで放送されたものを聴いていてそこからチョイスしてきたのでは?とい
う気がしています。(尚、ゲルギエフ指揮による「レニングラード」のCDはあの「911」同時多発
テロのほぼ一週間後のライブ録音です。)

 またチャイコフスキーにスヴェトラーノフではなくムラヴィンスキーを選んできたのも興味深く、
かなり演奏者にもこだわりをみせている部分も感じます。そうなるとクリュイタンス、ゲルギエ
フ、ムラヴィンスキー、そして「涼宮ハルヒの憂鬱 VI」ではラトルと新旧関係なくじつにバランス
のよい、ただどちらかというとパワーや音量にこだわる爆演に走ったり、泥臭かったり感情移
入が強烈だったりという演奏を避け、洗練された明晰かつ無駄のない、それでいて迫力にも事
欠かない指揮者を好むという、そういう傾向がこの選者には見受けられます。(ただこれはTV
のBGMとして使用するため性質上そういう音質のものを選んだという、そういう見方もできる
かもしれません。)

 それにしても、もしここで使用された演奏がすべてここで使用されたものと一致していた場合
おそらくこれらの音楽をチョイスした方はクラシックの場合、

ドビュッシーではマルティノンやパレー
ヴォーン=ウィリアムスではボールトやバルビロリ
ドヴォルザークではクーベリックやセルまたはアンチェル
シベリウスではオラモかベルグルンドもしくはバルビロリ
パルトークではライナー

 このあたりを好んで聴かれている方ではないか?という気がしていますがどうなのでしょか。
ただいずれにせよかなり聴き込んでいらっしゃる方という気がします。

 余談ですかそういえば2006年の4月、つまりハルヒの放送開始時期は、ハルヒ制作の京都
アニメーションの地元である京都を代表するプロオーケストラである京都市交響楽団が設立さ
れてからちょうど50年目にあたっていました。ひょっとしてそこまで考えてこのアニメ、終盤にク
ラシックを多用していたのでしょうか?因みにこの京都市交響楽団はロシアの名指揮者ドミトリ
ー・キタエンコの指揮でハルヒ放送期間中の 5 月 11日 に上記したショスタコーヴィチのレニ
ングラードを演奏しています。(第 488 回定期演奏会 京都コンサートホール 19 時開演)この
へんも演奏会の事前告知なども含めて案外使用の伏線としてあったのかもしれません。

 尚最終回放送前後の7月4日にはネーメ・ヤルヴィの指揮でチャイコフスキーの交響曲第4
番ももこれまた同オーケストラによって演奏されています。もっともここまでくればもうこれは偶
然でしょうが…。


 この涼宮アニメ。それ以外にもじつに音楽に凝っています。例えば「ライブアライブ」
(TV放送第12話/DVD第12話[第6巻収録])という話では文化祭の軽音楽部のバンド演
奏における、音楽と演奏を極力あわせようとしていたそれには正直驚いてしまいました。ふつう
音楽を演奏するシーンではいつも音と演奏がまったくあってなくて、イライラしてしまうことがあっ
ただけにこれにはかなり驚いてしまったものでした。

 とにかく凝ったアニメですしこの作品の音楽を担当した方はかなりの方です。素直にこの凄さ
に脱帽したいと思います。(また他のサイトにおきましては「射手座」で長門が使用していたパソ
コンの描写の細かさと、その機種についても触れていたものがありました。この作品、まあ当
然といえば当然なのかもしれませんが、細かいというか拘っているものは音楽だけではないよ
うです。)それにしても京都にはディープな音楽愛好家が多いなあ…(独白)


 最後に提案。

 なにかの機会に京都アニメーションと角川は、同じ地元の京都市交響楽団と提携して今回使
用されたクラシック音楽をメインにして演奏会を開いたらどうでしょうか?出演された声優さんも
ゲストによぶとそれはそれで華があってたのしいかも…(ちょっと「のだめ」みたいですが)。た
だマーラーが人集めと経費がたいへんかもしれません。ひとつの案としてここに記しておきたい
と思います。

