No.021
他者への想像力
〜4.1巨人vs.阪神〜
2001.04.02
text by RB(あーるびー)

 

 

4月1日、幸運にもそのチケットを手にすることができ、東京ドームへと足を運んだ5万人以上の人々は、興奮冷めやらぬ状態で帰路に就いたことだろう。しかし、逆転に次ぐ逆転のゲーム展開以上に、私の脳裏に焼き付けられた3つの顔がそこにあった。

7回裏、ゴジラこと松井秀喜に逆転の3ランHRを浴びた阪神・遠山。ベンチに引き上げた直後、先発・福原の隣りに座り込んで見せた、申し訳ないと言わんばかりの彼の表情。8回表、4番の今季初HRで上昇気流に乗り掛けた巨人ナインを、たった1球で谷底まで突き落としてしまったリリーフの南。歓喜とため息が入り交じったスタジアムの中で、次のバッターに対して投球を続ける、悲壮感漂うその顔。9回表、再逆転し1点リードでマウンドに上がった抑えのエース・岡島。コントロールが定まらずに無死満塁というピンチを招いてしまった時の、不安に苛まれたその目。

これら3つの顔は、私の目には恐ろしく強烈に映った。何故それ程までに私の脳を刺激したのか。それはある偶然に因るものだった。

私は、野球中継の間に挟まれるCMの間に、ある本を読んでいた。そして偶然にも、阪神・遠山が巨人・松井にHRを打たれる前、すなわち、リリーフとして登板する遠山が、マウンドでピッチング練習をする際に挟まれるCMの間に、その本の中で『他者への想像力』という言葉を目にしていたのである。

正直、なんという偶然だろうと思った。何故なら、前述の3人の気持ちを想像しようとした時、それらは私の想像力の範疇を超えたものであったからだ。私には、先発投手の勝ち星をふいにしてしまい、その隣りで俯いている遠山の心の中や、主砲・松井の逆転HRで意気揚がるムードをひっくり返してしまったにも拘わらず、5万人以上の観衆の目が向けられる中で後続の打者に向かって投げ続けなければならない南の心境や、勝利を目前として大ピンチを招いてしまった岡島の胸の中は、想像できなかった。想像しようと努力はしたのだが。

恐らく、それらは当の本人たちにしか分からないものであると思う。しかし、想像できないということは分かっていても、それらを想像しようと努力することは自由である。そして、それが野球の、延いてはスポーツを見る楽しみの一つではないだろうか。

東京ドームにいては、あの3つの顔を目撃することは出来なかっただろう。ちょっと得した気持ちになった。

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