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| ユージンさん、ラグナさん、韓国で私の作品を読んでくださっているすべての皆さん、そして「Slayers for Lina&Zel」にこの作品を捧げます。 キューピー/DIANA(2000年4月2日) イラストコーナー |
| 目 次 |
| 第1章 シルフィール |
| 第2章 ガウリイ |
| 第3章 ゼロス |
| 第4章 リナ |
| 第5章 昔なじみ |
| 第6章 ルーク |
| 第7章 レゾ |
| 第8章 アメリア |
| 第9章 ミリーナ |
| 第10章 ゼルガディス |
| 「シルフィールが行方不明?!」 隔幻話(ヴィジョン)を利用した通信室に、怒鳴り声が響く。 ここはナザレス・シティの魔道士協会の建物の中。 あての無い旅の途中、立ち寄ったこの都市で、リナ=インバースとガウリイ=ガブリエフの二人は、いきなり魔道士協会への出頭を求められた。最近、文句をつけられそうな迷惑をかけた覚えは無い、と、断ったが、苦情ではなく二人にセイルーンから連絡事項がある、と告げられて、こうして通信室で連絡しているところだ。 通信の相手は聖王国セイルーンの姫君、アメリア。彼女がリナとガウリイに告げたかったのは、彼らも旧知の女性、シルフィールのことだった。 「いったい、いつ、どこで、どうして、どうなったって言うのよ?」 リナがアメリアの映像に問う。 「順を追って説明するわ。シルフィールさんは一年前、サイラーグ近郊のサルティアの神殿の巫女に就任しました。就任から約四カ月後、盗賊の集団が神殿を襲い、宝物と一緒にシルフィールさんもさらって行ったそうなの」 結構、シリアスな話を、アメリアは少し眉をひそめているが、割りとシラケた口調で説明する。 「討伐隊は?」 「サルティアに討伐隊が到着したのが二日後。そしてめぼしい盗賊団を掃討したという話なんだけれど、そのアジトからは盗まれた宝物も、シルフィールさんも見つからなかったの。その盗賊団が実は無関係だった、と分かったのは一月後」 「初動捜査のミス、ってわけね」 「そうなのよ。それから近辺の盗賊団を一つ一つあたった結果、ようやく神殿を襲撃した連中を割り出すことが出来たんだけど、討伐隊がそのアジトに向かった時には、アジトはもう誰かに潰された後だったの。 ねえ、リナ。身に覚え、無い?サルティアの近くのラアナ山の盗賊だけど……」 「ちょっと!それ、どういう意味よっ!」 リナがむくれるが、彼女が盗賊いぢめと称してゴロツキたちのアジトを襲う趣味の持ち主であることは、まぎれもない事実である。 「つまり、ね。そのアジトが潰されたのが事件の前なのか、後なのか、によってシルフィールさんの行方にも微妙な違いが出て来る、という話なのよ」 「…………!」 「シルフィールさんが連れ込まれた後にアジトが襲われたなら、彼女はアジトへの襲撃者と一緒にいるか、アジトと一緒に吹き飛ばされたか……」 「吹き飛ばされた……って」 「だって、明らかに建物は攻撃呪文で吹き飛ばされていたんだから」 さらりと言われて、リナは絶句する。ちなみにガウリイの方は、話の展開について行けず、ぼ〜っと二人のやり取りを見ている。 「もしも彼女がアジトに入る前に襲撃されたのなら、盗賊団は彼女を連れたままねぐらを変えた公算が高い。と、まあ、こういう話になるわけ」 「分かったわ。でも、残念ながらラアナ山の盗賊のアジトを潰したのはあたしじゃないわ」 「リナじゃないの?本当?」 アメリアは疑わしいそう。 「本当よっ!第一、最近はライゼールには足を踏み入れていないんだからっ! 今だってラルティーグ領のナザレス・シティにいるのよっ」 「そう……だったわね。じゃあ、シルフィールさんは……」 リナはため息をついた。 「あたしたちも彼女の事件は、たった今、聞いたばかりよ。で、どうするの?」 