バックハウス東京公演曲目
(1954)
(昭和二十九年)


4/5 AM11:00 羽田空港にPAA機で到着。
5/13迄に全国主要都市で十公演以上の公演を行う為に来日。
キング所属だった近藤圭子さんや振袖姿の女の子の出迎え等を受けた後帝国ホテルへ。
同日「トスカニーニ引退」の発表が新聞報道される。


4/9:日比谷公会堂

バッハ/イタリア協奏曲
バッハ/半音階的幻想曲とフーガ ニ短調
バッハ/フランス組曲 第5番
ブラームス/ラプソディ ト短調 作品79-1
ブラームス/間奏曲 変ホ長調 作品117-1
ブラームス/間奏曲 変ロ長調 作品117-2
ブラームス/間奏曲 ハ長調 作品119-3
ブラームス/奇想曲 ロ短調 作品76-2
ショパン/バラード 第1番 ト短調 作品23
ショパン/夜想曲 第2番 変ニ長調 作品27-2
ショパン/練習曲 第13番 変イ長調 作品25-1
ショパン/練習曲 第14番 ヘ短調 作品25-2
ショパン/練習曲 第15番 ヘ長調 作品25-3
ショパン/練習曲 第21番 変ト長調 作品25-9
ショパン/練習曲 第5番 変ト長調 作品10-5


4/10:日比谷公会堂

ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第5番 ハ短調 作品10-1
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 作品23「熱情」
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 作品「告別」 作品81a
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111


4/12:日比谷公会堂(上田仁指揮東京交響楽団)

牧野由多可/祭典(初演)
オネゲル/交響曲 第5番「三つのレ」(本邦初演)
ブラームス/ピアノ協奏曲 第2番


4/22:宮内庁楽部演奏室

バッハ/イタリア協奏曲 ヘ長調 
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 作品27-2「月光」
ブラームス/間奏曲 変ホ長調 作品117-1 
シューベルト/即興曲 作品142 第3番 変ロ長調
ショパン/練習曲 第13番 変イ長調 作品25-1
ショパン/練習曲 第14番 ヘ短調 作品25-2
ショパン/練習曲 第15番 ヘ長調 作品25-3
ショパン/練習曲 第21番 変ト長調 作品25-9
ショパン/練習曲 第5番 変ト長調 作品10-5

  全9曲を一時間程演奏。アンコールとして「小犬のワルツ」他1曲を演奏。
  皇后陛下、三笠宮妃ご臨席


4/23:日比谷公会堂

モーツァルト/ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K330
シューマン/幻想曲 ハ長調 作品17
シューベルト/楽興の時 作品94 全6曲
シューベルト/即興曲 作品142 第3番 変ロ長調
ショパン/練習曲 第1番 ハ長調 作品10-1
ショパン/練習曲 第2番 イ短調 作品10-2
ショパン/練習曲 第3番 ホ長調 作品10-3
ショパン/練習曲 第18番 嬰ト短調 作品25-6
ショパン/練習曲 第20番 変ニ長調 作品25-8
ショパン/練習曲 第23番 イ短調 作品25-11


5/2:日比谷公会堂[お別れ公演]

ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 作品13「悲愴」
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 作品53「ワルトシュタイン」
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ短調 作品作品106 「ハンマークラヴィア」 


5/3:日比谷公会堂(上田仁指揮東京交響楽団)[お別れ公演]

ベートーヴェン/エグモント、序曲
ベートーヴェン/交響曲 第7番
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第5番「皇帝」
ショパン/練習曲 第13番 変イ長調 作品25-1(アンコール)

※後に東芝EMIよりCD化。


5/13:神田共立講堂[ガン研究緊急援助資金獲得バックハウス特別演奏会]

ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第6番 ヘ長調 作品10-2
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第12番 変イ長調 作品26「葬送」
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27-2「月光」
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第16番 ト長調 作品31-1
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 作品109

※高松宮妃殿下による希望で急遽実現した演奏会で、終演後日本赤十字副総裁としての高
松宮妃殿下からバックハウスに赤十字有功賞が贈られました。


5/22 スイスに帰国の途へ。



(関西公演)

