| 作者より:またもや短く、またもや暗いスレイヤーズのお話です。どうも私は、長く暗いものより短くて暗いものの方が得意なようです。どのお話が気に入ったか、教えてください。そうしたら長い物も書いていけます。筆を止めるもの;女の子はどうしたらいいんでしょう? |
|
空は真紅と漆黒とに覆われていた。東の空に浮かぶ月さえも、星一つ瞬かぬ暗黒に赤々とその存在を主張している。 ひび割れた大地や、不毛を絵に描いたような地面につぶれて横たわる花々だけが、わずか数時間前にその場所が、瑞々しく生気に満ちた樹木豊かな谷であったことを物語っていた。 ぴりぴりと、目と鼻を刺す煙の中、その場所にただ一人立つ者が居た。彼は、わずかに残った衣服をしっかりと握り締めていた。まるでそれが、自分が暗闇に落ち込むのを防ぐ命綱と信じているかのように、 ここで、かつて彼が行動を共にした者たちが命を落としたのだ。逃げ場のない罠に取り込まれて。彼はかつてその者たちを「仲間」と呼んだことはなかった。 彼はかつて「恐ろしい」などと感じたことはなかった。しかし、今、底知れぬ狂気が、パニックに陥りそうなほどに切迫し、その精神を脅かし貪欲に蝕もうとしている。 彼はたった一人きりなのだ。 もうほかに誰もいない―― 彼の心にその言葉が響き、彼自身の声がこだまとなって返る。 もう、操ってもてあそぶ人間もいない。 彼が追求して止まなかった目的も、吹き過ぎる風の中、ただよう肉の焼ける臭いと彼自身の子供じみた言葉と共に消え去った。 「お母さん」――彼は震えながら言葉を吐き出す。「僕は――お母様――ああ、我が王お――じゅ‥‥」 彼の声はどもり、やがて押し黙る。 彼女にはもう彼の声は届かない。彼女も逝ってしまった。彼女は彼にとって、唯一愛し、そして畏れた存在。彼の創り主にして彼の王、彼のただ一人の家族―― 彼にはもう一人、愛した者がいた。彼女を悼み、彼女のために悔いた。彼女は彼の敵であり、慰めであり、生きがいであった 衣服を剥ぎ取られた彼の身体はいたるところ出血していた。やがて、手は力を失い、宝玉のついた錫杖が地面に落ちる。 かつては敵であった暗闇が、今、彼に安らぎをもたらす。闇の中にこそ、彼女にたどり着く道があるのだから。 激戦の余韻漂う風景の中、そこにはもう誰もいない―― |
| 後書き:いかがでしたか?多分、皆さんお分かりのことと思いますが、ある人はこれをゼルガディスのお話だと思ったので、あえてお断りします。これはゼロスのお話です。このお話の感想を是非聞かせてください。 |
| 翻訳者注:アメリカでは、スレイヤーズの小説は発行されていません。そのため、いろいろと作者の想像が入っていますが、割り引いてお読みください。 |
| トップページ | スレイヤーズのページ | スレイヤーズ図書館 |