 以上で〆です。


 かなり勝手な思い込みや憶測を盛り込んだこの頁、最後までおつきあいいただきほんとうに
ありがとうございました。


(関係リンク先)

 「涼宮ハルヒの憂鬱」特設ファンサイト

「涼宮ハルヒの憂鬱」オフィシャルサイト

「涼宮ハルヒの憂鬱」京アニサイト

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の「涼宮ハルヒ」


アニメスタッフ

原作・構成協力:谷川流 
原作イラスト・キャラクター原案:いとうのいぢ 
製作総指揮:安田猛、宇田川昭次、八田陽子、酒匂暢彦 
企画:井上伸一郎、山下直久 
企画プロデューサー:安田猛 
アソシエイトプロデューサー:鈴木智子、武智恒雄、中嶋嘉美、室市剛人 
監督:石原立也 
超監督:涼宮ハルヒ 
シリーズ演出:山本寛 
シリーズ構成:涼宮ハルヒと愉快な仲間たち 
キャラクターデザイン・総作画監督:池田晶子 
美術監督:田村せいき 
色彩設計:石田奈央美 
撮影監督:田中淑子 
超編集:重村建吾(キョン) ※放送第1話のみ 
編集:重村建吾(スタジオごんぐ) ※放送第2話以降 
音響監督:鶴岡陽太(楽音舎) 
音楽:神前暁 
音楽プロデューサー:斎藤滋(ランティス) 
音楽制作:ランティス 
設定:高橋博行 
アニメーション制作:Kyoto Animation 
製作協力:ビッグショット 
製作:SOS団 

各話スタッフ

第1話 「朝比奈ミクルの冒険 Episode00」 
 脚本/絵コンテ/演出:山本寛 作画監督:門脇聡 
第2話 「涼宮ハルヒの憂鬱1」 
 脚本/絵コンテ/演出:石原立也 作画監督:池田晶子 
第3話 「涼宮ハルヒの憂鬱2」 
 脚本:山本寛 演出:北之原孝将 作画監督:米田光良 
第4話 「涼宮ハルヒの退屈」 
 脚本:村元克彦、演出:吉岡 忍、作画監督:池田和美 
第5話 「涼宮ハルヒの憂鬱3」 
 脚本:山本 寛、演出:坂本一也、作画監督:堀口悠紀子 
第6話 「孤島症候群・前編」 
 脚本:村元克彦、絵コンテ:吉岡 忍/荒谷朋恵、演出:吉岡 忍、作画監督:荒谷朋恵 
第7話 「ミステリックサイン」 
 脚本:ジョー伊藤、絵コンテ/演出:石立太一、作画監督:西屋太志 
第8話 「孤島症候群・後編 」 
 脚本:志茂文彦、絵コンテ/演出:荒谷朋恵、作画監督:門脇 聡 
第9話 「サムデイ イン ザ レイン」 
 脚本:谷川 流、絵コンテ:山本 寛、演出:北之原孝将、作画監督:米田光良 
第10話 「涼宮ハルヒの憂鬱IV」 
 脚本:石原立也、絵コンテ/演出:石立太一、作画監督:西屋太志 
第11話 「射手座の日」
 脚本:賀東招二、絵コンテ/演出:武本康弘、作画監督:堀口悠紀子、
メカデザイン:海老川兼武
第12話 「ライブアライブ」
 脚本/絵コンテ/演出:山本 寛、演出補佐:渡邊政治、作画監督:門脇 聡
第13話 「涼宮ハルヒの憂鬱X」 
 脚本:志茂文彦、コンテ/演出:北之原孝将、作画監督:米田光良 
第14話 「涼宮ハルヒの憂鬱Y」
 脚本:志茂文彦、コンテ/演出:石原立也、演出補佐:坂本一也、作画監督:池田晶子


キャスト

キョン:杉田智和 杉田智和
涼宮ハルヒ:平野綾 平野綾
長門有希:茅原実里 茅原実里
朝比奈みくる:後藤邑子 後藤邑子
古泉一樹:小野大輔 
朝倉涼子:桑谷夏子 桑谷夏子
谷口:白石稔 
国木田:松元恵
鶴屋さん:松岡由貴 
キョンの妹:あおきさやか あおきさやか
喜緑江美里:白鳥由里 
コンピ研部長:小伏伸之 



