No.029
経験に勝るものなし
〜TOYOTA PRINCESS CUP 2001〜
2001.09.22
text by RB(あーるびー)

 

 

9/21(Fri)、初めてテニスを生で観戦してきた。正直言って、チケットを買ってまで見に行く程テニスというスポーツに熱を上げている訳ではなかったが、今回、運良くTOYOTA PRINCESS CUP 2001のチケットを手に入れることができ、これは自分にとってとても良い経験になるのではないかと思い、有明コロシアムへと足を運んだ。

まず、会場周辺に着き、有明コロシアムを外から眺めた時の第一印象としては、想像していたよりも小さいなというものだった。野球場やサッカー場のような比較的大きなグラウンドやスタジアムを見慣れていた私にとっては、ごく自然な感想かもしれない。そして、外から会場内のコンコースなどを観察した結果、ちょっと古いなという印象を持った。もう少し近代的な会場をイメージしていた私はちょっと拍子抜けした気もしたが、そこは気を取り直して、イメージとしては神宮球場に近い会場内へと歩みを進めた。

一歩会場内に入ってみると、野球場やサッカー場とは全く異質の風景に驚き、サッカースタジアムの緑の天然芝とはまた違った感動を覚えた。まず、四角のすり鉢状になっている会場全体を見渡してみると、コートと観客席の一体感というものを非常に強く感じた。私が会場内に入った時、上空はまだ曇り空だったために、コロシアムの開閉式の屋根は開いていたのだが、これが青空だったならばどんなに気持ちの良いものだろうと想像した。しかし、第1試合開始予定時刻の10時前になるとパラパラと雨がちらつき始め、屋根を閉めることに。屋根を閉めたばかりの時は、会場自体がそんなに大きくないために、非常に上からの圧迫感を感じたものだが、次第に慣れるにしたがって、その圧迫感というようなものもなくなり、逆に、閉じた空間になったために会場全体の一体感というものが増したように感じた。

そして、予定より30分近く遅れて第一試合に出場するプレーヤーの入場。入場曲は、大会の公式テーマ曲であるmoveのFLY ME SO HIGH。この曲がとてもスピード感に溢れていて、その日行われた全試合を通してプレーと観客、音楽を1つに融合し、ある種のエンターテイメントを創り上げる大きな役割を果たしていた。

今回、私はシングルス準々決勝の4試合とダブルス準々決勝の内の2試合、計6試合を観戦した。結局、朝の10時前から夜の20時近くまで会場にいた訳だが、この10時間近くの中で私が感じ、考えたことをここに書いてみたいと思う。

まず私の目に付いたのが、観客のマナーの悪さ。ゲーム続行中は、観客は席の移動を禁止されているのであるが、ゲームの合間やセットの合間には、席を外してコンコースなどへの移動が許されている。しかし、このゲームの合間やセットの合間に移動する観客の中で、ゲーム再開時に移動が完了していない人が多すぎる。すでにゲームが再開されているにも拘わらず、我関せずと言った感じの平気な顔をして会場内の通路を歩いているのである。そのため会場内はざわついたまま。これからサーブを打とうとしている選手、またはサーブを受けようとしている選手の視線の奥で、大勢の人間がゾロゾロと移動をしている姿を想像して欲しい。これでは選手も集中を妨げられ、プレーにも支障が出てきてしまうであろうし、落ち着いて観戦したいと思っている観客やラケットがボールを叩く瞬間の音を楽しんでいる観客にとっても大迷惑である。4大大会などのテレビ中継を見た限りでは、このようなシーンは見たことがなかったので、観客席にいるひとりの人間として、また日本人として非常に恥ずかしい想いをした。

また、試合終了後の選手の退場時、出入りが制限されている指定席に、係員の制止を振り切ってサインをもらいに行く観客には辟易した。しかも、最初のひとりがサインを貰いに走った途端、我も我もと後に続く人間たち。「赤信号、皆で渡れば怖くない」という日本人の悪しき精神をあからさまに見た。指定席の選手入退場口の近くに座る観客にとっては、観戦する権利を侵害されたというくらいの想いだったのではないだろうか。

さらに、携帯電話の着信音。これについては返す言葉も見当たらない。『文化としてのスポーツ』という言葉を最近よく耳にするが、まだまだ先の話だなと思わざるを得なかった。

次に、今回私は、観戦した6試合の内、5試合をコートの横方向(選手二人が左右に見えるスタンド)から、最後の1試合をコートの縦方向(選手二人が手前と奥に見えるスタンド)から観戦した。テレビ中継は後者からの映像であるが、常々私はこれについて疑問に思っていたため、角度の違う二方向から観戦してみようと思い立ったのである。というのは、数あるスポーツの中でも、縦方向からの映像は珍しいからである。サッカー、ラグビー、バスケットボール、水泳など、長方形の会場で行われるほとんどのスポーツは、ここでいう横方向からのテレビ映像であり、私の知る限り、テニスだけがその例外なのだ。

そして、この二方向から観戦してみての私の感想としては、個人的には横方向からの視線の方が楽しめたが、テレビという『映像』にするならば現在のような縦方向からの撮影の方が適しているのかなと思った。実際に観戦してみて、横方向からの観戦というのは、視線を右に左に移さなければならないためやや疲れるが、プレーヤーの前後左右の動きを楽しむには、横方向からの方が良いと感じた。特に、ネット際のプレーにはその近さに驚き、迫力満点だった。しかし、これをカメラという限られた範囲の中に収めるには、ラリーの度にカメラを左右に振るか、そうならないためにかなり引いた位置から映像を撮らなければならない。しかし、引いた位置から映像を撮ろうとすると、有明コロシアムに限って言えばスタンドがかなり急な作りになっているため、上からの映像に近くなってしまう。臨場感を伝えるためにある程度の近さを保ち、かつ、コートと2人の選手を常時同じ画面に捉えるためには、現状のような縦方向からの映像になってしまうのではないかと感じた。常々疑問に思っていたことに対して、自分の目で実際に確かめることによって、自分なりの答えを見つけ出すことができたことはとても大きな収穫だった。

今回の体験で、次にテレビでテニスを見た時には、これまでとはまた違った見方ができると確信している。何事も経験であり、経験に勝るものはないということを実感した出来事だった。

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