4/16:宝塚大劇場

バッハ/イタリア協奏曲
バッハ/半音階的幻想曲とフーガ ニ短調
バッハ/フランス組曲 第5番
ブラームス/ラプソディ ト短調 作品79-1
ブラームス/間奏曲 変ホ長調 作品117-1
ブラームス/間奏曲 変ロ長調 作品117-2
ブラームス/間奏曲 ハ長調 作品119-3
ブラームス/奇想曲 ロ短調 作品76-2
ショパン/バラード 第1番 ト短調 作品23
ショパン/夜想曲 第2番 変ニ長調 作品27-2
ショパン/練習曲 第13番 変イ長調 作品25-1
ショパン/練習曲 第14番 ヘ短調 作品25-2
ショパン/練習曲 第15番 ヘ長調 作品25-3
ショパン/練習曲 第21番 変ト長調 作品25-9
ショパン/練習曲 第5番 変ト長調 作品10-5


4/17: 宝塚大劇場

ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第5番 ハ短調 作品10-1
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 作品57「熱情」
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 作品作品81a「告別」
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111


4/19:京都公楽会館

バッハ/イタリア協奏曲
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第12番 変イ長調 作品26
ブラームス/間奏曲 変ホ長調 作品117-1
ブラームス/間奏曲 変ロ長調 作品117-2
ブラームス/間奏曲 ハ長調 作品119-3
ブラームス/奇想曲 ロ短調 作品76-2
ショパン/バラード 第1番 ト短調 作品23
ショパン/練習曲より、5曲





 昭和29年、3/26に70歳の誕生日を迎えた「鍵盤の獅子王」バックハウスは、来日前に途中
アメリカに立ち寄り、3/30にカーネギーホールでリサイタルをひらきました。これはこの来日公
演が決まったため途中アメリカでも公演をしてくれないかという希望により実現した、バックハ
ウス戦後初のアメリカ公演となりました。(因みに他の南米の国々からもこの時期に演奏会の
要請があったようですが、日程の都合により本人が断ってしまったようです。)

 このカーネギーホールのリサイタルは録音され後に発売されることとなりました。
収録曲は、

ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 作品13「悲愴」
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 作品31-2「テンペスト」
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 作品.81a「告別」
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第25番 ト長調 作品.79「かっこう」
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111
シューベルト/即興曲 変イ長調 作品142-2
シューマン/幻想小曲集 作品12 第3曲「なぜに?」
リスト=シューベルト/ウィーンの夜会 第6番 イ長調 S.427-6
ブラームス/間奏曲 ハ長調 作品119-3

 というものです。

 この公演後、ウィルヘルム・バックハウスは毎日新聞からの招聘に応じ初来日をはたしまし
た。公演プログラムには以前来日していたヨゼフ・シゲティやジェルメーヌ・ルルーが寄稿して
いました。このバックハウス来日時には、カラヤン(N響客演初来日)、ハイフェッツ(23年ぶり
三度目にして最後の来日)、タリアヴィーニ(初来日)、ジョセフィン・ベーカーが来日しており、た
いへん楽壇は賑やかな話題に包まれていました。

 バックハウスは日本で能や舞楽などの鑑賞もたのしみましたが、本人が五十年間観る事を
たのしみにしていたという桜の観賞を特にたのしんだようで、来日直後「桜が散ってしまう」と言
い雨の中を桜を観に出かけたほどでした。また関西ではちょっとしたアクシデントで山で遭難?
しかけたりといろいろあったようですが、このへんの興味深い話は「音楽の友」(昭和29年7月
号の144-148頁)によせた、京極高鋭(加藤鋭五)氏の「バックハウスとともに」という文に記され
ておりますので、機会がありましたらぜひご覧になってみてください。

 それにしてもベートーヴェンやブラームスはともかく、バッハもそうですがなんとショパンが多
いことか!これは本当に意外でした。因みにこのとき演奏された曲目の多くは来日した数年
後、デッカがステレオ録音に移行した時期から次々と録音、もしくは再録音を開始しておりま
す。

 因みに椅子のきしむ音への嫌悪感や、高さを調節するビスや留め金が壊れるような万が一
の事がおきては困るということで、来日時すでに三十年は愛用したという、軽金属性の脚がす
べて取り外しができる、上部が赤く覆われた「赤い椅子」もカバンに収納して日本にちゃんと持
参、全国すべての公演でこれを使用したということです。



 ※ 1954年という年はバックハウスが「ディアベッリの主題による33の変奏曲」を含むモノラ
ルのベートーヴェン・ピアノソナタ全集の録音を完結させた年でもありました。またこの離日前
にはモノラルによるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集の指揮をつとめてくれた名指揮者、クレ
メンス・クラウスの訃報を耳にすることとなりました。



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