2005年2月9日
授業『「電池が切れるまで」   1
  の詩から「生きる意味」を考える』
     由仁町立三川中学校 1年A組       文責:堤 浩則
 
 2月8日(火)の4校時に『電池が切れるまで』(角川書店)を使って授業をさせて頂きました。昨年、この著書を元にテレビドラマ化されました。ご覧になった方もおられると思います。私も涙を流しながら真剣に見ていました。
 この授業は根室管内の別海町立中西別中学校 教諭 染谷幸二氏の授業を一部修正して追試したものです。(追試:前の人がやった実験(授業)を、もう一度その通りにやって確かめること)
 次の詩をご存じでしょうか?
 多くの方が一度は目にされていると思います。


                     宮越 由貴奈(小学四年)
命はとても大切だ
人間が生きるための電池みたいだ
でも電池はいつか切れる
命もいつかはなくなる
電池はすぐにとりかえられるけど
命は簡単にはとりかえられない
何年も何年も
月日がたってやっと
神様から与えられるものだ
命がないと人間は生きられない
 でも
 「命なんかいらない。」
 と言って
 命をむだにする人もいる
 まだたくさん命がつかえるのに
 そんな人を見ると悲しくなる
 命は休むことなく働いているのに
 だから 私は命が疲れたと言うまで
 せいいっぱい生きよう
 
 この詩を書いた「宮越 由貴奈さん」の生き方を考えさせる形で進めました。
 授業の内容を少し紹介します。

 『ほたる』(28ページ)を配布。私がゆっくり2回読んだ後、作者名と学年を確認し、次のように聞きました。(この本を読んでいる生徒もいました。)

 この詩から、宮越由貴奈さんはどんな小学生だと思いますか。プリントに書いて下さい。
 
 2分ほど時間を取った後、書いたことを発表してもらった。
・自然を大切にしている ・入院していて、窓から眺めている ・心が穏やか
・すでに他界されている ・生き物を愛している ・心が優しい ・病弱である
・病気をしている 等
 これらの答えから、一人ひとりが真剣に詩を聞いていたことがわかった。
 次に『きょうだい』(44ページ)を配布。この詩は『ほたる』の1年前に書いた作品です。私が読んだ後、次のように聞きました。

 宮越由貴奈さんはどこでこの詩を書きましたか。
 
 すぐに「病院」と返ってきました。

 何行目でそれがわかりますか。
 
・4行目、5行目、11行目等の答えが返ってきました。
 次に「神経芽細胞種」と板書しました。

説明 由貴奈さんは5歳で発病し、11歳で短い生涯を終えました。
   紹介した2つの詩は、由貴奈さんが入院していた長野県立子ども病院  にある院内学級の授業で書いた詩です。
   由貴奈さんは入院中でも勉強ができる院内学級が大好きでした。
 
 『ゆきなちゃん』(10ページ)を配布。私が読みました。
 これは、由貴奈さんと同じ院内学級で学んだ田村由香さんの作品です。
 この作品から、由貴奈さんの人間像が浮かび上がってきます。

 この『ゆきなちゃん』という詩を読んで、思ったこと、感じたことを自由に書いて下さい。
 
・友達思い ・2年間もつらい思いをした ・友達のことが大好き
・誰よりも頑張った ・相手の気持ちがわかる、思いやれる子ども 等
「周囲に明るく振る舞っても、本当は辛い闘病生活だった」ということが伝わった。
 『プラス思考』を配布し、私が読んだ。

説明 この詩の中の「あなた」とは、由貴奈さんのことです。担任の先生は始めは誰のことかわかりませんでした。そこで学級の生徒に聞いたところ直ぐに「由貴奈ちゃんのことだよ」と声が返ってきたとのことです。
 
 『命』(8ページ)を配布。私が読んだ。
 目頭を赤くしている生徒がいた。一つひとつの詩に力がある証だと実感しました。最後に、122ページより、由貴奈さんのお母さんの文を読んだ。

 今日の授業の感想を書いて下さい。
 
 約5分くらい、生徒達は静かに鉛筆を走らせていました。
  生徒が感想を書き終わった後、133ページから院内学級の担任である山本厚男先生が書いた『思い』を途中を省略して読み聞かせました。
 生徒の感想を読んで、一人ひとり真剣にこの授業を受けていたことがわかりました。皆様にその感想をお知らせします。
 次に、生徒達の感想を紹介していきます。
 
生徒達の授業の感想   
 
○ 死を目の前にしながら、よく頑張れたなと思います。
それに由貴奈ちゃんに、 君はよく頑張った。
君の電池は長くは発光することはできなかったけど、僕たちはなるべく長い時を発光させ続けたいと伝えたい。
 
○ 小さな火が消えようとしているのに、自殺など命という火を簡単に消してしまう人が多く、そういう人に「粗末にしてはいけない」、「火が消えるまで一生懸命ともし続けなきゃいけないんだ」と言いたい。
 
○ この授業で命がどれだけ大切か学べた気がする。
 自殺する人に「自殺するなら命を下さい」と言いたかったと思う。
 (最後まで「命がつきるまで」生きてとか)
 宮越由貴奈さんの「命」という詩は普通「元気な人」には書けないと思う。命が長くないとわかっている人だからこそ書けたんだと思う。
 
○ 大変な病気ではあるけれど、それでも一生懸命に生きていた由貴奈ちゃんはすごいと思った。だから、この授業ですごく大変なことでも精一杯生きたんだということ。由貴奈ちゃんのことは本人や周りの人の詩でしか知らないけど、由貴奈ちゃんがどういう人だったのか、どういう思いながら生きていたのかわかったような気がした。
 