「どうするって?」 「どうって……あたしたちが空振りだった場合、どうする、とか決めていないの?」 アメリアの映像が首を横に振る。 「全然。だって盗賊つぶしと言えはリナ以外に考えられなかったし」 おのれはぁぁぁぁ…… リナが青筋を立てるが、ガウリイが口を挟んだ。 「で?俺たちでシルフィールを探すのか?」 「ちょ、ちょっとガウリイ?どうして……」 「え?だって、知らない仲じゃないし、もし彼女がまだ捕まっているなら、誰か助けに行かなくちゃいけないんだろう?」 「そ、そりゃぁ、そうだけど……」 「じゃぁ、いいじゃないか」 リナの頭にもそのアイディアはある。しかし、彼女はそれを自分から言い出したくなかった。理由は単純。自分から言い出したのでは報酬を要求できないから。 シルフィールとは、コピーレゾとの戦いやら冥王フィブリゾとのいざこざで、共に死線を潜り抜けてきた仲。助け出すのにやぶさかではない。しかし、せっかくセイルーンの、それも王族が話を持ちかけて来ているのだ。報酬ぐらい期待したい。 「だって……ほらガウリイ、あなたの剣について、まだ調べなくちゃならないこともあるし……余計なことに時間を使う暇は……」 「ん?斬れ味のいい、伝説の魔剣、で俺は十分だけど?」 ああだこうだと言い合うリナとガウリイの映像を、王宮の通信室で眺めながら、アメリアはため息をついた。 「リナ……わたしはさっき、シルフィールさんと一緒に神殿の宝物も奪われたって言ったでしょ?」 「え?」 「アジトでは宝物は見つからなかったの。焼けた残骸でさえ、ね」 「と、いうことは……」 「そう、アジトを襲撃した人間が、持ち去った――」 シルフィールと宝物は、盗賊団か盗賊団のアジトを潰したヤツか、どちらかの手にある可能性を、アメリアは指摘していた。もしも、シルフィールと一緒に宝物を奪回できた場合、その半分の額をセイルーンが支払う、という条件で、リナは仕事を引き受けた。 「さて……と、次のタラス・シティの名物料理は……」 はぁぁぁぁぁ…… リナがガイドブック片手に、おいしい料理を食べさせる店を探し始めると、後ろから盛大なため息が漏れる。 「あによっ!なんか言いたいことがあるなら言えばいいじゃない!」 「あのなぁ……俺たち一応、シルフィールの行方を探す、って仕事を引き受けているわけだろ?」 「そうだけど?」 「だったらなんで、名物料理の店を探さなきゃならないんだ?」 「まずは腹ごしらえ!そんなのいつものことじゃない」 「そりゃまぁ、そうだけど……、その町で本当にシルフィールの居所を掴めるのか?」 リナは大きな瞳をガイトブックからガウリイに向け、驚きをこめて言う。 「そんなの行ってみなきゃ、分からないわよ。当然じゃない?」 はあぁぁぁぁぁ…… 再びガウリイが盛大なため息をつく。リナは眉をひそめた。 「お前……そんなにシルフィールを探す仕事が嫌なのか?」 「!」 あまりに意外な質問で、リナは怒るよりもむしろびっくりした表情でガウリイを見つめる。 「ガウリイ?あなたこそどうかしたの?今までなら、あたしと一緒に、まずは腹ごしらえ!と言っちゃあ、負けないくらいに食べあさって来たのに……」 「こんな時に、よくそんな気分になれるよな……」 「こんな時?」 リナが聞き返すと、ガウリイの顔に赤みがさす。リナは彼が腹を立てている、と知り、ますます驚いた。彼は吐き捨てるように言う。 「シルフィールが生きていたとして、今ごろどんな境遇になっていると思う?それなのに、よくそんなにのん気に構えていられるなってことだ……」 ガウリイの言わんとすることはリナにも分かる。シルフィールは若くて美しい。盗賊団が彼女を殺さず連れて行った理由は明らかだ。だからと言って、今更彼女の境遇に同情したり、事件に腹を立ててもどうにもならない。 むしろ、笑顔で彼女の無事を喜ぶ方が、彼女にとっても救いになると思う。これは、リナ自身が女性だから考えることなのかもしれないが。 