No.033
トルシエが中村俊輔を中央で使わない最大の理由
2002.04.20
text by RB(あーるびー)

 

 

自国開催のW杯を間近に控え、日の丸を胸に日本の代表としてそのピッチに立つべく、Jリーグでは熾烈なアピール合戦が繰り広げられている。その中でも、メディアの注目を一身に集めているのが、横浜Fマリノスにおいて背番号10を背負ってプレーする中村俊輔である。

日本代表の中にあっても格段に注目度の高い左アウトサイド。そのポジション獲得に挑む日本最高の左足の持ち主である中村。注目を集めるのも当然と言えば当然かもしれないが、中村に対しては、依然としてトップ下でのプレーを望むファンの声が絶えない。そして、ファンの声とは対照的に、中村を左サイドに置き続けるフィリップ・トルシエ。

では、なぜトルシエは中村を中央、すなわちトップ下で使おうとしないのか。

結論から先に述べると、トルシエがトップ下の選手に求める第一条件は「強さ」であり、この「強さ」に対するトルシエの要求を、残念ながら中村はクリアできていないのだ。

では、なぜトルシエはトップ下の選手に対して頑ななまでに「強さ」を求めるのだろうか。

それは、トルシエが自身の頭の中で強烈に思い描いているであろう、日本代表が世界の強豪から得点を奪うシーンに起因すると思われる。

トルシエが思い描いているであろう、W杯本番での日本の得点場面の類似シーン。

@ 01/05/06 セリエA '00-'01 第29節 ユベントス2 - 2 ローマ

途中出場の中田英寿(ローマ)が、中盤のセンターサークル付近で自らのチャレンジにより相手選手から奪ったボールを、そのままドリブル。前線のバティストゥータ、モンテッラ(共にローマ)の二人が両サイドに流れて作った中央のスペースを見逃さず、ペナルティアーク外からのロングシュート(得点)。

A 02/03/21 キリンチャレンジカップ2002 日本代表1 - 0ウクライナ代表

後半途中、森島に代わってトップ下で出場した小笠原(鹿島)が、中盤でボールを回していたウクライナにプレッシャーを掛け、自らも倒れそうになりながらもボール奪取。立ち上がり様に前線を走る柳沢(鹿島)へスルーパス。

上記@及びAの共通点は、相手チームが中盤でボールを繋いでいる際に、トップ下の選手が前方もしくは背後からタイミング良くチェックに行きボールを奪っているという点である。そして、攻撃のために前掛かりになりかけた相手陣形の裏(具体的に言えば、ボランチとDFの間のスペース)を、そのままドリブル、あるいは1,2本の簡単なパスを繋いでシュートまで持って行く。

体格、スピードで勝る世界の強豪から得点を奪うために、トルシエは上記のようなシーンからの得点を強烈に思い描いているに違いないのである。

しかし、現段階で中村俊輔に、中盤でのボール奪取というプレーを期待するのは難しい。中盤でボールを回す相手からボールを奪うためには、フィジカルの強さを生かしてボールと相手との間に力強く体を入れる必要があるからだ。

ウクライナ戦で初代表にも拘わらずトップ下のポジションで出場した小笠原と、代表歴こそ長いものの依然として左サイドでしか使われない中村の差はここにある。誤解のないように断っておくが、この「差」とは、トルシエという監督の好みに対する「差」であり、プレーヤーとしての「差」ではない。

ここで疑問を抱く方もいるかもしれない。その疑問とは、 「トップ下で使われている森島(セレッソ大阪)だってフィジカルは強くはないではないか。」 というものであろう。体が小さい彼は、いわゆる「フィジカル」は強くはないものの、体の使い方の上手さやその柔らかさで、体格に優る相手からボールを奪い、トルシエの好むプレーを成し遂げてしまっているのである。これは、体が小さいからこそできるプレーかもしれない。

中村俊輔の、トルシエ・ジャパンでのトップ下への道は険しい。

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