○ もし私が宮越由貴奈ちゃんを生きかえらせる電池をもっているなら、今すぐ一秒もしないうちに取り替えてあげたい。今を精一杯元気よく優しく生きたのなら、神様からごほうびをもらえるのかな。
 
○ 自分が神経芽細胞腫と言われたらしばらくの間は頭の中で何も考えられなくなると思う。だけど「ゆきなちゃん」は力強く立って、時々後ろ向きになることもあるけれど、前を見て強く生きているのですごい「強い」子だなぁと思った。それに、11歳で亡くなったけれど、私は同じ「ゆきな」という名前として「ゆきなちゃん」の分まで力強く、前向きに生きようと思う。
 すごいんだね「ゆきなちゃん」
○ 由貴奈ちょんは自分のことも、周りにいる人達のこともちゃんと考えられるえらい子なんだと思った。
 詩を通じてそばにいてくれる人や命の大切さやはかなさを知ってほしかったのだと思う。私自身も一生懸命に生きようと思った。
 
○ 宮越由貴奈さんは、神経芽細胞腫という病気になりながら、人をなぐさめたりして「すごいなぁ」と思いました。
 私もこれから命というものを大切にして精一杯生きようと思いました。
 
○ 小学校四年生で命の大切さをこんなに強く感じているというのはすごいことだと思います。しょうがいのある人はそのかわりに何か一つ成長しますが、ゆきなちゃんは神経芽細胞腫になったかわりに命の大切さを感じられたのかなと思いました。11歳の命は短いけど、そのかわり太く短く生きられたのだと思いました。
 
○ 病院での抗ガン剤治療や腎臓を片方取る手術がつらかっただろうなぁと思った。
 
○ 世の中には、生きたくても生きられない人がたくさんいるのだから、命は簡単に捨ててはいけないと思った。どんなに短い人生でも、一生懸命生きればつらいこともあったかもしれないけど、その人にとっては何10年も生きたような長い人生だったと思う。
 
○ 何かよくわからないけど、とても大切なことを感じたような気がする。自殺ということは人間として最低の行為だと思いました。
 
○ 宮越由貴奈さんという人の、命を大切にすること、精一杯生きようという気持ちが伝わった感じがした。こんなに頑張って生きようとしている人がいるのに自殺などをする人はおかしいと思った。
 
○ 病気の人ほど「生きたい」という気持ちが強いんだと思った。
「命」という詩で、「命」がどれだけ大切か、「命」がつかれたというまで精一杯生きようという「ゆきなちゃん」の気持ちがすごくわかった。
 「命」と簡単に言っているけど、どれだけ貴重かがわかった。
 
○ 最近いやなこと続きで「もう疲れた」と思っていた。でも、テストでひさんな点を取って怒られるのがいやで「もういやだ」って思っていた自分がバカみたいに思えた。生きているんだから、怒られることがあるのは当たり前なんだから「もう死にたい」とか思うのはやめにしようと思った。由貴奈さんはとても強い人だなぁと思った。
 
○ この授業で一番心に残っている詩は「命」という詩です。命を電池にたとえていたのがすごいと思いました。でも、この詩を書いた日の4ヶ月後に亡くなってしまったのがすごくかわいそうに思いました。最後の詩になって…
 電池が切れてしまって… 
○ 由貴奈さんは11年の短い命だったけど、思いやりのある優しい人だと思った。命という詩は小学4年生なのにすごいと思った。
 
○ いつもお母さんを待っていた由貴奈ちゃん、体調が悪くて食欲がないときに友達に励まされ、逆に太ってしまった由貴奈ちゃん…、みんなの人気者だった由貴奈ちゃんは11歳という短い生涯だったけど、みんなの心には今も由貴奈ちゃんの思い出が焼き付いていると思います。
 
○ 由貴奈さんも、由貴奈さんのお母さんもつらい思いをしていると思うし、やっぱり命はそまつにしてはいけないと思った。
 
○ 自分も精一杯生きようと思う。
 殺人も自殺も絶対しないと思った。病気なのに精一杯生きている人には同情はしない。理由は一生懸命生きているのに同情されても嬉しくないから。
 
○ 命は一度なくなったらもう二度と戻らないから命は大切だと思う。
 
○ 私が今、健康でいることがこんなにも幸せなことだとは、思っていませんでした。でも、宮越さんはそんなつらい生活の中でも前向きに生きようとしていたのは、とてもすごいことだと思いました。
 
○ 私の妹が今、由貴奈ちゃんと同じ歳なので、短い人生だったのではないかと思います。「神経芽細胞腫」のことはあまりわかりませんが、6歳の妹が1歳の時入院していたので、何となくわかるような気がしました。
 

 
 「電池が切れるまで」という本を書店で偶然目にしました。本に収められている詩に私の目と心は釘付けになりました。いつか、この詩を生徒に紹介しつつ授業をしたい、「命の大切さ」や「友達を思いやる心」を伝える授業をしたいと考えました。その時、私の友人であり同じ教師の染谷氏の授業を知ったのです。  生徒の心に響く授業をするには、教師が感動を覚えてそして授業として成立するかどうかの吟味をすることが必要です。この「電池が切れるまで」の詩は難病・重病と闘っている長野県立子ども病院の院内学級の子ども達が書いたものです。事実に勝る力のある教材はありません。1年生が書いた感想を読んで、「生きること」について考えるきっかけになったのではないかと思っています。
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