男性は女性を弱い者、守るべき者として見るから、ある意味で見下してしまう。対等の友人としてどうあるべきか、を考えない。しかし、腹を立てている相手にそんな理屈を言ったところで、聞く耳は持たないだろう。 リナはガイドブックをしまい込み、足元を見つめてひたすら、日没までにタラス・シティに着くことだけを考えて歩き続けた。 シルフィールはタラス・シティの大通りの脇でうずくまっていた。顔も見えないほど深くフードを被り、全身も長い灰色のマントで覆い隠し、傍目には男女の別も分からない。 ちょっと無理をしすぎたみたい…… 体調が良くないのに、街中に出て来たことを後悔はしないが、どうも気分がすぐれない。日陰に移ろうと立ち上がった時、通り過ぎる男性が連れに話しかける声が聞こえた。 「……ガウリイの……今ごろ……」 ガウリイ様!? 声の主を探すと、赤いバンダナを黒髪の頭に巻いた男と、銀髪をポニーテールにした女の、武装した二人連れが目に入る。重い身体を引きずるようにしてシルフィールは二人の後を追った。 彼らはすぐに食べ物屋に入り、店先に出してあるテーブルに陣取った。彼らが席に着くのを見届けて、シルフィールはフードを下ろし、二人に近づく。 「あの……」 同時に振り返った男女のうち、男の表情には好奇心がありありとしたが、女の方は興味があるのかないのかさえ分からない。 「済みません。先ほど話していらしたガウリイという方……どちらでお会いになられたのでしょう?」 ルーク――男の方はますます目を丸くする。目の前の女性は、顔立ちの美しさもさることながら、言葉遣いから物腰まで、すべて『上品』を絵にしたような印象なのに、着ている服はまるで物乞いかと思うような薄汚れたマント。その下に纏ってるものも、わずかに覗いた粗末なサンダルをひっかけただけの素足からしのばれる。 訳ありだな…… そう感じて、ルークはあたりさわりのない答えを返す。 「どこでって……あっちこっちで出くわした、まあ、くされ縁のヤツだが?」 「失礼、あなたの名前は?」 ルークの答えにかぶせるように問いかけたのはミリーナ。最初、相手が名乗らなかったため、ルークは深入りを避けて尋ねなかったのだが、ミリーナは彼とは違う判断をしたようだ。 「申し訳ありません。名乗りもせずにお尋ねしたりして。私はシルフィール=ネルス=ラーダと申します」 「私はミリーナ。こちらはルーク。そして私たちが最後にガウリイ=ガブリエフに会ったのはディルス王国の首都、ガイリア・シティです」 静かな口調だが、ミリーナの答えには事情の説明がなければこれ以上の答えはない、という主張が暗に含まれていた。 「そうですか……」 つぶやいて立ち尽くすシルフィールに、ミリーナは椅子を進める。腰を下ろしながらシルフィールは、ほっとすると同時にくすくすと笑って言った。 「ミリーナさんとルークさん……『くされ縁』と言うほどガウリイ様と関わったのなら、さぞかしとんでもない目にあわれたのでしょうね?」 「……というと、あなたも?」 ミリーナが表情を変えずに言う。シルフィールはうなずきため息をついた。 「ガウリイ様より、一緒にいるはずのリナさんの方が、騒動の中心なのでしょうけれど……」 「ごめんなさい。あなたは?言葉からすると、一般市民という印象ではないけれど?」 「私は……元はサイラーグの神殿の巫女でした。二年ほど前、サイラーグが壊滅しまして、セイルーンの親戚のところでご厄介になっていたのですが……少し事情がありまして、今はこの町のはずれにある修道院に身を寄せています」 「修道院?……って尼さんじゃぁないよな……」 無遠慮に声を上げたのはルーク。この町のはずれにある修道院というと、修道女の施設なのだが、彼女が尼僧でないことは一目瞭然。シルフィールははにかんで答える。 「ええ……そちらの宿坊に寝泊りさせていただいているだけです」 「……お一人で?」 