No.026
ゴール裏からの風景
〜FC東京vs.柏レイソル観戦記〜
2001.08.14
text by RB(あーるびー)

 

 

8月11日、J1リーグ2ndステージが開幕した。W杯も間近に迫ってきた今、チームの優勝と同時に、個々の選手にとっても2002年6月4日のピッチに立つべく、熾烈なアピール合戦が再開されるといったところか。

この開幕を私は、東京スタジアムのスタンドの一角で迎えた。18時30分試合開始にも拘わらず、逸る気持ちを抑え切れずに(本当は他にすることがなかっただけ・・・)15時過ぎには最寄りの飛田給駅に到着し、16時開場を前に、スタジアム周辺でぶらぶらと過ごすことに。

16時開場。それにしても、スタジアムのゲートを潜り抜けた瞬間に目の前に悠然と現れる緑の芝生はいつ見ても良いものである。まして、初めて訪れるスタジアムならば尚更である。この芝生見たさにわざわざここまで足を運んで来たのではないかと自分でも思ってしまう程、毎度のことながらこの瞬間は鳥肌ものである。そして、アメリカのMLBに対して右に倣え的な論法で、日本のプロ野球の球場も天然芝に変えるべきだと主張する面々に対してはかなり懐疑的だった私も、目の前に広がる天然芝の素晴らしさを目の当たりにして、これが野球場でも味わえるようになることは日本人の感性を大いに刺激し得るのではないかと改めて思い直し、ただメディアに登場する面々の、考えることをしない論法が間違っていただけなのだと認識を新たにした。と、こんなことが頭の片隅を過ぎったりもしたのだが、この際、つまらないことを考えるのはは止めようと思い、この感動を自分の中でどう消化して良いものかと考えながら、アウェー側自由席のチケットを手にしていた私は、フイールド全体が俯瞰できるゴール裏1階席最上段の席へ。

ゴール裏にも拘わらず、予想以上にグラウンドが近く見えることに驚くとともに、これから試合開始までの2時間以上の時間をどう過ごそうかと悩んでしまう。しかし、鮮やかに輝く緑の芝生を眼前にしての2時間はあっという間に過ぎ、サンバ隊(開幕戦ということからか、試合前にサンバ隊が場内を一周するというパフォーマンスが催された)と両チームの練習が奇妙なコントラストを描く頃には、スタンドも7割方埋まり徐々に熱気が高まってきていた。

18時30分、FC東京vs.柏レイソル試合開始。

1点をリードされる展開に、やや意気消沈気味だった目の前のレイソルサポーター席が最初の盛り上がりを見せたのが、後半10分の大野の放った同点となるミドルシュート。ゴール裏席から見たそのゴールは、シュートを打った瞬間に「決まった!」というのが分かり、その後はスローモーションのようにボールがゴールネットに吸い込まれていく様子を、ゆっくりと流れる時の中でただただ眺めているだけ。これには予想外の快楽を覚えることとなった。村上龍の言葉を借りれば、“カタルシス(katharsis)”を感じることができたとでも言うのであろうか。

これまで私は、サッカーの試合はメインスタンドかバックスタンドで、グラウンドの横方向から見るべきであると思っていたのだが、東京スタジアムのように、フィールドとスタンドが比較的近いスタジアムならば、ゴール裏から観戦するのも悪くないなと想いを新たにした。なぜなら、ゴール裏のように縦方向からグラウンドを見ると、奥行きの遠近感が掴めないために、前述のようなミドルシュートによるゴールを、異なる時間軸の中で感じることができるということを知ったからである。これは、今回の観戦での一番大きな発見でもあった。

その後、再びFC東京に1点を許し、試合終了間際の後半ロスタイム。もうダメかと思っていたであろうレイソルサポーター席に歓喜の雄叫びを呼び起こしたのは、柳想鉄の劇的な同点ゴール。特別にレイソルに肩入れしている訳ではなかった私も、これには思わず立ち上がってしまった。これだからサッカーは面白い。

実際にスタジアムを訪れても、本当に面白い試合に巡り会えることは少ないかもしれない。だからと言って、スタジアムに行かなければその確率は永遠に0のままである。だから足繁く通い詰める他はないのである。10回行っても、満足できる試合に巡り会えないかもしれないが、11回目に、それまでの10回を帳消しにするような素晴らしい試合が待っているかもしれない。もし、その11回目に出会ってしまったら、もうサッカー観戦は辞められないと思う。今回が初めてのスタジアム観戦だった人は本当に幸せ者である。と同時に、彼らは必ず再びスタンドに戻ってくると私は確信している。

試合終了のホイッスルと同時に、小雨の降る中、満足気に試合を振り返る群集に交じって、臨時列車に乗って帰路についた。

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