(リナ・サイド)
by キューピー/DIANA
デザイン&イラスト by b^3

英語版/English



 長い長い時が過ぎたのを覚えている。
 でも、それが刹那に感じてしまっても、私は構わない。私のそばに――がいるから。

 一緒に廃虚をさ迷っていた。
 出口を求めて。
 一緒に行こう。
 でも、どこへ?

 あたしが立ち止まると、彼が振り返った。
 何かを言おうとして、手を差し伸べたけれど。
 彼も私に手を差し伸べていたけれど――

 突然、彼の後ろから白い光の奔流が襲いかかり、あたしの視界はまばゆい色に占領された。
 その中に飲み込まれた――を感じる。

「ぜ…る… ぜる、だ…よね…?」

 あたしが呼びかけると、白を割って蒼い炎が立ち上がる。
 綺麗。
 心どころか存在の全てを奪われてしまいそうなくらいに。
 いいえ、やはり奪われたのは心。
 だって今、あたしたちは心だけの存在になっているから。
 あたしは心の手を蒼い炎へと伸ばした。

『リナ…なのか?』
 蒼い炎から思いが呼ぶ。
『意識、よ 俺、は…』
 炎の蒼が白熱を圧倒して輝く。

『…ここにいる!』

 後は漠然としか思い出せない。
 焼き尽くされそうで怖かった。
 引き裂かれそうで痛かった。 
 でも、悲しくて離れたくなかった。
 だから、一緒に帰ってしまいたかった。 あの場所へ。

 けれど、あたしを包む蒼の強い思いに、あたしは安らぎを覚えて。
 信じられないくらいに優しい気持ちになれた。
 そうしたらあの声が。
『…今、ここに思う俺はいる…
 まだ、帰るわけには、いかない!』

 ゼル? ゼル? あなたなの?
 ああ、いま、あたし、あなたを感じたわ
「大丈夫… ここに、一緒に… 居ようね」



 頬に誰かが触れて、それであたしは薄く目を開いた。目の前には地面に膝をついた白いズボン。力を振り絞って首を巡らし、見下ろしている彼の顔を見詰めようとした。手を伸ばそうとした。でも、力が入らない。
 言わなくちゃ。 大切なことを。
「… み、 みた、の…」
「無理するな」
 ゼルがあたしを抱き起こしてくれる。包まれた彼の腕に、さっきの炎と同 じ暖かさと優しさを感じる。
 言わなくちゃ。 今、言わなくちゃ。
「…何が、あった? ゆっくりでいいんだ。」
「…ほのお。炎があったの。 …蒼い。 きれいだった。 みたことも、な いくらい…あ、たし…は、それに、ふれようとして… とても きれいだっ たから… 」
 あたしは、あの時感じた思いを必死に思い出す。
 受け止めて。 あたしの思いを。
 そう願って、ゼルの目を見詰めた。
「ふれたら… いたくって、 …悲しくなって。 でも、やさしい気持ちに なった… そして… 」
「…?」

「 ゼル… あなたを感じた !」     

 一瞬、ゼルの目が少し大きくなり、あたしを刺すように見た。
 そして、彼の唇にとても優しい微笑が浮かんだ。嬉しかった。

「…もう、大丈夫なようだな。」
「うん! ゼルもね!」
 身体に力が戻って来て、あたしは自分の足で立つ。目の前の出口の向こうから、満月には少し足りない月があたしたちを照らしていた。
 あたしはその月が、何もかもを見ていたような気がして、全てを受け入れてくれる優しさを感じて、外へと駆け出した。
「早く!」
 ゼルの微笑がもっと大きくなり、あたしは彼が、あたしの感じた思いを受 け止めてくれたことを知って、幸せだった。
 微笑み返したあたしに、ゼルが声をかける。
「…そうだな。 行こう。 夜は、俺達の時間だ… 」

 焔(リナ・サイド)〜了〜




 これを書くきっかけになった「焔」を書いたb^3さんは、このページの壁紙の元になったイラストも描いてくれました。(キューピー/DIANA)



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