※キャストの青字の名前をクリックされると各人の公式サイト及びそれに準ずるサイトへ、赤字
名前をクリックされると該当する「Wikipedia」の頁に行けます。尚、「Wikipedia」の各人の頁の最
後の方には、公式プロフィール等がある頁がリンクされていますので、よろしければそちらもご
参照ください。




◎使用された音源によく似た演奏一覧。

 上でも言及いたしました、本編で使用された演奏とかなりよく似ている(確実にこれ、という発
表が公式にはありませんので、あくまでも推測ということでこういう表現となっています。ご了承
ください。)と思われる演奏のまとめです。


「射手座の日」冒頭でOP前の艦隊決戦直前のシーンに使用された曲。
◎ラヴェル:「ダフニスとクロエ」より、第二組曲「夜明け」

ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲
アンドレ・クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団
(EMI)

 1961-1962年というステレオ初期に録音されたものだが、いまだにラヴェルの演奏における
旧約聖書といわれている。

 因みにこの録音のクリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団は1964年に来日、この「夜明け」
を含む第二組曲も演奏している。この演奏は世紀の大名演となった。このときの公演のライブ
録音も残っているが、録音がモノラルなのが残念。(Altus)


「射手座の日」コンピューター研とのゲーム対決において、仮想世界で流
れていた、ゲーム音のオーケストラ版として使用された曲。

◎ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」
 第一楽章から、戦争の主題

ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」
ワレリー・ゲルギエフ指揮キーロフ劇場管弦楽団&ロッテルダムフィル
(ユニバーサル)

 これはゲルギエフがあの「911」直後にオランダのロッテルダムで、手兵のキーロフ劇場オケ
と、もうひとつの手兵ロッテルダム・フィルとの合同オケを指揮して演奏した時の実況録音盤。
情念的ではないが終盤かなりの熱演となっている。


「射手座の日」コンピューター研とのゲーム対決終盤、長門とキョンの会話
以降形成逆転、SOS団が勝利を収めるシーンまで流れていた曲。

◎チャイコフスキー:交響曲第4番より、第四楽章、終盤

チャイコフスキー:交響曲第4番
エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー
(ユニバーサル)

 ムラヴィンスキーが国外公演時にロンドンで録音したもので、今日まで同曲のひとつの規範と
いわれている。1960年の録音で何度も再発売を繰り返している。音質はさすがにステレオとは
いえ古くなったが演奏は素晴らしい。ただムラヴィンスキーはこの頃より同曲を自分のレパート
リーから外していた。この国外公演でもこの録音のために演奏はしものの、実際のこの国外演
奏会ではついに一度も演奏しなかった。そういう意味では貴重な録音といえるだろう。


「涼宮ハルヒの憂鬱 VI」で閉鎖空間からハルヒとキョンが神人に追われ
そして脱出するまでに流れていた曲。

◎マーラー:交響曲第8番より、第一部 賛歌「来れ、創造主なる聖霊よ」より

マーラー:交響曲第8番
サー・サイモン・ラトル指揮バーミンガム市交響楽団・合唱団、他
(EMI)

 すでに名門ベルリンフィルに着任していたにもかかわらず、かつての手兵だったバーミンガ
ムを指揮しての2004年の実況録音。この録音によりラトルが二十年以上かけて録音し続け
た、マーラーの交響曲全集がついに完結した。



(最後に)

 最近ある方から対訳等のUPは著作権に抵触するのではという、ご心配のメールをいただき
ました。自分としては卒業論文と同じで、出典元を明記し、金銭がからまなければよいのか
な?と思っていましたがどうもそうではないようです。このため、歌詞対訳の部分を大幅に削除
することにいたしました。ちょっと残念ですが、こういう考察を加えるにも今後いろいろと工夫を
加えなければいけないという、いい教訓になりました。正直ちょっと残念ではありましたが…。

 以上、ご理解とご了承のほどよろしくお願いいたします。

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