ミリーナの静かな、しかし鋭い質問に、シルフィールは眼を見張る。 「ええ……とも、いいえ、とも……実は私は、ある人のお世話でその宿坊に入れていただいたのです。その方は時々、私のところに来てくださいますが、家族、とか保護者、というわけではありません」 「立ち入った質問ですが、シルフィールさん……そのような方がいる立場で、ガウリイさんの居所を聞いたら探すつもりですか?」 シルフィールは少し困った表情を作る。ガウリイのことを尋ねたのは、偶然、彼の名前を耳にして懐かしかったからであり、具体的に彼のところへ行く、などということまでは考えていなかった。 「いいえ……ただ、懐かしくて……でも、もし近くにいられるのでしたら、力を貸してもらえたら……」 「力を貸してもらう?」 ルークがけげんな顔をする。 その時、ミリーナは視線を感じて後ろを振り向いた。食べ物屋の面した道の脇に、一つの人影がたたずみ、こちらを凝視している……らしい。らしい、というのは、その人物が白いフードを目深にかぶっていてよく分からないからだ。身体も白いマントで覆い、白いズボンと革靴を履いた足だけが見える。 ミリーナの動きに気づいて、やはりそちらに目をやったシルフィールが、慌てて椅子から立ち上がった。 「ゼルガディスさん」 一瞬、ルークがあからさまに硬直する。しかし、ミリーナが自分を見つめているのに気づくと、とりつくろうようにテーブルの下で足を組み直した。ゼルガディスと呼んだ男のほうを向いていたシルフィールに、ルークのあわてぶりは見えなかった。 シルフィールはゼルガディスを手招きするが、彼は動こうとしない。彼女は席を立って歩み寄った。ゼルガディスの方が先に口を開く。 「大丈夫だったか、心配したぞ」 「ご心配かけて済みません。あの……」 「彼らか?」 「ええ。偶然でしたけれど、ガウリイ様の知り合いだそうです」 「…………で?」 「一緒にお話しませんか?懐かしいでしょう?」 ゼルガディスは首を横に振った。 「なんで、そう思う?俺はむやにみ他人と関わり合いになる気はない」 シルフィールはハッとする。気配りが足りなかった。ゼルガディスは人間ではない。邪妖精(ブロウ・デーモン)と岩人形(ロック・ゴーレム)が一人の若者に合成された合成獣(キメラ)。その肌は青黒い岩でできている。 シルフィールと彼は、同じ敵に対する戦いの中で出会った。殺し合い、という非常事態の中で互いの協力が必要だったため、ゼルガディスはあえて彼女に自分の素顔を見せたが、行きずりの人間に詮索されたくないのは当然だ。ゼルガディスもガウリイと一緒に死闘を潜り抜けた経験があるから、ガウリイの知り合いと聞けば喜ぶと考えたのが浅はかだった。 ここ約七カ月、彼女が経験した様々な困難を潜り抜けられたのは、ゼルガディスが常にそばで手助けし、励ましてくれたからだ。神殿の宿坊に身を寄せられるように金を工面してくれたのも彼だし、今も、旅をしながらもよく様子を見に立ち寄ってくれる。今日もまた、彼女のところへ来たのだろうが、彼女は町に出ていて、それで探しに来たらしい。 これほど自分の身を案じてくれている彼に、自分はなんと配慮が足りないことか。シルフィールは恥じ入った。 「済みません。……つい、ガウリイ様が懐かしくて……」 「しかたないさ。とんでもない目にあって来たんだ。懐かしい話をしたいのは分かる。彼らが時間を構わないなら、ずっと話しているといい。俺は宿に部屋を取っておく」 「え?宿を?」 「もう午後だ。これから話し込むと夜になるぞ。夜道はその身体にはきついだろう?」 「じゃあ、私はこのまま戻ります」 だがゼルガディスは彼女の肩に手を添えて制する。 「いや、たまには気分転換をした方がいい。毎日宿坊に篭っていると気も滅入るだろうし。宿の部屋は一つしか取らないが、俺は夜の間に修道院へ行ってロバを借りてくるから心配しなくていい」 ゼルガディスは宿坊にシルフィールを訪ねる時も、いつも昼に姿を現し、日が暮れるまでに立ち去るのが常だ。