No.032
アレックスと中村 守備面での比較
2002.03.22
text by RB(あーるびー)

 

 

しばらくの間コラムを更新していなかったので、学生最後の思い出に、日本代表vs.ウクライナ代表の試合についての感想を。

この試合の日本のスタメンが"人選"という部分でこれまでと大きく異なったことは、3-5-2の中の「5」の両翼がいずれも縦に強い選手であったということ。帰化後、初めてブルーのユニホームを纏っての試合となるアレックスは途中からの出場となるだろうというのが戦前の大方の予想であったが、トルシエ監督はその予想を良い意味で大きく裏切ってくれた。しかも、アレックスの逆サイドには、これまでのように所属チームではボランチを務める選手ではなく、同じく清水エスパルスで縦への突破からのクロスボールを売りにしている市川を起用。まさに「両翼」。

この試合での私個人の発見としては、「縦に強い」と言われている選手は、「後方への縦」にもある程度の対応力を発揮できるということである。当たり前と言えば当たり前に聞こえるかもしれないが、これまで私はこの点を誤解していたというか、理解できていなかった。突破力のあるアレックスの起用に関して、評論家の間では周りの選手とのコンビネーションも含めて守備に不安があるという見解が聞かれた。私もそのような見解を聞いていて、漠然と無批判に納得してしまっていた節があった。しかし、今日の試合に限って言えば、後半からアレックスに代わってピッチに入った中村俊輔よりも、「縦への守備力」を持ち合わせていると感じた。

攻撃に重点を置くとされる日本の左サイド。この試合、左サイドで出場したアレックスと中村を守備面で比較してみると、まず、両選手とも守備ではなく攻撃に特徴を持つ選手であるということから、相手ボールになった時に、本来埋めるべきスペースに両選手がいないという場面が試合中見られるが、得点を取りに行くにはサイドからの攻撃参加は不可欠であるため、この点については、相手陣深くまで攻め込んだアレックスあるいは中村が戻ってくるまで、ボランチやDFがカバーに回れば良い。次に、相手チームが後方からゆっくりとビルドアップし、日本の守備陣形がしっかりと整った状態での守備を比べると、やはり「スピード」の違いが浮き彫りになる。W杯に出場してくるようなチームには、サイドに上手くて速い選手がいることは容易に想像できるが、残念ながら上手さを持ち味とする中村にはそのような選手についていけるだけのスピードを持ち合わせていない。特に、切り返しなどの相手主導での急激な方向転換には大きな難がある。その点、同じ攻撃的な選手でも、前へのスピードを持ち味とするアレックスの方が、相手の切り返しや、逆サイドからの相手のクロスボールへの対応には力を発揮するのではないかと思われる。

評論家の間で言われているアレックスの「守備への不安」というのは、相手ボールになった時に戻れ切れないという意味での不安であって、自陣に戻った際に"守れない"という意味ではないということを、誤解することなくきちんと認識しなければならない。戻り切れないのは中村然りである。

トルシエ監督になって初めてとも言える「両翼」の起用は、見ている方には大きな高揚感を与えてくれた。グループリーグ最終戦となるチュニジア相手に、決勝トーナメント進出のためにはどうしても得点を奪って勝たなければならないという状況となった時には、「両翼」の起用は大きなオプションとなるのではないだろうか。

何かと議論の対象となる左サイドで、市川へのサイドチェンジのパスや中央へのクロスボールで、幾度かの見せ場を作った中村については、現段階では最終メンバー入りは厳しいかなというのが率直な感想。「中央で」というファンの後押しもあるが、小笠原の起用に見られるトルシエ監督の中央への「強さ」の要求を、残念ながら彼は満たしていない。

プレースタイルの中の攻撃面ばかりが注目されるアレックス、中村の両選手。守備なら服部を入れれば良いと簡単に片付けずに、両選手の守備にも目を向けてはどうだろうか。

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