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もう、あれからどのぐらい時間が過ぎたのかわからない。
階段はまだ上に続いている。
触れた壁は湿って冷え切っている。
…! 僅かな明かりが差し込む。
「…外か?」
幾重にも、白く、白く。
――眩しい。痛みさえ感じる…
耐え切れず、振り返る。
「…リナ?」
瞳は照らしだされて赤く輝いていた。その赤がふと揺らめく。
「ゼ…る…」
リナの白い指が近づく。
受け止めようと伸ばした腕にリナの髪が触れる…
…! くっ… な…んだ… !
髪の赤は、勢いよく燃え移る炎の様に俺の腕を包む。
「リナ!」
目の前にリナはいない。この廃墟の壁さえも確かめることはできない。
俺は、ゆっくりと上を見上げる…
どこまでも赤い… 全てが燃えている。 これは… 炎なのか?
絶えることなく揺らめくそれは、幾筋にも分かれながら上へと立ち上っている。
――熱くはない。 それどころかこれは…
”全てが生まれ、帰る所。”
意識が遠くなる… 苦しさはない。 満たされていく感覚。 このまま… !
『ぜ…る… ぜる、だ…よね…?』
リナ…なのか?
意識、よ 俺、は…
「…ここにいる! 」
炎が激しさを増す! もう、俺は自分の身さえも感じない。 焼き尽くされたのか…
…今、ここに思う俺はいる… まだ、帰るわけには、いかない!
…一体?
指先に感覚が戻る。 ! リナは?
足元に倒れ込んでいるリナ。
屈み込んでそっとその髪を掻き分けると、小さく震える唇。
その瞳が少しずつ開いた。
「気づいたか?」
うつろな目は、だがたしかに、俺を見ている。
「あ… あ、 」
声にならない。腕をあげて、俺に触れようとする。その指も細かく震えている。
「… み、 みた、の…」
「無理するな。」
俺はリナを抱き起こす。リナはしきりに何かを言おうとしている。
「…何が、あった? ゆっくりでいいんだ。」
「…ほのお。炎があったの。 …蒼い。 きれいだった。 みたことも、ないくらい…
あ、たし…は、それに、ふれようとして… とても きれいだったから… 」
リナは一度うつむいた。そして見上げる。
今度は、しっかりと俺を見つめている。
「ふれたら… いたくって、 …悲しくなって。 でも、やさしい気持ちになった…
そして… 」
「…?」
「 ゼル… あなたを感じた !」
「…もう、大丈夫なようだな。」
「うん! ゼルもね!」
出口だと思った方を見上げると、少し欠けた月が見える。夜か…。
なにもなかったように、リナは外へと駆け上がる。
「早く!」
「…そうだな。 行こう。 夜は、俺達の時間だ… 」 |