|
長い長い時が過ぎたのを覚えている。
でも、それが刹那に感じてしまっても、私は構わない。私のそばに――がいるから。
一緒に廃虚をさ迷っていた。
出口を求めて。
一緒に行こう。
でも、どこへ?
あたしが立ち止まると、彼が振り返った。
何かを言おうとして、手を差し伸べたけれど。
彼も私に手を差し伸べていたけれど――
突然、彼の後ろから白い光の奔流が襲いかかり、あたしの視界はまばゆい色に占領された。
その中に飲み込まれた――を感じる。
「ぜ…る… ぜる、だ…よね…?」
あたしが呼びかけると、白を割って蒼い炎が立ち上がる。
綺麗。
心どころか存在の全てを奪われてしまいそうなくらいに。
いいえ、やはり奪われたのは心。
だって今、あたしたちは心だけの存在になっているから。
あたしは心の手を蒼い炎へと伸ばした。
『リナ…なのか?』
蒼い炎から思いが呼ぶ。
『意識、よ 俺、は…』
炎の蒼が白熱を圧倒して輝く。
『…ここにいる!』
後は漠然としか思い出せない。
焼き尽くされそうで怖かった。
引き裂かれそうで痛かった。
でも、悲しくて離れたくなかった。
だから、一緒に帰ってしまいたかった。 あの場所へ。
けれど、あたしを包む蒼の強い思いに、あたしは安らぎを覚えて。
信じられないくらいに優しい気持ちになれた。
そうしたらあの声が。
『…今、ここに思う俺はいる…
まだ、帰るわけには、いかない!』
ゼル? ゼル? あなたなの?
ああ、いま、あたし、あなたを感じたわ
「大丈夫… ここに、一緒に… 居ようね」
頬に誰かが触れて、それであたしは薄く目を開いた。目の前には地面に膝をついた白いズボン。力を振り絞って首を巡らし、見下ろしている彼の顔を見詰めようとした。手を伸ばそうとした。でも、力が入らない。
言わなくちゃ。 大切なことを。
「… み、 みた、の…」
「無理するな」
ゼルがあたしを抱き起こしてくれる。包まれた彼の腕に、さっきの炎と同
じ暖かさと優しさを感じる。
言わなくちゃ。 今、言わなくちゃ。
「…何が、あった? ゆっくりでいいんだ。」
「…ほのお。炎があったの。 …蒼い。 きれいだった。 みたことも、な
いくらい…あ、たし…は、それに、ふれようとして… とても きれいだっ
たから… 」
あたしは、あの時感じた思いを必死に思い出す。
受け止めて。 あたしの思いを。
そう願って、ゼルの目を見詰めた。
「ふれたら… いたくって、 …悲しくなって。 でも、やさしい気持ちに
なった… そして… 」
「…?」
「 ゼル… あなたを感じた !」
一瞬、ゼルの目が少し大きくなり、あたしを刺すように見た。
そして、彼の唇にとても優しい微笑が浮かんだ。嬉しかった。
「…もう、大丈夫なようだな。」
「うん! ゼルもね!」
身体に力が戻って来て、あたしは自分の足で立つ。目の前の出口の向こうから、満月には少し足りない月があたしたちを照らしていた。
あたしはその月が、何もかもを見ていたような気がして、全てを受け入れてくれる優しさを感じて、外へと駆け出した。
「早く!」
ゼルの微笑がもっと大きくなり、あたしは彼が、あたしの感じた思いを受
け止めてくれたことを知って、幸せだった。
微笑み返したあたしに、ゼルが声をかける。
「…そうだな。 行こう。 夜は、俺達の時間だ… 」
焔(リナ・サイド)〜了〜
|