何から何まで気を遣ってくれる。それが邪な気持ちの表れでないことが分かるだけに、シルフィールは時々、自分が彼に何をしてやれるのか、と考えてしまうのだが…… 答えが見つからないまま、彼女はゼルガディスと別れ、ルークとミリーナがいるテーブルに戻った。 「あの人があなたを援助してくれている人ですか?」 ミリーナが声をかける。 「ええ。いろいろと私を助けてくれています。今も、私が今夜この町に泊まれるように、宿を手配してくれるそうです」 ルークは片方の眉を上げる。きっと先ほどの人物は、修道院に近い宿を確保しに行ったのだろう。だとすれば、ルークたちが泊まるのと同じ宿になる。 「単刀直入に聞くが、今のは男だろ?あんたの恋人か?」 ルークがちょっとイラついた口調で尋ねた。シルフィールはそれを、自分たちのテーブルに誘われたのを断ったことへの反感だと思った。 「いいえ。そういう関係ではありません。彼は、私のために尽くした努力の見返りを、一度も要求したことはありません。最初の時も、そして今も」 「最初?」 シルフィールはルークにうなずいて見せる。 「サイラーグがまだ健在だった頃。父に薬を盛っていた敵との戦いの時、彼も同じ敵と戦うために来た、と言って助けてくれました。何の見返りもなしに……あえて言えば、戦いで協力することが見返りになったのかもしれませんが……今度は、経済的にも精神的にも肉体的にも途方にくれた状態だった私を、物心両面で立ち直れるように、と手助けしてくれています」 「立ち直った後、何かを要求する腹かもな」 「……ルーク」 驚いた表情のシルフィールに代わり、たしなめたのはミリーナ。シルフィールはテーブルに目を落とし、静かに言った。 「多分、何か私に希望することがあったとしても、彼はそれを口に出さないでしょう……多分……」 「へえ、よく分かっているじゃないか?あんたの方は彼に気があるのか?」 「ルーク、やめなさい」 シルフィールはゆっくりとかぶりを振る。 「もし、彼を好きなら、ガウリイ様の名前を聞いただけで、あなたたちに声をかけたりはしません」 静かな声の裏に、頑固な性格が見える。ルークはバツの悪い表情を作り、頬を指でかいて言った。 「すまねえ。随分と立ち入ったこと、聞いちまって。その……悪く思わないでくれ」 「謝るくらいなら最初から訊かなければいいのに」 「ああっ、ミリーナ!すまねえ、この通りだ。勘弁してくれよお!」 連れの女性の腹立ちに、ルークは大慌てで謝り倒す。それを眺めていたシルフィールがくすくすと笑い。やがて彼らは笑いを交えてガウリイとリナの話に花を咲かせた。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 夜。宿の一階にある食堂の片隅で、二人の男女が顔を付きあわせるようにしてひそひそ声で話している。 「どう思う、ミリーナ?アイツはあの巫女さんを騙していると思うか?」 「少なくとも、彼女を利用しようとしているのでしょう。彼が評判通りの人物なら、人助けなどするはずもないし」 「まったく……あんなに美人で世間知らずの巫女さんを……」 「気になる?」 「おっ、ミリーナ(ハアト)。もしかして嫉妬してくれてるのか?」 「何をバカなことを。私が言いたいのは、彼女の子供のことよ」 「…………子供?」 「気づかなかったの?彼女は身ごもっているわ。それも産み月は近そうよ」 「あいつの種か?!」 「だとすれば彼の彼女に対する気遣いは当然でしょうけれど、シルフィールの態度は解せない……可能性はフィフティ・フィフティね」 「……どうする?」 「私はなりゆきを見届けたいと思うわ」 「『残酷な魔剣士』ゼルガディスとやり合うことになっても、か?」 「ええ」 「分かった、俺に異存はねえ」 |
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